385 / 504
それは幻に勝る者(ミハエル視点)
しおりを挟む
「これが……幻花?」
光輝く宝石、美しい自然の景色や美しい建物の風景を普段の日常から目にして、目が肥えている人間の私でさえ、それのあまりの神々しさに思わず見惚れ、体が動かなかった。
「これで、終わりですね」
金鎧の男の声が後ろから聞こえ我に帰ると、肩に熱くなる感覚を覚える。
「きゃっ!?」
肩にまるで立てかけるように刀を置き、その目は私にどけと言っているようだった。
「人間よ、私は機嫌がいい。今その場を退いてくれたら、殺さずにおいてあげましょう。どこへでも逃げていいですよ」
仙人さんは槍を支えにして立っている。体全体に細かな傷が見え、かなりの激戦がうかがえた。それでもまだ金鎧の男に目立った傷はない。
「さあ早く選べ。この場で死ぬか、退くか」
狂気じみた金鎧の男の目が血走る。
「私は……」
幻花は私の目と鼻の先にある。そして、私は今それに手を伸ばすことができる位置にいる。
(ここで、諦めてしまったらベアトリスは生き返らない)
それどころか、私は偽善者ですらなくなってしまう。命欲しさに最低限の善意を捨てたら、それこそ神から見捨てられてしまう。
「私は、ここを退くことはないでしょう」
「……なんですと?」
「私のことを殺したければ殺しなさい!だけど、絶対に幻花は渡しません」
「何をふざけたことを……あなたにそれを選択する権利はないのですよ?」
絶対的な実力差。私がここで立ち塞がっても意味はないのかもしれない。
「だけど、最後まで私はここに立ち続けます。みんながまだ頑張っているのに、私が諦めるなんて……そんなカッコ悪いことできませんよ」
♦️
金鎧を着て、本気になった友人は我をかなり追い詰めた。
体はもうボロボロで、正直槍を握っている手に力が入らないほどだった。そんな時に、幻花が咲いて、友人はそちらに意識を持って行かれていた。
こんなボロボロな体で幻花を守り切ることができるわけがない……ここで終わってしまうのだろうか?友人を狂気から救うことも、一緒に協力すると言ってくれたあの少女も……助けることができずに終わってしまうのだろうか?
不甲斐ない……そう思っていた時。
「だけど、最後まで私はここに立ち続けます。みんながまだ頑張っているのに、私が諦めるなんて……そんなカッコ悪いことできませんよ」
ミハエルの声は意識が若干薄れかけていた我の耳にしっかりと聞こえた。ミハエルの方に視線をやると、腕を広げて幻花を八光の仙人……我の友人から守るように立っていた。
その顔は、死を覚悟しているような……生を諦めていないような、そんな顔。
(はははっ……馬鹿だったのは我の方だったか)
力のない人間に何ができるのか、回復の魔法が使えればと思って連れてきたが、まさかこうなるとは思わなかった。
我は、勝手に自分一人でなんとかしなくてはならないと思い込んでいた。自分にしかどうにもできないと思って、助けを得ようとしてこなかった。
そして、勝手に諦めた。
(ふふっ……彼女はまだ諦めていないというのに、我が諦めてどうする?)
我は彼を救いたい。そして、ベアトリスも救いたい。
だったら、
「最後まで、無様に舞ってやろう」
槍を掴み直す。足に力を入れて体を起こし、一歩前に踏み出した。
「うおおおお!」
「なっ!?」
完全に油断していた八光が驚いた顔でこちらを見ていた。
「今だ!摘め!」
「っ……はい!」
体が押し返されていくが、もはや一歩も下がる必要はない。
「最後まで、諦めるか」
不思議と体に力が入る。
「なんだと!?その力、どこからっ!」
「うおおおおおお!」
刀で防いでいた八光の足が地面に沈んでいく。
「舐めるなあああああ!」
八光の体が燃えたぎり、浄化の炎が刀を伝って槍を燃やし、我の体を燃やし始めた。全身にどうしようもないほどの痛みが流れる。
体の節々から骨の中までが燃えていく。
「ぐうっ……」
だが、下がることはない。今下がったらミハエルの覚悟も、我の想いも全て無駄になる。
「仙人さん!?」
「先に行け!」
「で、でも!」
「我のことはいい!早く急ぐんだ!」
「そんな……」
ミハエルは迷ったように、逡巡している。迷う必要はない、我のことなんて放っておいて、早くなすべきことをなすんだ。
だが、ミハエルは我を見捨てることはなかった。
「私は……誰一人として見捨てたくないんです!」
その瞬間、ミハエルの体が眩く輝いた。その光は仙人であり、光なんてあってないようなもの……眩しさなんて感じるはずがない我と八光ですら、目が痛くなるほどの光。
それは、幻花の輝きなんて薄れてしまうほどのものだった。
そして、その光と共にミハエルの背中から何かが広がった。バサッと音を立てて渓谷の横幅ギリギリまで広がるその『翼』は純白のとても清純で美しい色をしていた。
「まさかっ……そんなはずは!?」
ミハエルの頭の上に光輪っかが生まれ、それは暗闇なんてないと言わせるかのようにミハエルの全身の光を吸収し、太陽のようなものへなった。
「絶対に誰も、死なせません!」
光り輝く聖をその身に宿して、全ての人に慈愛を持って癒す。ああ、狐の亜神が私の胸を指していたのはこういう意味だったのか。
それはもうここにあると。
それは誰がなんと言おうと……
「天使……!」
光輝く宝石、美しい自然の景色や美しい建物の風景を普段の日常から目にして、目が肥えている人間の私でさえ、それのあまりの神々しさに思わず見惚れ、体が動かなかった。
「これで、終わりですね」
金鎧の男の声が後ろから聞こえ我に帰ると、肩に熱くなる感覚を覚える。
「きゃっ!?」
肩にまるで立てかけるように刀を置き、その目は私にどけと言っているようだった。
「人間よ、私は機嫌がいい。今その場を退いてくれたら、殺さずにおいてあげましょう。どこへでも逃げていいですよ」
仙人さんは槍を支えにして立っている。体全体に細かな傷が見え、かなりの激戦がうかがえた。それでもまだ金鎧の男に目立った傷はない。
「さあ早く選べ。この場で死ぬか、退くか」
狂気じみた金鎧の男の目が血走る。
「私は……」
幻花は私の目と鼻の先にある。そして、私は今それに手を伸ばすことができる位置にいる。
(ここで、諦めてしまったらベアトリスは生き返らない)
それどころか、私は偽善者ですらなくなってしまう。命欲しさに最低限の善意を捨てたら、それこそ神から見捨てられてしまう。
「私は、ここを退くことはないでしょう」
「……なんですと?」
「私のことを殺したければ殺しなさい!だけど、絶対に幻花は渡しません」
「何をふざけたことを……あなたにそれを選択する権利はないのですよ?」
絶対的な実力差。私がここで立ち塞がっても意味はないのかもしれない。
「だけど、最後まで私はここに立ち続けます。みんながまだ頑張っているのに、私が諦めるなんて……そんなカッコ悪いことできませんよ」
♦️
金鎧を着て、本気になった友人は我をかなり追い詰めた。
体はもうボロボロで、正直槍を握っている手に力が入らないほどだった。そんな時に、幻花が咲いて、友人はそちらに意識を持って行かれていた。
こんなボロボロな体で幻花を守り切ることができるわけがない……ここで終わってしまうのだろうか?友人を狂気から救うことも、一緒に協力すると言ってくれたあの少女も……助けることができずに終わってしまうのだろうか?
不甲斐ない……そう思っていた時。
「だけど、最後まで私はここに立ち続けます。みんながまだ頑張っているのに、私が諦めるなんて……そんなカッコ悪いことできませんよ」
ミハエルの声は意識が若干薄れかけていた我の耳にしっかりと聞こえた。ミハエルの方に視線をやると、腕を広げて幻花を八光の仙人……我の友人から守るように立っていた。
その顔は、死を覚悟しているような……生を諦めていないような、そんな顔。
(はははっ……馬鹿だったのは我の方だったか)
力のない人間に何ができるのか、回復の魔法が使えればと思って連れてきたが、まさかこうなるとは思わなかった。
我は、勝手に自分一人でなんとかしなくてはならないと思い込んでいた。自分にしかどうにもできないと思って、助けを得ようとしてこなかった。
そして、勝手に諦めた。
(ふふっ……彼女はまだ諦めていないというのに、我が諦めてどうする?)
我は彼を救いたい。そして、ベアトリスも救いたい。
だったら、
「最後まで、無様に舞ってやろう」
槍を掴み直す。足に力を入れて体を起こし、一歩前に踏み出した。
「うおおおお!」
「なっ!?」
完全に油断していた八光が驚いた顔でこちらを見ていた。
「今だ!摘め!」
「っ……はい!」
体が押し返されていくが、もはや一歩も下がる必要はない。
「最後まで、諦めるか」
不思議と体に力が入る。
「なんだと!?その力、どこからっ!」
「うおおおおおお!」
刀で防いでいた八光の足が地面に沈んでいく。
「舐めるなあああああ!」
八光の体が燃えたぎり、浄化の炎が刀を伝って槍を燃やし、我の体を燃やし始めた。全身にどうしようもないほどの痛みが流れる。
体の節々から骨の中までが燃えていく。
「ぐうっ……」
だが、下がることはない。今下がったらミハエルの覚悟も、我の想いも全て無駄になる。
「仙人さん!?」
「先に行け!」
「で、でも!」
「我のことはいい!早く急ぐんだ!」
「そんな……」
ミハエルは迷ったように、逡巡している。迷う必要はない、我のことなんて放っておいて、早くなすべきことをなすんだ。
だが、ミハエルは我を見捨てることはなかった。
「私は……誰一人として見捨てたくないんです!」
その瞬間、ミハエルの体が眩く輝いた。その光は仙人であり、光なんてあってないようなもの……眩しさなんて感じるはずがない我と八光ですら、目が痛くなるほどの光。
それは、幻花の輝きなんて薄れてしまうほどのものだった。
そして、その光と共にミハエルの背中から何かが広がった。バサッと音を立てて渓谷の横幅ギリギリまで広がるその『翼』は純白のとても清純で美しい色をしていた。
「まさかっ……そんなはずは!?」
ミハエルの頭の上に光輪っかが生まれ、それは暗闇なんてないと言わせるかのようにミハエルの全身の光を吸収し、太陽のようなものへなった。
「絶対に誰も、死なせません!」
光り輝く聖をその身に宿して、全ての人に慈愛を持って癒す。ああ、狐の亜神が私の胸を指していたのはこういう意味だったのか。
それはもうここにあると。
それは誰がなんと言おうと……
「天使……!」
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる