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物理攻撃型メイド
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その一瞬の決着を観客となっていた受験生及び、他の教師は見ることができなかった。
早すぎたのだ。
何が起こったのか理解する間もなく、勝負はレインの勝利で終わってしまった。
「ふう、危ない。ちょっと掠るかと思った~」
爽やかな笑みで戻ってくるレイン。
「ちょ、レイン君!?今何やったの!?」
「え、普通に正面から倒した」
「倒した!?先生を!?」
「うん、さすが上級魔術師だった……まさか反応されるなんて思わなかったもん」
あまりにも驚くリシル。リシルだって学校で鍛えればすぐにこれくらいできるのではないかと思うレインであった。
「どうやって倒したっていうの?」
解説を求めてきた!きっと、使った魔術に興味があるんだな!
と、盛大な勘違いをしたレインは大きな声で興奮気味に語る。
「ああ、まずあの教師が上級魔術の『火鳥』を使おうとしてきたから、まずはその術式を分解して、その後に水の初球魔術を打ち込んだんだけど、避けられちゃってさ。だから仕方なく飛ばした『水球』に後付けで追尾術式を急いで組み込んでみたんだ」
そのまま背後から背中を撃ち抜かれたその教師は一撃で倒されてしまったのだ。
「すごいよねぇ、あの反射神経は是非とも見習いたいな」
そう語るレインに軽くドン引きするリシルと周りにいた受験生たち。
「レイン君ってすごい天才なのね……」
「天才なんかじゃないよ。学校に来る前に頑張ってきたんだ!」
「そう、なのね。すごいわ、レイン君って。私ももっともっと頑張ってレイン君みたいになれるよう頑張るわ!」
♦️
後日
結果はすぐに張り出された。レインは特待を狙っていたのだが、特待の欄にきちんとレインの名前が載っていた。
「やた!」
特待生の名簿の中に自分の名前があったことに喜ぶレイン、だが主席であることに気づくのはまだ後のことであった。
「とりあえず、家に帰ってゆっくりしようかなぁ」
入学までの準備なんかもあるし、家……というか宿に送られて来る書類にも何やらハンコがいるみたいだし、これからの学校生活が楽しみでしょうがない。
「リシルもいるし……えへっ、早く時間経たないかなぁ♪」
……そんなことを一人呟くレイン、話しかけようとしていたリシルには気づかずにリシルは曲がり角の奥で一人悶絶していたのだった。
♦️
「合格おめでとうございます!」
「ああ、ありがとうロザリー」
天井に頭が届きそうになるくらいに跳ねながら喜ぶロザリー。
「私も自分のことのように嬉しいです」
「ふふ、そうなのかな」
学校の入学が決まり、ついでに学費が免除される特待生にもなった。ここまでは完璧である。ただ一つ問題点を挙げるとすれば、ここからは寮と呼ばれる部屋の中で同年代の人と二人で過ごさなくてはならないという点である。
「ロザリーと一緒に寝泊まりするのもしばらくないのかぁ」
「うーん、そうですね。それはちょっと寂しいです」
寝る時はロザリーの希望で猫の姿に戻ってから布団に入っている。まあ、猫の方が布面積を使わないからレインは一向に構わない。
ロザリーがいない生活などあまり考えられない。ロザリーがいないと家事が何一つとしてレインはできないのだ。拾われた猫が家事ができるわけないだろう?
だから、
「ロザリーも付いてきてくれないか?」
「私も?いいのですか、それ?」
「ああ。元々貴族の使用人たちを住まわせるための使用人棟があるらしいんだ。そこにロザリーも入れてもらう」
「うふふ、私と離れたくないんですねぇ、かわいいです」
「うーん、そうだけど……」
摩擦で頭が燃えそうになるくらい撫でられる。ロザリーは人間の時の僕の姿も気に入ってくれているようだ。
「そうと決まったら、私も準備をしなくちゃいけませんね」
「準備?」
「寮に入ってお世話をすることはできませんけど、授業終わりや放課後にお世話をすることはできるはず!たまに部屋の掃除とかにも行かせてもらいますが……今後の私の仕事は『護衛』が主軸になります!」
ロザリーが使っていないタンスの中からガサゴソと何かを取り出す。
「メリケンサック?」
「私は魔術はからっきしですけど、武術にはそれなりに覚えがありますよ!」
魔術が発展している現代では、魔術は最新鋭の技術として根強くなっている。人間には真似できないような超常の現象を引き起こせるというのは、人々を魅了した。
だがしかし、古から続く古き武道は廃れたとはいえ、完全に終わったわけではない。人類が身につけた積み重ねの技術の集大成。魔術を使えないロザリーではあるが、ロザリーは代わりに武術を極めていたのだ。物理攻撃型メイドだ。
「こちらを装備して守ります!」
「あはは……そんな、戦いに行くわけでもないんだけどね」
苦笑いのレイン。大真面目のロザリーはやる気満々そうにしている。
「これからもよろしくね、ロザリー」
「はい、もちろんです!」
思えば、『師匠』雇ったメイドがロザリーで良かった。普通のメイドはここまで優しく接してくれなかっただろうから。ロザリーだからこそ、レインに優しく接してくれたのだと思う。
だから僕はロザリーのことも大好きだ。
早すぎたのだ。
何が起こったのか理解する間もなく、勝負はレインの勝利で終わってしまった。
「ふう、危ない。ちょっと掠るかと思った~」
爽やかな笑みで戻ってくるレイン。
「ちょ、レイン君!?今何やったの!?」
「え、普通に正面から倒した」
「倒した!?先生を!?」
「うん、さすが上級魔術師だった……まさか反応されるなんて思わなかったもん」
あまりにも驚くリシル。リシルだって学校で鍛えればすぐにこれくらいできるのではないかと思うレインであった。
「どうやって倒したっていうの?」
解説を求めてきた!きっと、使った魔術に興味があるんだな!
と、盛大な勘違いをしたレインは大きな声で興奮気味に語る。
「ああ、まずあの教師が上級魔術の『火鳥』を使おうとしてきたから、まずはその術式を分解して、その後に水の初球魔術を打ち込んだんだけど、避けられちゃってさ。だから仕方なく飛ばした『水球』に後付けで追尾術式を急いで組み込んでみたんだ」
そのまま背後から背中を撃ち抜かれたその教師は一撃で倒されてしまったのだ。
「すごいよねぇ、あの反射神経は是非とも見習いたいな」
そう語るレインに軽くドン引きするリシルと周りにいた受験生たち。
「レイン君ってすごい天才なのね……」
「天才なんかじゃないよ。学校に来る前に頑張ってきたんだ!」
「そう、なのね。すごいわ、レイン君って。私ももっともっと頑張ってレイン君みたいになれるよう頑張るわ!」
♦️
後日
結果はすぐに張り出された。レインは特待を狙っていたのだが、特待の欄にきちんとレインの名前が載っていた。
「やた!」
特待生の名簿の中に自分の名前があったことに喜ぶレイン、だが主席であることに気づくのはまだ後のことであった。
「とりあえず、家に帰ってゆっくりしようかなぁ」
入学までの準備なんかもあるし、家……というか宿に送られて来る書類にも何やらハンコがいるみたいだし、これからの学校生活が楽しみでしょうがない。
「リシルもいるし……えへっ、早く時間経たないかなぁ♪」
……そんなことを一人呟くレイン、話しかけようとしていたリシルには気づかずにリシルは曲がり角の奥で一人悶絶していたのだった。
♦️
「合格おめでとうございます!」
「ああ、ありがとうロザリー」
天井に頭が届きそうになるくらいに跳ねながら喜ぶロザリー。
「私も自分のことのように嬉しいです」
「ふふ、そうなのかな」
学校の入学が決まり、ついでに学費が免除される特待生にもなった。ここまでは完璧である。ただ一つ問題点を挙げるとすれば、ここからは寮と呼ばれる部屋の中で同年代の人と二人で過ごさなくてはならないという点である。
「ロザリーと一緒に寝泊まりするのもしばらくないのかぁ」
「うーん、そうですね。それはちょっと寂しいです」
寝る時はロザリーの希望で猫の姿に戻ってから布団に入っている。まあ、猫の方が布面積を使わないからレインは一向に構わない。
ロザリーがいない生活などあまり考えられない。ロザリーがいないと家事が何一つとしてレインはできないのだ。拾われた猫が家事ができるわけないだろう?
だから、
「ロザリーも付いてきてくれないか?」
「私も?いいのですか、それ?」
「ああ。元々貴族の使用人たちを住まわせるための使用人棟があるらしいんだ。そこにロザリーも入れてもらう」
「うふふ、私と離れたくないんですねぇ、かわいいです」
「うーん、そうだけど……」
摩擦で頭が燃えそうになるくらい撫でられる。ロザリーは人間の時の僕の姿も気に入ってくれているようだ。
「そうと決まったら、私も準備をしなくちゃいけませんね」
「準備?」
「寮に入ってお世話をすることはできませんけど、授業終わりや放課後にお世話をすることはできるはず!たまに部屋の掃除とかにも行かせてもらいますが……今後の私の仕事は『護衛』が主軸になります!」
ロザリーが使っていないタンスの中からガサゴソと何かを取り出す。
「メリケンサック?」
「私は魔術はからっきしですけど、武術にはそれなりに覚えがありますよ!」
魔術が発展している現代では、魔術は最新鋭の技術として根強くなっている。人間には真似できないような超常の現象を引き起こせるというのは、人々を魅了した。
だがしかし、古から続く古き武道は廃れたとはいえ、完全に終わったわけではない。人類が身につけた積み重ねの技術の集大成。魔術を使えないロザリーではあるが、ロザリーは代わりに武術を極めていたのだ。物理攻撃型メイドだ。
「こちらを装備して守ります!」
「あはは……そんな、戦いに行くわけでもないんだけどね」
苦笑いのレイン。大真面目のロザリーはやる気満々そうにしている。
「これからもよろしくね、ロザリー」
「はい、もちろんです!」
思えば、『師匠』雇ったメイドがロザリーで良かった。普通のメイドはここまで優しく接してくれなかっただろうから。ロザリーだからこそ、レインに優しく接してくれたのだと思う。
だから僕はロザリーのことも大好きだ。
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