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第十一話
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「このような過去の思い出話を続けるだけでよろしいのですか?」
「ああ。これでいいんだ。『愛の証明』に必要なのは、その時の思い出だから。その部分を抽出してキャンディに変えてしまうよ」
「キャンディに?」
「そう。その思い出、もういらないだろう? だからイレーネさんの中から取ってしまって、固めて甘くしてしまうんだ。そうして出来たものを食べたら、イレーネさんの思い出がその人の目の前に浮かぶ。イレーネさんの見た通りに鮮明にね」
「追体験するような感じなのでしょうか?」
「うまい言い方をするね。まさにそんな感じさ。だからイレーネさんの中にない思い出は、キャンディに出来ないし追体験出来ない。そして誰かに食べられてしまえば、その思い出はイレーネさんから消えてしまうよ」
奥様はなんてことないように話してくださいますが、どういう力が作用してそうなるのか、まったく分かりません。
とにかくわたくしは、アルフォンソ様への思いが伝わるような思い出を奥様にお話しして、奥様はそれをわたくしから取り出してキャンディにする、という作業を繰り返しました。
奥様は上手にわたくしを誘導してくださるので、忘れていたような思い出もふいに口から出てきます。時には愛の証明に関係のない思い出――アルフォンソ様のお相手様に酷いことをされた――まで、ついつい話してしまったりもしましたが、そういう時でも奥様はふんふんと聞いてくださるのです。
聞き上手な奥様のおかげで、わたくしはたくさんのアルフォンソ様への思い出を吐き出し、話したら話しただけすっきりし、気づいたら痛みも何も消えてしまっていたのです。
奥様が作ってくださったキャンディは、小さな星の粒のように輝いて見えました。
「終わったね。さあ、こんなにたくさんのキャンディも出来た。あとは綺麗に包装して、あいつに届けてやろう。絶縁状でも付けてやるかい?」
「ああ。これでいいんだ。『愛の証明』に必要なのは、その時の思い出だから。その部分を抽出してキャンディに変えてしまうよ」
「キャンディに?」
「そう。その思い出、もういらないだろう? だからイレーネさんの中から取ってしまって、固めて甘くしてしまうんだ。そうして出来たものを食べたら、イレーネさんの思い出がその人の目の前に浮かぶ。イレーネさんの見た通りに鮮明にね」
「追体験するような感じなのでしょうか?」
「うまい言い方をするね。まさにそんな感じさ。だからイレーネさんの中にない思い出は、キャンディに出来ないし追体験出来ない。そして誰かに食べられてしまえば、その思い出はイレーネさんから消えてしまうよ」
奥様はなんてことないように話してくださいますが、どういう力が作用してそうなるのか、まったく分かりません。
とにかくわたくしは、アルフォンソ様への思いが伝わるような思い出を奥様にお話しして、奥様はそれをわたくしから取り出してキャンディにする、という作業を繰り返しました。
奥様は上手にわたくしを誘導してくださるので、忘れていたような思い出もふいに口から出てきます。時には愛の証明に関係のない思い出――アルフォンソ様のお相手様に酷いことをされた――まで、ついつい話してしまったりもしましたが、そういう時でも奥様はふんふんと聞いてくださるのです。
聞き上手な奥様のおかげで、わたくしはたくさんのアルフォンソ様への思い出を吐き出し、話したら話しただけすっきりし、気づいたら痛みも何も消えてしまっていたのです。
奥様が作ってくださったキャンディは、小さな星の粒のように輝いて見えました。
「終わったね。さあ、こんなにたくさんのキャンディも出来た。あとは綺麗に包装して、あいつに届けてやろう。絶縁状でも付けてやるかい?」
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