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024 佐山氏のご家族と事情聴取⑤

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 和やかに西村課長と牧田さんが話していると、「そろそろいいでしょうか?」と辻堂刑事刑事が割り込んできた。

「ええと、牧田さん、とお呼びするのでいいのでしょうか? あなたは佐山氏の秘書だったと」
「正確には違うのですが、義父の佐山の表向きの仕事は不動産業でした。繁華街にいくつかの店舗付きマンション等を所有しており、その管理を私も手伝っておりまして。義父には色々なことを教わってましたから、その中で義父の秘書というか義父の元で動くということが多かったように思います」
「それで、先程娘さん方から本邸に届く郵便物を別邸に運ぶようなこともされていたと。そしてその中に黄色の封筒の郵便物が頻繁に届き、佐山氏はこれをとても気にしていたとか」
「不動産の事務所自体は別にございます。仕事関係のものはそちらに届き、当然のことながら自宅――本邸には私信が届きます。義父は別邸にいることが多かったですが、そちらの住所は周囲には秘密にしており、一人で趣味を楽しむ場所として愛用していたようです」
「まるで囲っている愛人がいるみたいにね!」
「お母様!」

 突然の声に驚いて振り向くと、まだ顔色が優れない様子の由紀子夫人が立っていた。
 姉妹二人が駆け寄って行くが、もう倒れることはなさそうな勢いでキレ出した。

「映画映画って馬鹿みたい! そんなもののために人生捧げて、私財投じて。突然死んだと思ったら、私達巻き込んで迷惑かけて! うんざりよ!」

 苛々とネイルの行き届いた爪を弾きながら、投げつけるように言葉を続ける。

「愛人ならそれに文句言って金でも渡して何処かへやることも出来るけど、女優に向かうでもなく恋慕の対象が日本映画って! 狂ってるわよ!」

 激昂したことでまた血の巡りがおかしくなったのか、由紀子夫人がグラリと揺れたので、江藤弁護士が支えてソファに座らせた。

「大変申し訳ないのですが、依頼人は体調を崩しております。彼女らへの話は後日にしてもらえませんか? 今日は御主人を亡くされ辛いお気持ちなのです」
「······分かりました。奥様、佐山家の皆さん、ご心痛の中に失礼しました。恐縮ですがこの邸は暫く捜査で立ち入らせていただきます。ですので資料館さんの調査も一時ストップしてもらいます。
 江藤さんはもうしばらく残っていただいていいですか? では今日は遅くなりましたから散会いたしましょう」
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