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025 第二のコレクター比江島氏のこと①

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 帰りの車の中では皆が一様に疲れていた。

 退出時にちらり見てみたら、あの茶の間リビングは鑑識だとかが立ち入っていてずいぶん様変わりしていた。比江島氏はどうしたのか、そしてあの地下室がどうなっているのかは窺い知れなかった。

 パトカーの停まる佐山邸を出て、パーキングまで歩き、車に乗り込んで発車するまで、誰も言葉を発しない。座席に沈み込むように体が重たく感じるので、緊張がようやく解けたようだ。

「今日は皆大変だったね。俺は申し訳ないけど一度館に戻らないと行けないんだ。君達はもう適宜解散でいいけど、どうしようか?」

 街道沿いの猫じゃらしがヘッドライトに照らされて幻のように淡く光る様をぼんやりと眺めていたら、西村課長がそう告げた。

「あ、じゃあ日比野ちゃんは大変だからこのまま送ってもらえば? 俺はもう少し都心まで行ったところで近くの駅に降ろしてもらえれば」
「そうだね、いいよ! 日比野さん、どこら辺かな?」
「えっと」

 池上と田代主任にも賛同してもらったが、少し気が引ける。でも大分疲れたからなあ。

「自宅を教えたくなければ自宅の最寄駅にしようか? パソコンはここに置いていっていいよ」
「······はい、助かります。ありがとうございます」

 尾崎係長の誘いで陥落してしまった。
 私の家はギリギリ23区といった場所で、佐山邸からそう遠くないことが分かっているので、申し訳ないが運転の田代主任にお願いして、いつも通勤に利用している駅に着けてもらった。

「日比野さん、こんな事になるとは思わなかったのだけど、本当にお疲れ様。明日はもし辛いようなら出勤しなくてもいいからね。連絡だけ頂戴ね」

 慰められるように西村課長に声をかけられ、お礼を言う。暑い時期は風呂に漬かっていなかったのだけど、今日は湯船にゆっくり入りたいなと思った。

「日比野ちゃん、これ」

 車を降りる際に、池尻からメモを渡された。電話番号の書かれたそれを見て驚いていると、

「LINEのIDもそれだから。もし何かあったら連絡してよ。何もなくてもいいけどね」

 そうおどけて言われたが、一人暮らしの自分を心強くするためだと分かったのでありがたく頂いた。

「池上、抜け駆けか?」
「そうですかね? 正攻法ですけど」
「おい、あまり長くわちゃわちゃするな! 駅前にそんなに停められないからな」
「あ、すみません。お先に失礼します! 今日はお疲れ様でした」

 ぺこりと頭を下げて下車する。バンを見送ってから、私はお風呂の後のアイスでも買おうかとコンビニへと向かった。



 
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