映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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033 辻堂刑事の来訪⑤

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 展示室を出た後、受付係と監視員にそれぞれ話を聞いてみたが、彼らは外注のスタッフで映画に詳しいわけでは無いからか、ここに来館するお客様と雑談することはほとんどないとのことで収穫なしだった。

 次に向かったのは図書室。4階にあるそこは閉架式ではあるものの司書のレファレンスサービスが神がかっていると有名だ。映画に特化した図書を目当てにレポートを書く学生から本職の映画評論家まで多くの方が利用され、貴重な資料を閲覧出来る喜びが静かに満ちているように思う。

「佐山氏は当館に貴重な資料を寄贈頂いたことがあります。ですが比江島氏はコレクションのジャンルが当図書室の所蔵とは違いますので、あまりお見えにはなられなかったでしょうかね」

 カウンター業務を他と交代して遣ってきた井ノ口は簡潔にそう辻堂刑事に答える。彼はここの司書として一番長く勤務しているので、彼ならばなにか知っているのでは、と思ったのだが。

「そうでしたか。比江島さんのことは置いておいて、それでも佐山さんはよくこちらを利用されていたのでしょう? 例えばカウンター業務の際に雑談をされたりですとか、他に親しくしていた司書さんがいたとか、ご存知のことありませんか?」
「······お客様の個人情報を話すのは良くないかと思っていましたが、彼ももう故人となられましたしね。
 実は佐山さんは図書室でレファレンスを受ける際に必ず私を指名するほど信頼を置かれていまして、彼が今までの業績を記そうと私家本制作をした際には校正のお手伝いをいたしました」
「そうだったんですか?!」

 私の方が驚いて反射的に答えてしまった。

「ええ。他の目も必要だからということで、映画公開年の確認だとか、役者名に誤りがないかとかですね。もう彼は本当に几帳面でデータ作りもお好きですから、さほど赤など入れなかったのですが、出版社の方のミスで図版のナンバリングがズレていたとか、そういうもののチェックが主でしたかね。
 今でも校正原稿持ってますよ。第二弾を出したいとお話もしていましたし、とても意欲的な方で、······こんな急に亡くなられるとは思いませんでした」

 知らないところで佐山氏との交流が育まれていたようで、井ノ口の目に少し光るものがあるようだが見なかったことにしよう。

「親しくされていた方の死を迎えられたばかりで、お話を聞きに来てすみません。お辛かったですね。 
 でも、一つ気になるのですが」

 辻堂刑事は何てことのないように質問をぶつけた。

「どうして佐山氏の訃報をご存知なのですか?」

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