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055 カルト映画と殺人⑥
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個室に取り残され、涙を止めるようにしながらじっと握りしめた手を見つめる。
比江島氏と私には睡眠薬とアルコールを併用して使われている。もしかしたら八頭女史も。
八頭女史の邸にいたのは清水夫婦と私、それから後からやって来た川真田氏と門木氏。もし私が寝てしまった後に誰かが来客を引き入れていたなら、他にも容疑者はいることになる。
清水夫妻は高齢だし、八頭女史の住む本邸の出入りは夜間に関してはほとんど知らないだろう。
ただこの邸は壁もすごく高いしセキュリティもしっかりしているだろう。中からの誘導なくどうやって入って来られる?
それとあの悪魔崇拝みたいな儀式を八頭女史の体を使ってやらせたのは、何の意味があるのだろう。凍らせた比江島氏の一部を持ち込んでいることから、比江島氏の犯人と八頭女史の犯人は同一人物? そして氷の準備が出来ていたことから、この日に八頭女史を殺すことは既定路線だった?
映画『夜を殺めた姉妹』の見立て?
比江島の死は明らかに阿部定のオマージュだが、地下室もしくは密室で亡くなるという映画があるならそれの見立て?
佐山氏の死は何の見立てもない。
それはそうだ。彼は事故死で殺人ではなかったのだから。でもそうではなかったら?
頭がぐらぐらして来た時、辻堂刑事がコーヒーとカバンを持ってきてくれた。
「中身を確認して下さい。何か不足しているものとかありますか?」
ノロノロとカバンの中身を確認する。特に何も変わりはないように思える。
「すみませんが、お返しする前に見分をさせていただいています。申し訳ない」
「いえ、分かりました」
「西村課長が迎えに来てくださるそうですよ。それまでここでお待ち下さいね」
再びドアが閉まり、ぼんやりとスマートフォンの電源を立ち上げた。何となく音が鳴ったら八頭女史の気に障るかもしれないと思って電源を落としていたのだった。
起動すると、LINEが数件入っていることに気付く。池上からのがダントツに多い。
〈日比野ちゃん、帰宅したよー〉
〈この肉じゃがに、ルーをドーン!〉
〈日比野ちゃんのも見せてねー。おしゃれ焼きトマチーズカレー〉
〈でけた! 俺の渾身の作を見よ!!〉
〈問題です! これは誰でしょう??〉
添付された池上のリメイクカレーは、アボカドを左右に二つ並べて、その空いた種の窪みの中に卵の黄身を入れ、余った白身をスクランブルにして髪の毛に見立て、口に当たる部分には半分に切ったちくわが几帳面に上下に置かれていた。
「誰だ、これ······」
子供の福笑いみたいな写真に涙が出た。馬鹿馬鹿しいことに笑える余裕がなかったのだ。
比江島氏と私には睡眠薬とアルコールを併用して使われている。もしかしたら八頭女史も。
八頭女史の邸にいたのは清水夫婦と私、それから後からやって来た川真田氏と門木氏。もし私が寝てしまった後に誰かが来客を引き入れていたなら、他にも容疑者はいることになる。
清水夫妻は高齢だし、八頭女史の住む本邸の出入りは夜間に関してはほとんど知らないだろう。
ただこの邸は壁もすごく高いしセキュリティもしっかりしているだろう。中からの誘導なくどうやって入って来られる?
それとあの悪魔崇拝みたいな儀式を八頭女史の体を使ってやらせたのは、何の意味があるのだろう。凍らせた比江島氏の一部を持ち込んでいることから、比江島氏の犯人と八頭女史の犯人は同一人物? そして氷の準備が出来ていたことから、この日に八頭女史を殺すことは既定路線だった?
映画『夜を殺めた姉妹』の見立て?
比江島の死は明らかに阿部定のオマージュだが、地下室もしくは密室で亡くなるという映画があるならそれの見立て?
佐山氏の死は何の見立てもない。
それはそうだ。彼は事故死で殺人ではなかったのだから。でもそうではなかったら?
頭がぐらぐらして来た時、辻堂刑事がコーヒーとカバンを持ってきてくれた。
「中身を確認して下さい。何か不足しているものとかありますか?」
ノロノロとカバンの中身を確認する。特に何も変わりはないように思える。
「すみませんが、お返しする前に見分をさせていただいています。申し訳ない」
「いえ、分かりました」
「西村課長が迎えに来てくださるそうですよ。それまでここでお待ち下さいね」
再びドアが閉まり、ぼんやりとスマートフォンの電源を立ち上げた。何となく音が鳴ったら八頭女史の気に障るかもしれないと思って電源を落としていたのだった。
起動すると、LINEが数件入っていることに気付く。池上からのがダントツに多い。
〈日比野ちゃん、帰宅したよー〉
〈この肉じゃがに、ルーをドーン!〉
〈日比野ちゃんのも見せてねー。おしゃれ焼きトマチーズカレー〉
〈でけた! 俺の渾身の作を見よ!!〉
〈問題です! これは誰でしょう??〉
添付された池上のリメイクカレーは、アボカドを左右に二つ並べて、その空いた種の窪みの中に卵の黄身を入れ、余った白身をスクランブルにして髪の毛に見立て、口に当たる部分には半分に切ったちくわが几帳面に上下に置かれていた。
「誰だ、これ······」
子供の福笑いみたいな写真に涙が出た。馬鹿馬鹿しいことに笑える余裕がなかったのだ。
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