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098 第四のコレクター川真田の告白⑤
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本邸を辞した後。八頭女史の住んでいた邸を開けてもらい、今度は清水夫妻と龍正氏が私達に付き添ってくれた。
「気になるところがあるとのことでしたが」
「ええ」
私は八頭女史が亡くなっていたコレクションルームにやって来ていた。中心に置かれた祭壇がビニールに覆われている以外はあまり違いはないように見える。だが、主がいない部屋は貴重な品に溢れているというのに、どこか物悲しい。
あの日。私はここで酩酊し、気づいたら奥の平屋の和室で休ませてもらっていた。だが自力で歩いた記憶がない。
「清水ご夫妻。私がここで寝てしまった後、どうやってあの奥の部屋まで行ったのですか?」
「わたくしが布団を敷きに行きまして、それから夫婦でご誘導しようとしたのですが、あなた様は意識を失われていまして。主人では力不足でしたので、見かねたお嬢様のご友人の方が手助けをして下さいました」
「その方とは?」
「門木様です。猿のお面の。あの方が日比野様を抱き上げて部屋までお連れしたのです」
「その間日比野さんは全く目を覚まさなかった?」
「そうですね。寝ているというより意識を失っているように見えました」
実際にワインと睡眠薬で昏睡していたのだから、酔って寝ているのとは様子が違ったのだろう。
「その時の門木氏のことでお気づきのことはありましたか?」
「特には······。あ、そういえば左手首に湿布をしていたんですよ。怪我をしているのに手伝って頂いたのかと恐縮してますと、『腱鞘炎がひどくなったから貼っただけだ』とおっしゃってました。スマートフォンの使い過ぎだとかって」
「腱鞘炎······」
「今時の人はスマートフォンで何でもこなしますものね。
それでお嬢様のところに戻りましたら、お嬢様も珍しくほとんど寝ているような状態で。『彼らを帰したら戸締まりして寝るから、あなた達は引き取っていいわ』とおっしゃったので、彼らが立ち上がって玄関に向かうところまでを見てから、わたくしは簡単にお部屋を片して自室に戻ったのです」
それを聞いて龍正氏が不思議そうに首をひねる。
「妹は私に似て酒に強いタイプだが、そんなに潰れていたのか」
「はい。私もあのようなお嬢様を初めて見ました。お嬢様は『あの子のことをよろしくね』と言って、もうご自身もお休みになるのだなという口ぶりでした。私も妻もそれで引き上げてしまったのですが、お嬢様はお客様をお見送りしてすぐに、一度ドアを開けたようでした」
「気になるところがあるとのことでしたが」
「ええ」
私は八頭女史が亡くなっていたコレクションルームにやって来ていた。中心に置かれた祭壇がビニールに覆われている以外はあまり違いはないように見える。だが、主がいない部屋は貴重な品に溢れているというのに、どこか物悲しい。
あの日。私はここで酩酊し、気づいたら奥の平屋の和室で休ませてもらっていた。だが自力で歩いた記憶がない。
「清水ご夫妻。私がここで寝てしまった後、どうやってあの奥の部屋まで行ったのですか?」
「わたくしが布団を敷きに行きまして、それから夫婦でご誘導しようとしたのですが、あなた様は意識を失われていまして。主人では力不足でしたので、見かねたお嬢様のご友人の方が手助けをして下さいました」
「その方とは?」
「門木様です。猿のお面の。あの方が日比野様を抱き上げて部屋までお連れしたのです」
「その間日比野さんは全く目を覚まさなかった?」
「そうですね。寝ているというより意識を失っているように見えました」
実際にワインと睡眠薬で昏睡していたのだから、酔って寝ているのとは様子が違ったのだろう。
「その時の門木氏のことでお気づきのことはありましたか?」
「特には······。あ、そういえば左手首に湿布をしていたんですよ。怪我をしているのに手伝って頂いたのかと恐縮してますと、『腱鞘炎がひどくなったから貼っただけだ』とおっしゃってました。スマートフォンの使い過ぎだとかって」
「腱鞘炎······」
「今時の人はスマートフォンで何でもこなしますものね。
それでお嬢様のところに戻りましたら、お嬢様も珍しくほとんど寝ているような状態で。『彼らを帰したら戸締まりして寝るから、あなた達は引き取っていいわ』とおっしゃったので、彼らが立ち上がって玄関に向かうところまでを見てから、わたくしは簡単にお部屋を片して自室に戻ったのです」
それを聞いて龍正氏が不思議そうに首をひねる。
「妹は私に似て酒に強いタイプだが、そんなに潰れていたのか」
「はい。私もあのようなお嬢様を初めて見ました。お嬢様は『あの子のことをよろしくね』と言って、もうご自身もお休みになるのだなという口ぶりでした。私も妻もそれで引き上げてしまったのですが、お嬢様はお客様をお見送りしてすぐに、一度ドアを開けたようでした」
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