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第1章 クソ勇者からはじまる簡単なお仕事
第46話 暗黒魔境
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桂木翼がこの世界に転生したことは彼の意志ではない。ましてや〈エルフの巫女のガーディアン〉というミッションが重要な役割であるということは重々承知しているが、どちらかというと物見遊山で実行する仕事……いや、作業だと考えていた。
その作業の過程で、〈エルフの巫女〉であるセレスティーに会う前に、ロキをはじめとする六人の冒険者たちに出会った。
〈エルフの巫女のガーディアン〉の候補として選ばれた彼らはツバサ・フリューゲルとは違い、自分たちの強い意思で、尊き意志で、この世界を守るガーディアンとして名乗りを上げていた。
ところが、彼らの志は虚しく、セレスティーに出会う前に殺害されてしまった。
犯人は邪悪な存在に操られて何者か……。おそらくはアークフェリス族の長老会だろう。
だが、彼らが黎明樹によって選ばれた理由をツバサは知らないし、彼らのミッションの失敗に責任を負う必要もない。
しかし……、彼らの尊き意志を穢す行為を見て見ぬふりはできないし、それは絶対に許されることではない。
ツバサは自分の愚かな認識に戒めを込めて改名した。
セブンス・クロイツ――
それが彼の意志を表す現在の名前である。
――ロキ……君たちの意志は俺が必ず成就させる。
◇ ◇ ◇
魔法研究所所長であり魔道士団団長でもあったマックス・フレッチャーは、現在はツバサ・フリューゲル殺害犯人の容疑者として追われる身であった。
そのフレッチャーと弟子のビアンカとルッツの姉弟が天空族と遭遇した頃、セブンスたちは暗黒大陸の西側にあるルージュ山脈を超えて暗黒魔境に到達していた。
暗黒魔境をさらに西へ行けばパンドラ大陸に渡るための岬がある。
ところが、この暗黒魔境が一番の難所で、世界でも最強の魔獣が生息している人跡未踏の地なのだ。
「セレスティー! そっちに行ったぞ!」
セブンスは大声を上げて注意を促す。
黒光りをする肌を持つ巨大な魔獣――オーガキング――がハイエルフの方へ向かって突進していく。
ここでは大きな音を出すと、人間にとっては命取りとなる魔境――暗黒魔境なのだ。
「待ってました!」
だが、彼らにとっては些細な問題らしい。その声だけ聞いていると、まるでボール蹴りをして遊んでいるかのように聞こえる。
だが、遊びの対象はボールではなく魔獣である。そして、ドスンドスンという地響きを立てて走ってくる三メートルを超す巨体が棍棒を振り上げる。
「電撃槌《トールハンマー》スペシャル!」
「ピシャーッ!」という大気を切り裂く音の後に、「ドッカーン!」という大地を震わせる重低音が聞こえた。
牢獄の一件からセレスティーは放出系の魔法が使えないのではないかとセブンスは考えていたが、実際には強力な雷属性の魔法を放つことができた。
「スペシャルって何だよ?」
「かっこいいと思わないの? ダーリン」
「う~ん、まあそうかな? 名称はともかく威力が凄まじいな」
――それにしても、セレスティーの魔力は凄まじいな。俺が守る必要ってないんじゃないか?
セブンスはエルフの巫女のガーディアンを務める自信が揺らいでいたが、彼女にはどことなく危うさがあるし、たった一人で自分の身を守るということがどれだけ難しいいことか理解はしている。
彼らが軽口を叩いている間、オーガの上位種であるオーガキングが火柱となって、大地に倒れ込んだ。
落雷という自然災害の前には、魔獣といえども近寄る意味はない。彼らの生存本能は逃げろ、隠れろと主張しているはずだ。
「暗黒魔境では音を立ててはいけない。しかし、自然災害級ならばその限りではない……か。よく言ったものだな、セレスティー」
「そうでしょ。見直した? ダーリン」
「さすがとし……、いや、セレスティーだ。魔獣博士だな」
「ん? 何を言おうとしたのかな~?」
セブンスは危うく歳の功と言いそうになった。それを言ったら恐ろしいことになりそうだ。セレスティーはハイエルフなので、おそろしく長生きのはずだ。実際の年齢を知りたいところだが、地球では女性に年齢を訊いてはいけないという常識がこの世界でも当て嵌まるらしい。
「セブンスちゃん、わたしは三百歳くらいかな~」
水の精霊ミスティーが突然現れて話に割り込んできた。
精霊は悪戯好きなので、話の内容が面白そうだと常に割り込んでくる傾向がある。
「あれ? 意外と若いんだね。千年以上は生きていると思ってたよ」
「実際はそのくらい生きているけど、自我に目覚めたのは三百年前だと思うわ」
「ごめん、俺の常識からかけ離れすぎていて、理解できない、ミスティー」
話を面白くしようと思って千年以上と言ったセブンスであったが、当たっていたことに狼狽を隠せない。
ちなみに、ミスティーは二十代の綺麗なお姉さんにみえる。いや、色っぽいお姉さんか?
ミスティーはセブンスの反応に満足したのか、すぐに消えてしまった。まったく、自由気ままな精霊さまだ。
「わ、わたしはね……、あのね……」
「セレスティーは無理に答えなくていいから」
「そう? 判った。答えない」
セレスティーの見た目は一七歳くらいにしか見えないので、精神年齢が三十歳のセブンスからすると世代ギャップが気になるが、セレスティーに関してはまったく気にする必要がなさそうだ。それは勿論、見た目と実年齢がかなり乖離しているはずだからである。
「わたしは十二歳よ。お兄ちゃん」
「フェルは年齢相応でかわいいな。安心できるよ」
「えへへ~。褒められちゃった」
フェルが満面の笑みでセブンスに抱きつく。
神獣が人化したフェルは、見た目が人狼族の少女と変わらない。よって、セブンスはフェルのモフモフの頭を撫でる。セブンスにとって、それは自然な行為なのだ。
「むふ~、もっと撫でて~」
セブンスの仲間にはクラウという人造人間がいる。今は謎の魔族少女と一緒に異次元屋敷〈グラン邸〉で待機していた。
クラウはセブンスと同年代の一六歳くらいにみえる少女だ。彼女はセブンスに奉仕するメイドと自認しており、いつもメイド服を着ている。実際の役割としては、メイドの役割もあるのだが、優秀な秘書と言ったところだろう。彼女はセブンスの魔法マップを操作することができるので、周囲の警戒は彼女の役目となっている。現在クラウはグラン邸の中にいるので、周囲の警戒は神獣のフェルが役目を引き継いでいる。もっとも、フェルの場合は彼女の卓越した五感があるので魔法マップを使う必要がない。
魔族少女については扱いが難しい。彼女の素性が魔族であること以外全くわからないからだ。セブンスは今後彼女をどう扱うか決めかねている。とりあえず、彼女から事情を詳しく聞かなければならないだろう。
「次はフェルの番だな。近くに魔獣はいるか?」
「三体いるよ。たぶん、グアンナロードが二体で、普通のグアンナが一体いる。三百メートルくらい先かな」
グアンナというのは牛型の魔獣で、体格はアフリカゾウと同じくらいの大きさである。
普通のグアンナはただ大きいだけの魔獣だが、グアンナロードは体に雷属性の防護膜を纏うことができるのでとても厄介だ。
つまり、通常の武器でグアンナロードを安易に攻撃すると、攻撃したほうが感電死してしまう。
「フェル! 大丈夫か?」
「大丈夫だよ~。フェルの攻撃観ててね」
グアンナの方向に走っていくフェルをセブンスとセレスティーが追いかけた。
魔獣の近くに来ると凄まじい衝突音が聞こえた。
二体のグアンナロードがお互い頭をぶつけて戦っているのだ。お互いに全く引く気はないらしい。そして、その近くでは普通のグアンナが様子を伺っている。
「なるほど、二体のオスが一体のメスを取り合っている構図か。邪魔しちゃ悪いかな?」
彼らの体は青白く光り、時折小規模な放電をしている。グアンナが雷属性ならばセレスティーとは相性が悪いはずだ。
「フェルの番でよかったな。でも、どうする? 無視してこのまま先へ行くか?」
「どっちでもいいよ、お兄ちゃん。スルーしようか?」
フェルがセブンスを振り返るとセレスティーが大声で叫んだ。
「だめ! 順番通りに魔獣を倒して!」
セレスティーが急に怒り出して、フェルもセブンスも一瞬固まった。
「どうしたんだセレスティー。怒ることじゃないだろ?」
「怒鳴ってごめんなさいダーリン。でも、戦ってほしいの」
――本当か?
セブンスはセレスティーの本心がなんとなく解かっていた。戦いたいんじゃなくて、先へ進みたくないんじゃないかと……。
「フェル! 順番通り魔獣を倒してくれ! でも……相手は帯電しているから、牙で倒すのは無理なんじゃないか?」
倒せと言ったり、心配したり、セレスティーの剣幕で、セブンスは動揺しているようだ。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。心配しないで!」
フェルが再び魔獣たちの方を向くと、彼女の頭に一本の角が現れた。その角からは強力な魔力放射が感じられる。
グアンナロードたちもフェルの角から発せられる魔力放射を感じ取り、メスの奪い合いを中止して、フェルを威嚇し始めた。
彼らとしたら訳が解らないだろう。危険を感じたと思ったら、人間の少女が立っているのだから。
「聖流星《ホーリーメテオ》スペシャル!」
――お前もスペシャルか……。
フェルの角から神々しい光を発する弾丸が、二体のグアンナロード目掛けて次々と発射された。
光弾がグアンナロードたちの体を貫いていく。そして、流れ弾がメスのグアンナにも命中した。
三体の魔獣は地響きを立てて倒れた。
「すげーっ……。フェル……、こんなことができたのか」
「えっへん。見直した? お兄ちゃん」
「見直したなんてもんじゃないよ。お兄ちゃんは誇らしいよ」
「まったくです。フェルちゃんはわたしたちの貴重な戦力だということを改めて認識しました」
セレスティーは「さすがにわたしの義妹です……」と呟いていたが、セブンスは無視することにした。
「今くらいの音だと、他の魔獣がよってくるかもしれないな……」
「次はお兄ちゃんの番だよ!」
「ああ、判ったよ」
セブンスとしてはあまり戦いたくないが、セレスティーが満足気に頷いている。
――まあ、仕方ないか。
彼らは暗黒魔境を西へ進み始めたばかりで、アルフェラッツ王国にたどり着くにはまだ時間がかかりそうだった。
【後書き】
年末年始に時間が取れそうなので、話をもうすこし進められると思います。
その作業の過程で、〈エルフの巫女〉であるセレスティーに会う前に、ロキをはじめとする六人の冒険者たちに出会った。
〈エルフの巫女のガーディアン〉の候補として選ばれた彼らはツバサ・フリューゲルとは違い、自分たちの強い意思で、尊き意志で、この世界を守るガーディアンとして名乗りを上げていた。
ところが、彼らの志は虚しく、セレスティーに出会う前に殺害されてしまった。
犯人は邪悪な存在に操られて何者か……。おそらくはアークフェリス族の長老会だろう。
だが、彼らが黎明樹によって選ばれた理由をツバサは知らないし、彼らのミッションの失敗に責任を負う必要もない。
しかし……、彼らの尊き意志を穢す行為を見て見ぬふりはできないし、それは絶対に許されることではない。
ツバサは自分の愚かな認識に戒めを込めて改名した。
セブンス・クロイツ――
それが彼の意志を表す現在の名前である。
――ロキ……君たちの意志は俺が必ず成就させる。
◇ ◇ ◇
魔法研究所所長であり魔道士団団長でもあったマックス・フレッチャーは、現在はツバサ・フリューゲル殺害犯人の容疑者として追われる身であった。
そのフレッチャーと弟子のビアンカとルッツの姉弟が天空族と遭遇した頃、セブンスたちは暗黒大陸の西側にあるルージュ山脈を超えて暗黒魔境に到達していた。
暗黒魔境をさらに西へ行けばパンドラ大陸に渡るための岬がある。
ところが、この暗黒魔境が一番の難所で、世界でも最強の魔獣が生息している人跡未踏の地なのだ。
「セレスティー! そっちに行ったぞ!」
セブンスは大声を上げて注意を促す。
黒光りをする肌を持つ巨大な魔獣――オーガキング――がハイエルフの方へ向かって突進していく。
ここでは大きな音を出すと、人間にとっては命取りとなる魔境――暗黒魔境なのだ。
「待ってました!」
だが、彼らにとっては些細な問題らしい。その声だけ聞いていると、まるでボール蹴りをして遊んでいるかのように聞こえる。
だが、遊びの対象はボールではなく魔獣である。そして、ドスンドスンという地響きを立てて走ってくる三メートルを超す巨体が棍棒を振り上げる。
「電撃槌《トールハンマー》スペシャル!」
「ピシャーッ!」という大気を切り裂く音の後に、「ドッカーン!」という大地を震わせる重低音が聞こえた。
牢獄の一件からセレスティーは放出系の魔法が使えないのではないかとセブンスは考えていたが、実際には強力な雷属性の魔法を放つことができた。
「スペシャルって何だよ?」
「かっこいいと思わないの? ダーリン」
「う~ん、まあそうかな? 名称はともかく威力が凄まじいな」
――それにしても、セレスティーの魔力は凄まじいな。俺が守る必要ってないんじゃないか?
セブンスはエルフの巫女のガーディアンを務める自信が揺らいでいたが、彼女にはどことなく危うさがあるし、たった一人で自分の身を守るということがどれだけ難しいいことか理解はしている。
彼らが軽口を叩いている間、オーガの上位種であるオーガキングが火柱となって、大地に倒れ込んだ。
落雷という自然災害の前には、魔獣といえども近寄る意味はない。彼らの生存本能は逃げろ、隠れろと主張しているはずだ。
「暗黒魔境では音を立ててはいけない。しかし、自然災害級ならばその限りではない……か。よく言ったものだな、セレスティー」
「そうでしょ。見直した? ダーリン」
「さすがとし……、いや、セレスティーだ。魔獣博士だな」
「ん? 何を言おうとしたのかな~?」
セブンスは危うく歳の功と言いそうになった。それを言ったら恐ろしいことになりそうだ。セレスティーはハイエルフなので、おそろしく長生きのはずだ。実際の年齢を知りたいところだが、地球では女性に年齢を訊いてはいけないという常識がこの世界でも当て嵌まるらしい。
「セブンスちゃん、わたしは三百歳くらいかな~」
水の精霊ミスティーが突然現れて話に割り込んできた。
精霊は悪戯好きなので、話の内容が面白そうだと常に割り込んでくる傾向がある。
「あれ? 意外と若いんだね。千年以上は生きていると思ってたよ」
「実際はそのくらい生きているけど、自我に目覚めたのは三百年前だと思うわ」
「ごめん、俺の常識からかけ離れすぎていて、理解できない、ミスティー」
話を面白くしようと思って千年以上と言ったセブンスであったが、当たっていたことに狼狽を隠せない。
ちなみに、ミスティーは二十代の綺麗なお姉さんにみえる。いや、色っぽいお姉さんか?
ミスティーはセブンスの反応に満足したのか、すぐに消えてしまった。まったく、自由気ままな精霊さまだ。
「わ、わたしはね……、あのね……」
「セレスティーは無理に答えなくていいから」
「そう? 判った。答えない」
セレスティーの見た目は一七歳くらいにしか見えないので、精神年齢が三十歳のセブンスからすると世代ギャップが気になるが、セレスティーに関してはまったく気にする必要がなさそうだ。それは勿論、見た目と実年齢がかなり乖離しているはずだからである。
「わたしは十二歳よ。お兄ちゃん」
「フェルは年齢相応でかわいいな。安心できるよ」
「えへへ~。褒められちゃった」
フェルが満面の笑みでセブンスに抱きつく。
神獣が人化したフェルは、見た目が人狼族の少女と変わらない。よって、セブンスはフェルのモフモフの頭を撫でる。セブンスにとって、それは自然な行為なのだ。
「むふ~、もっと撫でて~」
セブンスの仲間にはクラウという人造人間がいる。今は謎の魔族少女と一緒に異次元屋敷〈グラン邸〉で待機していた。
クラウはセブンスと同年代の一六歳くらいにみえる少女だ。彼女はセブンスに奉仕するメイドと自認しており、いつもメイド服を着ている。実際の役割としては、メイドの役割もあるのだが、優秀な秘書と言ったところだろう。彼女はセブンスの魔法マップを操作することができるので、周囲の警戒は彼女の役目となっている。現在クラウはグラン邸の中にいるので、周囲の警戒は神獣のフェルが役目を引き継いでいる。もっとも、フェルの場合は彼女の卓越した五感があるので魔法マップを使う必要がない。
魔族少女については扱いが難しい。彼女の素性が魔族であること以外全くわからないからだ。セブンスは今後彼女をどう扱うか決めかねている。とりあえず、彼女から事情を詳しく聞かなければならないだろう。
「次はフェルの番だな。近くに魔獣はいるか?」
「三体いるよ。たぶん、グアンナロードが二体で、普通のグアンナが一体いる。三百メートルくらい先かな」
グアンナというのは牛型の魔獣で、体格はアフリカゾウと同じくらいの大きさである。
普通のグアンナはただ大きいだけの魔獣だが、グアンナロードは体に雷属性の防護膜を纏うことができるのでとても厄介だ。
つまり、通常の武器でグアンナロードを安易に攻撃すると、攻撃したほうが感電死してしまう。
「フェル! 大丈夫か?」
「大丈夫だよ~。フェルの攻撃観ててね」
グアンナの方向に走っていくフェルをセブンスとセレスティーが追いかけた。
魔獣の近くに来ると凄まじい衝突音が聞こえた。
二体のグアンナロードがお互い頭をぶつけて戦っているのだ。お互いに全く引く気はないらしい。そして、その近くでは普通のグアンナが様子を伺っている。
「なるほど、二体のオスが一体のメスを取り合っている構図か。邪魔しちゃ悪いかな?」
彼らの体は青白く光り、時折小規模な放電をしている。グアンナが雷属性ならばセレスティーとは相性が悪いはずだ。
「フェルの番でよかったな。でも、どうする? 無視してこのまま先へ行くか?」
「どっちでもいいよ、お兄ちゃん。スルーしようか?」
フェルがセブンスを振り返るとセレスティーが大声で叫んだ。
「だめ! 順番通りに魔獣を倒して!」
セレスティーが急に怒り出して、フェルもセブンスも一瞬固まった。
「どうしたんだセレスティー。怒ることじゃないだろ?」
「怒鳴ってごめんなさいダーリン。でも、戦ってほしいの」
――本当か?
セブンスはセレスティーの本心がなんとなく解かっていた。戦いたいんじゃなくて、先へ進みたくないんじゃないかと……。
「フェル! 順番通り魔獣を倒してくれ! でも……相手は帯電しているから、牙で倒すのは無理なんじゃないか?」
倒せと言ったり、心配したり、セレスティーの剣幕で、セブンスは動揺しているようだ。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。心配しないで!」
フェルが再び魔獣たちの方を向くと、彼女の頭に一本の角が現れた。その角からは強力な魔力放射が感じられる。
グアンナロードたちもフェルの角から発せられる魔力放射を感じ取り、メスの奪い合いを中止して、フェルを威嚇し始めた。
彼らとしたら訳が解らないだろう。危険を感じたと思ったら、人間の少女が立っているのだから。
「聖流星《ホーリーメテオ》スペシャル!」
――お前もスペシャルか……。
フェルの角から神々しい光を発する弾丸が、二体のグアンナロード目掛けて次々と発射された。
光弾がグアンナロードたちの体を貫いていく。そして、流れ弾がメスのグアンナにも命中した。
三体の魔獣は地響きを立てて倒れた。
「すげーっ……。フェル……、こんなことができたのか」
「えっへん。見直した? お兄ちゃん」
「見直したなんてもんじゃないよ。お兄ちゃんは誇らしいよ」
「まったくです。フェルちゃんはわたしたちの貴重な戦力だということを改めて認識しました」
セレスティーは「さすがにわたしの義妹です……」と呟いていたが、セブンスは無視することにした。
「今くらいの音だと、他の魔獣がよってくるかもしれないな……」
「次はお兄ちゃんの番だよ!」
「ああ、判ったよ」
セブンスとしてはあまり戦いたくないが、セレスティーが満足気に頷いている。
――まあ、仕方ないか。
彼らは暗黒魔境を西へ進み始めたばかりで、アルフェラッツ王国にたどり着くにはまだ時間がかかりそうだった。
【後書き】
年末年始に時間が取れそうなので、話をもうすこし進められると思います。
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