私は奴隷。勇者に復讐することにした。

千代杜 長門

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国家転覆予定は犯罪なので辞めましょう

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 ようやく食事を終わらせ、パンパンに膨れた腹を撫でていると部屋をノックされた。

「誰だ?」
「ミーシャ姉ちゃん。俺。オレオだよ。みんないるけど入っていい?」
「…おっちゃんに声掛けたか?」
「もちろん!」
「ならいいよ。」

 許しを出すと待ってましたとばかりに扉を開けて駆け寄ってくるちび共が5人。
7歳から10歳までの愛おしい教え子達。

おっちゃんに面倒を見ろと言われていた私と同じ交じり者たちだ。

 狼族の耳としっぽにユニコーンの角を生やした獣人、オレオ。

兎族の耳としっぽに白い天使の羽をはやしたアレッサーナ。

パッと見は美しい森のエルフだけど、額から魔石を覗かせるユグナー。

 顔や体の一部に鱗を生やし、腰までの長い髪をハリネズミのように硬くできる砂のエルフのような見た目の、モイセ。

魔族の中でも特異な一族、紡ぎ手の一族にそっくりな下半身は蜘蛛、上半身は森のエルフのアドリアナ

記憶の中よりもみんな随分大きくなった。

「久しぶりだね!」
「姉ちゃん覚えてる?ぼくユグナーだよ!」
「アドリアナ、覚えてる?」
「…モイセ」
「アレッサーナだよ。覚えてるよね?」
「わちゃわちゃ話すんじゃないよちび共…おぼえてるに決まってんだろ!」

 不安そうな顔をしたバカ達を抱きしめてやるとギャン泣きされた。解せぬ。
だけど変わらない温もりと重みに釣られるように目頭が熱くなった。

「……泣き止んだか?」
「ぐすっ…ん。」

1番最後まで泣いていたオレオの頭をぐちゃぐちゃに掻き回しながら笑いかけるとようやくみんな笑顔を浮かべた。

「ねえちゃ…前よりも細くなった」
「性格も悪くなった」
「んだとオレオ。」

 逃げようとするバカを押さえ込み、握りこぶしでこめかみをグリグリと圧迫する伝統技をかけながらみんなとバカ笑い。
3年前に失った愛おしい騒がしさだ。

「いたいいたいいたいって!」
「うるさいオレオ。周りの迷惑と時間を考えろ」
「理不尽!チョーいじめ!」
「いじめ結構。歳上に聞く口がなってないんだよ。」
「ぎゃー!ごめんなさいごめんなさい!」

そこそこぐったりするオレオをまた抱きしめてみんなでまたゲラゲラ笑う。
ベットの周りに腰掛けたりよっかかったりする教え子たちを撫でながらかつてないほどの癒しを感じた。

「なんだお前ら、3年も立ってるのにまだ見つからないのか?」
「んー俺たちは法律の国で働くことにしたから。ユグナーやモイセはともかくみんな混じり者って分かっちゃうからね」

オレオの言葉に全員が頷いた。

「特に私。お店に出るだけで化け物呼ばわりよ?やんなっちゃう。」

アドリアナが憂鬱そうに溜息をつきながら下半身を隠すドレスを捲りあげた。
そこには白く美しい蜘蛛の体が存在していた。

「僕はアドリアナの蜘蛛、好きだよ。白くて綺麗で神様の使いみたい。」
「ユグナー…」

 頬を染めながら手を取り合うお熱い2人に周りはまたか、と言うように苦笑をこぼした。

「法律の国で働く、かぁ」

 どんなに高度な知識を持っていても、混ざり者や掛け合わせの時点で買い手が絞られる。

買い手のつかない奴隷は法律の国が全て引き取り、神官や公認奴隷商人などに育てられる。

 ありがたい措置ではあるが混血というただ一つの要素のみで私たちの未来は決定されてしまうのだ。

「…決めた、おっちゃんから私のこと聞いてるでしょ。」
「勇者に喧嘩売ったこと?」
「法律の国で裁判すること?」
「全部聞いてんじゃねえか。いいか、私は勇者とあんの憎たらしいハーレムの女どもから慰謝料せしめとる!そしてお前達のこと買ってあげる」
「本当?!」
「当たり前さ。そして余った金を元手に私は混血初の王家御用達商人になって、それを足掛かりに貴族になって、混ざり者に有利な世界を作るからお前らの将来安泰だー!」

気分を盛り上げるように拳を突き上げると子供たちがきゃあきゃあと声を上げる。

「わーい!バンザーイ!」
「ミーシャバンザーイ」
「エルストイバンザーイ!」
「まずは各貴族領に設置されている雑種村を襲撃して混じり者たちを開放。適当な土地に建国。そして全ての罪と責任と王様ってめんどくさい地位と名誉と金をおっちゃんに擦り付けて私たちが国を影から操る!なにか文句はあるかー!!!!!」
「異議なーし!」
「異議なーし!」
「さんせー!!」
「俺騎士ー!」
「賛成!私何にしたらいいの?魔法が得意だから魔術師?」
「よしよし、異議はないな!」
「あるに決まってるわど阿呆!」
「ぎゃんっ!?」

本日二回目、目から火花が散りました。

「だっっっから、何すんだこのクソジジイ!」

いつの間にか部屋の中に入り込みやがったくそじじいに大して噛み付くとくそじじいは拳に息を吐きかけていた。

「何すんだはこっちのセリフだ!無理せず寝てろって言ってんのになにさりげなく国家転覆の計画立ててんだばか野郎!」
「野郎じゃねえわ淑女だわ!お前に名誉と金と地位をやるって言ってんだろ!」
「淑女って言葉を辞書で調べてからいいやがれこのすっとこどっこい!さりげなく罪と責任も擦り付けるって言ってたじゃねえか!」
「子供に責任取らせるたァ、鬼の所業だなたぬき腹!あ、分け前は二・八な、おっちゃんが二」
「うるせえぞク    ソ    ガ    キ !くだらない事言ってないで早く寝ろ!明日には法律の国からの使者が顔合わせに来るんだからな!!」

最後に両耳をびっ!と引っ張ってからおっちゃんは部屋から出ていった。
さりげなく、どんな宝よりも魅力的な仕事の書類を置いて。

「しゃ、しゃーないな、仕事してから寝るか」

いそいそと書類に手を伸ばした私をオレオが肩を掴んでベットにぬい止める。

「姉ちゃん、仕事は明日」
「いや、仕事しろってことでおっちゃんも置いてったし?」
「それで今日ベット暮らしなんでしょ?明日」
「いやほら、私が仕事して金稼がないとお前達買うの遅くなるから仕方ないよな!?」

周りを見回しても同意の声はひとつもあがらず、アドリアナが蜘蛛足のひとつを私の首元に持ってくる。うわぁ、鉤爪がきれいだなー。

「お姉ちゃん。」
「はい。」
「いいから明日。」
「……はぁい。」

にこやかに笑う弟分妹分たちには勝てなかったよ。

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