6 / 12
国家転覆予定は犯罪なので辞めましょう
しおりを挟むようやく食事を終わらせ、パンパンに膨れた腹を撫でていると部屋をノックされた。
「誰だ?」
「ミーシャ姉ちゃん。俺。オレオだよ。みんないるけど入っていい?」
「…おっちゃんに声掛けたか?」
「もちろん!」
「ならいいよ。」
許しを出すと待ってましたとばかりに扉を開けて駆け寄ってくるちび共が5人。
7歳から10歳までの愛おしい教え子達。
おっちゃんに面倒を見ろと言われていた私と同じ交じり者たちだ。
狼族の耳としっぽにユニコーンの角を生やした獣人、オレオ。
兎族の耳としっぽに白い天使の羽をはやしたアレッサーナ。
パッと見は美しい森のエルフだけど、額から魔石を覗かせるユグナー。
顔や体の一部に鱗を生やし、腰までの長い髪をハリネズミのように硬くできる砂のエルフのような見た目の、モイセ。
魔族の中でも特異な一族、紡ぎ手の一族にそっくりな下半身は蜘蛛、上半身は森のエルフのアドリアナ
記憶の中よりもみんな随分大きくなった。
「久しぶりだね!」
「姉ちゃん覚えてる?ぼくユグナーだよ!」
「アドリアナ、覚えてる?」
「…モイセ」
「アレッサーナだよ。覚えてるよね?」
「わちゃわちゃ話すんじゃないよちび共…おぼえてるに決まってんだろ!」
不安そうな顔をしたバカ達を抱きしめてやるとギャン泣きされた。解せぬ。
だけど変わらない温もりと重みに釣られるように目頭が熱くなった。
「……泣き止んだか?」
「ぐすっ…ん。」
1番最後まで泣いていたオレオの頭をぐちゃぐちゃに掻き回しながら笑いかけるとようやくみんな笑顔を浮かべた。
「ねえちゃ…前よりも細くなった」
「性格も悪くなった」
「んだとオレオ。」
逃げようとするバカを押さえ込み、握りこぶしでこめかみをグリグリと圧迫する伝統技をかけながらみんなとバカ笑い。
3年前に失った愛おしい騒がしさだ。
「いたいいたいいたいって!」
「うるさいオレオ。周りの迷惑と時間を考えろ」
「理不尽!チョーいじめ!」
「いじめ結構。歳上に聞く口がなってないんだよ。」
「ぎゃー!ごめんなさいごめんなさい!」
そこそこぐったりするオレオをまた抱きしめてみんなでまたゲラゲラ笑う。
ベットの周りに腰掛けたりよっかかったりする教え子たちを撫でながらかつてないほどの癒しを感じた。
「なんだお前ら、3年も立ってるのにまだ見つからないのか?」
「んー俺たちは法律の国で働くことにしたから。ユグナーやモイセはともかくみんな混じり者って分かっちゃうからね」
オレオの言葉に全員が頷いた。
「特に私。お店に出るだけで化け物呼ばわりよ?やんなっちゃう。」
アドリアナが憂鬱そうに溜息をつきながら下半身を隠すドレスを捲りあげた。
そこには白く美しい蜘蛛の体が存在していた。
「僕はアドリアナの蜘蛛、好きだよ。白くて綺麗で神様の使いみたい。」
「ユグナー…」
頬を染めながら手を取り合うお熱い2人に周りはまたか、と言うように苦笑をこぼした。
「法律の国で働く、かぁ」
どんなに高度な知識を持っていても、混ざり者や掛け合わせの時点で買い手が絞られる。
買い手のつかない奴隷は法律の国が全て引き取り、神官や公認奴隷商人などに育てられる。
ありがたい措置ではあるが混血というただ一つの要素のみで私たちの未来は決定されてしまうのだ。
「…決めた、おっちゃんから私のこと聞いてるでしょ。」
「勇者に喧嘩売ったこと?」
「法律の国で裁判すること?」
「全部聞いてんじゃねえか。いいか、私は勇者とあんの憎たらしいハーレムの女どもから慰謝料せしめとる!そしてお前達のこと買ってあげる」
「本当?!」
「当たり前さ。そして余った金を元手に私は混血初の王家御用達商人になって、それを足掛かりに貴族になって、混ざり者に有利な世界を作るからお前らの将来安泰だー!」
気分を盛り上げるように拳を突き上げると子供たちがきゃあきゃあと声を上げる。
「わーい!バンザーイ!」
「ミーシャバンザーイ」
「エルストイバンザーイ!」
「まずは各貴族領に設置されている雑種村を襲撃して混じり者たちを開放。適当な土地に建国。そして全ての罪と責任と王様ってめんどくさい地位と名誉と金をおっちゃんに擦り付けて私たちが国を影から操る!なにか文句はあるかー!!!!!」
「異議なーし!」
「異議なーし!」
「さんせー!!」
「俺騎士ー!」
「賛成!私何にしたらいいの?魔法が得意だから魔術師?」
「よしよし、異議はないな!」
「あるに決まってるわど阿呆!」
「ぎゃんっ!?」
本日二回目、目から火花が散りました。
「だっっっから、何すんだこのクソジジイ!」
いつの間にか部屋の中に入り込みやがったくそじじいに大して噛み付くとくそじじいは拳に息を吐きかけていた。
「何すんだはこっちのセリフだ!無理せず寝てろって言ってんのになにさりげなく国家転覆の計画立ててんだばか野郎!」
「野郎じゃねえわ淑女だわ!お前に名誉と金と地位をやるって言ってんだろ!」
「淑女って言葉を辞書で調べてからいいやがれこのすっとこどっこい!さりげなく罪と責任も擦り付けるって言ってたじゃねえか!」
「子供に責任取らせるたァ、鬼の所業だなたぬき腹!あ、分け前は二・八な、おっちゃんが二」
「うるせえぞク ソ ガ キ !くだらない事言ってないで早く寝ろ!明日には法律の国からの使者が顔合わせに来るんだからな!!」
最後に両耳をびっ!と引っ張ってからおっちゃんは部屋から出ていった。
さりげなく、どんな宝よりも魅力的な仕事の書類を置いて。
「しゃ、しゃーないな、仕事してから寝るか」
いそいそと書類に手を伸ばした私をオレオが肩を掴んでベットにぬい止める。
「姉ちゃん、仕事は明日」
「いや、仕事しろってことでおっちゃんも置いてったし?」
「それで今日ベット暮らしなんでしょ?明日」
「いやほら、私が仕事して金稼がないとお前達買うの遅くなるから仕方ないよな!?」
周りを見回しても同意の声はひとつもあがらず、アドリアナが蜘蛛足のひとつを私の首元に持ってくる。うわぁ、鉤爪がきれいだなー。
「お姉ちゃん。」
「はい。」
「いいから明日。」
「……はぁい。」
にこやかに笑う弟分妹分たちには勝てなかったよ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる