いざ出陣!! 南相馬高校 野馬追部!

七日町 糸

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本編

第三話 野馬追部員の一日

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 一週間後の月曜日、わたしは午前五時ちょうどに、野馬追部部室についた。
「おはよう!」
「あ、おはよう」
 結那とあいさつを交わし、いっしょに着替える。上は学校指定のジャージ。下は、キュロットという乗馬用の足にフィットしたパンツだ。
 拍車はつけず、靴も乗馬用の長靴に履き替える。

 ガサガサ・・・・

 厩舎の中、飼料室に入って、エサの燕麦と乾草を取り出し、馬それぞれの飼葉桶に入れて水を注いだ。
「おはよー。」
 二人で、それぞれの馬房をまわって、馬たちにあいさつをしながらエサをやっていく。

 バシャァッ!

 水桶の水も、新しいものに変え、同時に異物の混入がないかを確認する。

 もっしゃもっしゃ・・・・

 馬の咀嚼音を聞きながら、放牧場と馬場の柵を点検する。・・・・問題なし。
 厩舎に戻ると、みんなエサを食べ終えて待っていた。
「よしよし。すぐに出すからね」
 一頭ずつ、引き綱をかけて、厩舎から引き出して、牡馬と牝馬で別の馬場に放した。
「グフフ、グフフ」
 みんなうれしそうに鼻を鳴らして走っていく。
「ふぅ・・・・」
 この時点で、午前五時三十分。
「お疲れさん!」
 今日の放牧担当者じゃなかった狼森先輩と、一年の源光太が到着。
 光太は、わたしのとなりのクラスの男子。きれいに整った顔に、インテリっぽいフチなしの眼鏡をかけている・・・・・実際に頭いいんだけどね。
 こんなに高いスペックを持ってるもんだから、女子たちからはモテるらしい。だけど、本人は今のところ恋愛には興味ないみたいだ。
「じゃ、お願いします」
 それぞれに、自分の担当馬の馬房を掃除する。わたしは天照、先輩は池月、光太は摺墨、結那は鬼鹿毛が担当馬だ。

 ガラガラガラガラ・・・・

 厩舎の外に置いてあった手押し車と三又フォークを持ってくる。

 ガサッ!ドッ!

 馬房内のボロ(馬糞のこと)と寝藁をいっしょにすくって、ネコ車に載せた。
 そのまま、ネコ車を押して、中身を厩舎のわきの堆肥置き場に捨てる。
「よいしょっと・・・・」
 厩舎の二階にある倉庫から新しい寝藁を出してきて、馬房の床にまんべんなく、適度な厚さで敷いた。
 トポトポトポ・・・・
 放牧場内の水場の水も変えて、朝の作業はこれで終了。
 女子から先に、制服に着替えてから解散。この時点で朝の六時。教室には、一番乗りだ。






 がらーんとした教室、いるのはわたしと結那だけ。
 カバンから教科書を出す。今日は一時間目から苦手なコミュニケーション英語だ。その次は英表。眠くなりそうな時間割だ。
(数Ⅰと現社があるってとこが救いね。)
 朝の六時四十分くらいには、教室に人が入り始める。
「おはっよ~!!」
 やたらテンションの高い声で入ってくるのは、自称クラスのアイドルで、わたしの後ろの席の釈迦堂姫香だ。
 そのあとも、クラスメートたちが続々と入ってくる。
 自習時間のあと、朝のSHRショートホームルーム
 担任の柳井先生から今日のことに関する連絡と注意が終わると、五分間の休み時間をのあと、一時間目が始まった。





 つらい七時限の授業の後、教室の掃除、帰りのSHRがあって、解散。
「さようなら!」
 挨拶もそこそこに、野馬追部の部室に向かう。
 朝と同じ格好に着替えて、馬房に向かう。
 今日のメニューは乗馬練習。天照のいる馬場に向かう。
 落馬のトラウマは、先輩やみんなのおかげもあって、克服できそうだ。
 最初は、おとなしい池月や摺墨でやった。その次に、天照。
 どっちも、最初は牽き馬で、なれたら自分だけでやった。池月と摺墨は、案外簡単だった。でも、天照は・・・・・正直言って、まだ乗りこなせてる感覚はない。
 天照は、けっこう神経質な馬だった。
 摺墨たちが根っからの乗用馬として育てられてるのに対して、元競走馬だったからかもしれない。
「いや、いかんいかん!弱気になるな!!あさひ」
 わたしは、頭をプルプルと振って、臆病な気持ちを追い出す。
 弱気な心は馬に伝染する。心をしっかり持たないと。
「天照、今日もよろしくねっ。」
 いつものように、天照を馬場から引き出し、素早く洗い場の馬繫柱につないだ。
 背中にゼッケン、シープゼッケン、ゲルパッド、鞍の順に馬具を載せる。ズレがないよう、慎重に。

 キュッ

 鞍の腹帯を締めた。
「はい、あーんして・・・」
 無口頭絡を外して、革製のハミ付きの頭絡に付け替える。

 ガチャガチャ・・・・

 引き手をハミに取り付けると、洗い場から外に引き出す。
「今日もよろしくね!」
 馬場に引き出すと、いつものように天照に一声かけてから、鐙に足をかけて、天照の背中によじ登った。
 ここまではいつも通り。
 手綱を緩めて、天照の腹を両足でギュッと押す。

 ポク、ポク、ポク・・・・

 天照が歩きはじめた。
 これもいつも通り。
 こっから先が難関だ。まだ、わたしの指示で曲がるところまではできてない。
 そっと、右側の手綱を開いた。基本的に手綱は曲がりたい方を少し緩くする。引っ張ってもただ痛いだけだ。
 天照は、すんなりと曲がってくれる。
 手綱をしぼると、ぴたっと止まった。
(やった、できたのかな?)
 このかんじを忘れないうちに、反復練習だ。
「乗れるようになったじゃん」
 いつのまにか、狼森先輩と光太、結那がきて、柵越しにわたしを眺めていた。
「乗れてますか?」
「乗れてる乗れてる。一週間ちょっとでここまで来るのはすごいと思うよ。」
「そろそろ休ませたほうがいいよ。2時間近くも練習してたんだから」
「え!?マジ?」
 結那に言われて時計を見ると、たしかに2時間近くたっている。
 先輩は、しばらくあごに手を当てて考えて、言った。
「よし!今日はあさひの初乗りこなし記念を兼ねて、遠乗りと海漬けに行こう!!」
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