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第2章 自由連合同盟都市国家メルキオール 首都メルキオール編
第28話 宿木亭の3人部屋での一時と、この世界でも人気なあの料理の件
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俺達は今晩泊まる宿屋の3人部屋に入った。
部屋はシンプルに寝台が部屋脇に等間隔に3つ並び、テーブルと椅子もセットになっていて、3人部屋にしてはかなり広いいい部屋だ。
俺は【鑑定】と【索敵】を使って安全性を調べ、窓に【障壁】を張って、周囲に【無音領域】を展開して防音した。更に、【空間収納】から衝立を2つ出して、俺は飛鳥とクロエに渡したが、クロエからは返されてしまった。
「優さん、お気遣いありがとうございます」
『ご主人よ、我はお主等に隠し事するつもりはないから、これは不要じゃぞ』
クロエさん、親しき仲にも礼儀ありなのですよ……俺はよく言えば大らかなクロエに内心で嘆息せざるを得なかった。
「ああ、そうだ2人はお小遣いという訳ではないが、個人で自由に使える金を渡しておこう。中には銀貨5枚と正銅貨10枚、青銅貨10枚に、赤銅貨50枚が入っている」
そう言って俺は通貨を入れた袋を2人渡した。パーティ資金としては無駄使いはしない方針だが、まだ余裕は充分にある。
「よろしいのですか?」
『むぅ、我はご主人の傍を離れるつもりはないから、なくてもよいのだがのう』
飛鳥は恐縮しているが、クロエは渋い顔をしている。
いつも俺が傍にいられるとは限らないし、緊急事態で離れ離れになり可能性もゼロじゃないからということで納得してもらった。
ただ、俺が一緒にいるときはパーティ資金から出すので、その袋のお金は分断された非常事態の当面の生活資金であることを忘れないよう念を押した。
明日の予定を確認したところで、空腹になったので階下に下りて食堂で食事を摂ることになった。
■
『辛い! 辛いのじゃぁあああああああああ!』
クロエがこの”宿木亭”の名物料理を口にして、口から火を吹きそうな位、ヒーヒー言っている。あ、クロエはドラゴンだから普通に火を吹けるな。
その名物料理というのは好きな人の中には毎日食べている人もいるという印度発祥といわれている日本で大人気料理、そう、”カレー”だ。
スパイスの配合は宿木亭独自で、名物料理だけあって、研究が重ねられその味は絶妙。ルーの中に入っているのが牛肉だけのビーフカレーだが、長時間煮込んでだ野菜が完全に溶けている。充分寝かせて野菜の旨味も凝縮されている一品。
惜しむらくは、お供がライスやナンではなく、この世界の硬すぎるパンだけで、トッピングになりそうな料理が皆無といったところか。当然、福神漬けもない。
飛鳥は辛いものは大丈夫なのか少しずつ口にしている。そして、俺と同じくこのカレーにどこか物足りない思いを抱いているようだ。
『水、水じゃ、水をたもう!』
あっ、おい、クロエ、カレーの辛さは水では……。
『ぎゃあああ!ご主人、何とかしてたもう!!』
クロエは俺が喉を潤す目的で飲んでいた水の入ったコップを飲み干して、苛む辛さを洗い流そうとしたが、舌がクリアになって、より鮮明に辛さを感じるから、御覧の通りの逆効果だった。周囲の客と店の人はクロエのカレーの辛さにのた打ち回る様子は見慣れた光景なのか、微笑ましく見守ってくれている。
コントをやっているように見えるが、本人本気だから、このまま放置していると理不尽な怒りの矛先が俺に向く。
見ていて楽しいクロエを鑑賞するのはこれ位にしてそろそろ助け舟をだすべく、俺はドリンクメニューに視線を走らせ、目当ての物を見つけた。その2つをそれぞれ3人分注文すると、給仕の人がすぐもってきてくれた。
「ほら、クロエ、これを飲みな。飛鳥もどちらか苦手だったら俺がもらうから飲みなよ」
「はい。では私はこちらをもらいますね」
そう言って、飛鳥は乳飲料の方を選んで口にする。
俺は口を開けて舌を冷まして辛さから逃れようとしている涙目のクロエにある果実の果実水を渡した。渡した果実水は天然果汁100%だ。
『ぬうっ、今度は酸っぱいのじゃ! んん? でも、辛いのがひいていったのう??』
100%レモン果実水を飲んで、舌からカレーのスパイスの辛さが消えたクロエは可愛らしく小首を傾げた。そして、再び大騒ぎの元になったカレーをスプーンですくって、一気にまた口に運ぼうとしたので、俺は止めた。
「待て、またのた打ち回るつもりか? 少しは懲りろ」
『なにを言うかご主人、このカレー! 食べずにはいられない!!』
ズギャーンッ!という効果音が聞こえそうなキメ顔でそう言うクロエ。
周囲でクロエを見守っていた客と店の人はクロエに同意するように深く頷いていた。俺は嘆息して、クロエを止めるのをやめて自分の分を食べる。
『辛い、美味い……でもやっぱり”お米”で食べてみたいのじゃあ』
泣き笑いという器用な表情でクロエはカレースープを口に運んでそう言った。
これまでの野営などで、【異世界電子通販】で購入した向こうの世界のカレールーと米で作ったカレーライスを食べていたから、クロエもこのカレーを米で食べたいようだ。
そうは言っても、食堂の状況を見るに今は厨房も忙しい時間帯だ。当然、突然厨房貸してくれで、借りることはできないだろうから、今日は残念だけれど我慢するしかない。
それから、カレーを完食した俺達は明後日の夕食時に厨房借りる約束を取り付けるのに成功した。そうそう得られる機会ではないので、ここのカレーでカレーライス以外の料理も試してみるか。
さて、明日は錬金術ギルドから回らないといけないから早く寝るか。
俺はご満悦のクロエと飛鳥と一緒に、2人と当面寝泊りする3人部屋へと足を運んだ。案の定、俺には嫉妬の視線が部屋の扉を閉めるまで、止むことなく突き刺さった。
部屋はシンプルに寝台が部屋脇に等間隔に3つ並び、テーブルと椅子もセットになっていて、3人部屋にしてはかなり広いいい部屋だ。
俺は【鑑定】と【索敵】を使って安全性を調べ、窓に【障壁】を張って、周囲に【無音領域】を展開して防音した。更に、【空間収納】から衝立を2つ出して、俺は飛鳥とクロエに渡したが、クロエからは返されてしまった。
「優さん、お気遣いありがとうございます」
『ご主人よ、我はお主等に隠し事するつもりはないから、これは不要じゃぞ』
クロエさん、親しき仲にも礼儀ありなのですよ……俺はよく言えば大らかなクロエに内心で嘆息せざるを得なかった。
「ああ、そうだ2人はお小遣いという訳ではないが、個人で自由に使える金を渡しておこう。中には銀貨5枚と正銅貨10枚、青銅貨10枚に、赤銅貨50枚が入っている」
そう言って俺は通貨を入れた袋を2人渡した。パーティ資金としては無駄使いはしない方針だが、まだ余裕は充分にある。
「よろしいのですか?」
『むぅ、我はご主人の傍を離れるつもりはないから、なくてもよいのだがのう』
飛鳥は恐縮しているが、クロエは渋い顔をしている。
いつも俺が傍にいられるとは限らないし、緊急事態で離れ離れになり可能性もゼロじゃないからということで納得してもらった。
ただ、俺が一緒にいるときはパーティ資金から出すので、その袋のお金は分断された非常事態の当面の生活資金であることを忘れないよう念を押した。
明日の予定を確認したところで、空腹になったので階下に下りて食堂で食事を摂ることになった。
■
『辛い! 辛いのじゃぁあああああああああ!』
クロエがこの”宿木亭”の名物料理を口にして、口から火を吹きそうな位、ヒーヒー言っている。あ、クロエはドラゴンだから普通に火を吹けるな。
その名物料理というのは好きな人の中には毎日食べている人もいるという印度発祥といわれている日本で大人気料理、そう、”カレー”だ。
スパイスの配合は宿木亭独自で、名物料理だけあって、研究が重ねられその味は絶妙。ルーの中に入っているのが牛肉だけのビーフカレーだが、長時間煮込んでだ野菜が完全に溶けている。充分寝かせて野菜の旨味も凝縮されている一品。
惜しむらくは、お供がライスやナンではなく、この世界の硬すぎるパンだけで、トッピングになりそうな料理が皆無といったところか。当然、福神漬けもない。
飛鳥は辛いものは大丈夫なのか少しずつ口にしている。そして、俺と同じくこのカレーにどこか物足りない思いを抱いているようだ。
『水、水じゃ、水をたもう!』
あっ、おい、クロエ、カレーの辛さは水では……。
『ぎゃあああ!ご主人、何とかしてたもう!!』
クロエは俺が喉を潤す目的で飲んでいた水の入ったコップを飲み干して、苛む辛さを洗い流そうとしたが、舌がクリアになって、より鮮明に辛さを感じるから、御覧の通りの逆効果だった。周囲の客と店の人はクロエのカレーの辛さにのた打ち回る様子は見慣れた光景なのか、微笑ましく見守ってくれている。
コントをやっているように見えるが、本人本気だから、このまま放置していると理不尽な怒りの矛先が俺に向く。
見ていて楽しいクロエを鑑賞するのはこれ位にしてそろそろ助け舟をだすべく、俺はドリンクメニューに視線を走らせ、目当ての物を見つけた。その2つをそれぞれ3人分注文すると、給仕の人がすぐもってきてくれた。
「ほら、クロエ、これを飲みな。飛鳥もどちらか苦手だったら俺がもらうから飲みなよ」
「はい。では私はこちらをもらいますね」
そう言って、飛鳥は乳飲料の方を選んで口にする。
俺は口を開けて舌を冷まして辛さから逃れようとしている涙目のクロエにある果実の果実水を渡した。渡した果実水は天然果汁100%だ。
『ぬうっ、今度は酸っぱいのじゃ! んん? でも、辛いのがひいていったのう??』
100%レモン果実水を飲んで、舌からカレーのスパイスの辛さが消えたクロエは可愛らしく小首を傾げた。そして、再び大騒ぎの元になったカレーをスプーンですくって、一気にまた口に運ぼうとしたので、俺は止めた。
「待て、またのた打ち回るつもりか? 少しは懲りろ」
『なにを言うかご主人、このカレー! 食べずにはいられない!!』
ズギャーンッ!という効果音が聞こえそうなキメ顔でそう言うクロエ。
周囲でクロエを見守っていた客と店の人はクロエに同意するように深く頷いていた。俺は嘆息して、クロエを止めるのをやめて自分の分を食べる。
『辛い、美味い……でもやっぱり”お米”で食べてみたいのじゃあ』
泣き笑いという器用な表情でクロエはカレースープを口に運んでそう言った。
これまでの野営などで、【異世界電子通販】で購入した向こうの世界のカレールーと米で作ったカレーライスを食べていたから、クロエもこのカレーを米で食べたいようだ。
そうは言っても、食堂の状況を見るに今は厨房も忙しい時間帯だ。当然、突然厨房貸してくれで、借りることはできないだろうから、今日は残念だけれど我慢するしかない。
それから、カレーを完食した俺達は明後日の夕食時に厨房借りる約束を取り付けるのに成功した。そうそう得られる機会ではないので、ここのカレーでカレーライス以外の料理も試してみるか。
さて、明日は錬金術ギルドから回らないといけないから早く寝るか。
俺はご満悦のクロエと飛鳥と一緒に、2人と当面寝泊りする3人部屋へと足を運んだ。案の定、俺には嫉妬の視線が部屋の扉を閉めるまで、止むことなく突き刺さった。
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