とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

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第2章 自由連合同盟都市国家メルキオール 首都メルキオール編

第29話 朝の至福とメルキオールの街並みの件

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「……さん…ゆ…ん、……」

耳元に入ってくる声と優しく揺すられて俺は次第に意識が覚醒していった。

「おはようございます、優さん」

俺の左手側にネグリジェ姿の黒髪の女神様が降臨して、微笑んでおられる。寝覚めから眼福な絶景だ。言わずもがな、女神様は飛鳥である。

「おはよう、飛鳥」

ネグリジェから覗く彼女の立派な谷間が素晴らしいのは言うまでもない。穏やかな清楚な微笑みと、普段はポニーテールだが、今は下ろされている髪によって彼女が実年齢以上に大人びて見える。

飛鳥とクロエはこうやっていつからか毎朝俺を起こしくれる様になった。俺はお願いしていないのだが、特に断る必要がないので、その厚意に甘んじている。

毎朝絶景を拝める爽快な目覚めが約束されているから断る理由があろうか? いや、ない! 

ちなみに俺の寝間着はパジャマで、クロエも飛鳥と同じくネグリジェだ。

「クロエ、朝ですよ。起きてください。顔を洗いますよ」

飛鳥は俺の右腕にしがみついているクロエを起こしにかかった。流石、駄メン達の元オカン。面倒見の良さは抜群だ。

『む~おはようなのじゃ、ご主人、飛鳥』

寝ぼけ眼でクロエが可愛いらしく目を覚ました。その横でボサボサになっているクロエの銀色の長髪を飛鳥が櫛で整えている。

「おはよう」

全員起きたところで俺達は飛鳥が洗面器に【水魔術】の【水球】と【火魔術】の【灯火】で心地よい温度に調整されたぬるま湯を張ってくれて顔を洗う。飛鳥の世話焼き性は魔術の鍛錬も兼ねるという理由付けをされて、ここでも発揮されている。

オディオ王国を出て、メルキオールに到達するまでに作ったスキル【技能譲渡スキルトランスファー】と【技能複写スキルコピー】。この2つのスキルの併用によって、飛鳥は俺と同じ様に、彼女念願の【魔術】が使えるようになった。

余談だが、飛鳥が初めて魔術が使えるようになったとき、俺は嬉し涙を流す飛鳥に抱きつかれた。絵面としては役得に見えるかもしれないが、飛鳥の筋力はB。成年男性を上回る力を出せるレベルだ。

如何に世の女性が羨むレベルの抜群のプロポーションをもつ飛鳥に抱きしめられるとはいえ、その筋力で手加減なしガチでハグをされるとどうなるか?→そのときの俺の様に彼女のもつ女性特有の柔らかさと強烈なベアハッグレベルの締め技によるダメージに同時に襲われる。正しく”天国と地獄ヘルアンドヘヴン”を味わうことになった。あのとき、冗談抜きで俺は綺麗なお花畑と流れる川が見えて、逝きかけた……。

あと、クロエが使える【竜魔術ドラゴロア】は戦闘時はとても頼もしいが、生活上で使うには高威力過ぎて不向きなため、クロエにも飛鳥と同じ様に俺が使える【魔術】を使える様にした。感極まったクロエに俺は抱きつかれて……以下略。

努力家である飛鳥はあらゆる場面で適した魔術を見抜いて行使し、経験を重ねている。

その技量は飛鳥本来のチートスペックもあって、彼女を蔑んでいたメガネが既に足元にも及ばない位魔力操作が巧みになっている。

洗顔後、予め作って【空間収納】に貯蔵しているおにぎりと味噌汁、卵焼き、高菜の油炒めで俺は飛鳥達と朝食を摂る。

高菜は飛鳥が漬けたもので、彼女の祖母から直々に仕込まれた絶品だ。最初はその独特の臭いが原因で手をつけるのを控えていたクロエだが、好奇心に負けて高菜の油炒めを口に入れた瞬間、即堕ちした。

配膳は完全覚醒したクロエが担当。うちのメンバーは全員料理好きであるので。食事の調理が当番制になっているのだが、本人達の要望でクロエ>飛鳥>俺という割合になっている。他の当番のときの手伝いは任意。

電灯という夜中も作業を可能にする文明の利器がない世界のため、活動時間が非常に限られている。それに加え、俺のURスキル【想技創造スキルクリエイト】と【魔術創造マジッククリエイト】に〆切があることもあって、2人は俺が手伝わないことに文句を言うことはない。

逆に狭い調理場で手が余ることが問題だったので、俺は当番時以外は要請がない限り、基本的に他の事を優先することが2人との話合いで決まった。

朝食を終えて、フロントに鍵を預けて俺達は馬房に顔を出して、本日の最初の目的地である錬金術師ギルドへは徒歩で行ける距離であることに加え、飛鳥とクロエの要望で道をある程度覚えるため歩いて向かうことになった。



活気のあるメルキオールの街並みを歩き、俺達は中央区にあるギルド本部が密集している場所を目指す。俺が【認識阻害】を展開しているから、見目麗しい飛鳥と可愛らしいクロエが行き交う衆目に注目されることはない。

メルキオールの東区はメルキオールに移住してきた(主にオディオ王国から)移住者と下級冒険者達のパーティの住居と安宿がある。下級冒険者達が住んでいる区画はこの東区で最も西に位置している。移住者の住居と安宿は、オディオ王国からの移住者の急増によって混在し、その急増によって東区はどんどん東に拡張していっている。

安宿と言っても、昨夜俺達が泊まった宿の様にきちんと寝台がある所ではない。横になれない狭い個室に設置されているロープに寄りかかって眠り、料金時間を過ぎたらロープを店員が叩き斬って、泊り客を叩き起こす仕組みの店だ。

現代日本の感覚したら奇異な感じがするが、この世界では持ち家がなく、手持ちが少ない者達にとってはありふれたもので、休めるだけ充分な場所らしい。中世ヨーロッパにも似たような宿はあったと歴史の本で読んだことがある。


中央区の中央部には前述したようにギルド本部が密集している。ただ密集している訳ではなく、中央の東側には冒険者ギルド。北側には魔術師ギルドと薬品ギルド。南側には錬金術師ギルドと鍛冶師ギルド、技師ギルド。そして、西側には商人ギルドと従者ギルドという風に固まっている。

技師ギルドに所属しているのは主に馬具や魔導具の生産・開発スキルをもつ生産職の人達だ。登録することによる利点は開発した道具の設計図を登録することでその道具を製造、販売する際に一定の金額を得ることができる。他にも高ランクになれば新たな技術開発スタッフとして呼ばれるらしい。もっとも、俺は登録するつもりはない。

薬品ギルドというのは新興ギルドで構成員は大部分が元錬金術師ギルドの錬金術師。扱っているのは名前の通り、ポーションを中心とした薬品の製造・販売で、業務の大部分が錬金術師ギルドと被ってしまっている。

そのためか、錬金術師ギルドと衝突しがちで、最近も冒険者ギルドに納入するポーションに関して一悶着があり、ギルド長間のやりとりで薬品ギルドが高級・中級ポーションの納入を請負、錬金術師ギルドが下級ポーションの納入を請け負うことでなんとか収まったらしい。この話は食堂で聞いた話である。

「ここが錬金術師ギルドですか……」

飛鳥が言う様に俺達は錬金術師ギルドの本部に到着した。ギルドの建物は年季の入った大きな建物だが、所々老朽化している様に見える。

しかし、きちんと錬金術師ギルドの目印である2匹の蛇が絡みついた翼杖、カドゥケウスが描かれている。紛らわしいが、薬品ギルドは1匹の蛇が杖に絡みついたデザインが目印だ。

『とりあえず、中に入るしかあるまい』

クロエのその言葉に俺達は同意し、建物の中へと歩みを進めた。
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