クズ公爵を殺すに刃物はいらぬ

剣伎 竜星

文字の大きさ
10 / 11

09 商人と国王を敵に回した時点で詰んでいるよな

しおりを挟む
俺がアリシアとの挙式を邪魔されてから早くも半年が経過した。俺の手元に部下から、元凶であるメン公爵家とオッド子爵家に関する最新の報告書が届き、読み終わったので、俺は奴等の末路に関して振り返った。

まず、先代メン公爵だが、公爵領に戻って隠居していた先代夫妻は、食料はおろか生活必需品も商人から購入できず、闇商人を頼りにしていたが、その闇商人達も摘発され、逮捕されてしまい、食料を得る手立てを失ってしまう。

夫妻の周りにいた使用人達も自分達の生活が脅かされるのに気づいてすぐに辞表を提出して姿をくらましたため、生粋の貴族で自活できない夫妻は最後の頼みの綱として、ケイ・メン公爵に手紙を出したが、その返信を届けに来た商人ギルドの配達員が目にしたのは餓死寸前の限界までやせ細って襲い掛かってくる夫妻だった。

先代メン公爵夫妻は配達員への暴行で捕らえられた。先代公爵は王族が入れられる離宮送りとなり、先代公爵夫人は一度入ると死んでもでることができない貴族の女性重罪人が送られる戒律が厳しい修道院に送られた。

続いて、オッド子爵家だが、商人ギルドから上質な茶葉や流行の品が手に入らなくなったため、オッド子爵夫人は社交界で孤立し、茶会を主催しても誰も参加しなくなってしまい夫人は大いに荒れ、子爵に当たり散らしていたようだ。

次第に先代メン公爵夫妻と同じく、食料や生活必需品を入手できなくなって、困窮してくると、オッド男爵領を治めている息子に助けを求めたらしい。

しかし、その息子のレイ・オッド男爵は父母が勝手にセイロン辺境伯家との婚約を無視して、姉のアリシアとケイ・メン公爵を強引に結婚させることに反発し、公爵の結婚が強行されたため、両親に絶縁上を叩きつけていたことから、窮状を訴える使いの者に助けないこと、オッド男爵領への滞在を決して認めないことを手紙に認めて、追い返したそうだ。

オッド子爵夫妻は夫婦喧嘩を頻繁にする様になり、仲裁に入った使用人達を解雇。屋敷の管理をしていた良識ある使用人達は全員解雇され、他の使用人達も給金は払われども、購入した自身の食料を子爵夫妻に不当に取り上げられるため、次々に辞めていき、王都のオッド子爵邸は子爵夫妻の夫婦喧嘩の怒鳴りあいの声が響く廃墟となった。

出仕しなくなったオッド子爵の様子を見に来た官僚は、気がふれて狂声を上げるオッド子爵夫人と憔悴して視点が合わない表情で、壁に寄りかかりながら、ぼそぼそと何を言っているのか聞き取ることができない言葉を喋っているオッド子爵を発見して通報した。

オッド子爵邸からはオッド子爵夫婦が商会をおこして盛大に失敗して多額の借金をつくり、借金返済のため、メン公爵が絡んでいた禁止薬物の取引に関与していたことが判明。夫人は隔離施設へ移送され、オッド子爵は国王主導で決められていたセイロン辺境伯家の婚約を裏切る行為に関しても取り調べられるため、貴族の重犯罪者が収容される監獄に連行されて今なお、そこに収監されている。

そして、主犯ともいえるケイ・メン公爵だが、彼もまたオッド子爵と同じく、重犯罪者が収容される監獄に収容される罪を犯していた。しかし、腐っても王族の血を引いていたため、その身柄は監獄ではなく、王家直轄領内に建築されている重犯罪等の大罪を犯した王族や精神に異常をきたした王族がその生を終えても、二度と出ることができない離宮に護送され、何事もなく離宮に入宮したことが確認された。

基本的に離宮に入ったことまでしか公表されない。そのため、一般的に件の離宮に入った王族はそこで慎ましやかな生活を終生送ると思われる。中には離宮在住中に病死という公表の下、名誉のために毒杯を呷った王族もいたが、ケイ・メンには死も許されない罰が下された。

罪状は国王が王国の安寧のために決定していた婚約を正規の手続きも行わずに恣意的に壊し、混乱をもたらそうとした反逆罪。また、教会を蔑ろにした罪や禁止薬物の取引を行って私腹を肥やしていた他、公爵領の統治を放棄していたことなどの罪が挙げられた。

アリシアと婚姻後、ケイ・メン公爵は彼女と初夜を迎えずに別邸で愛人との爛れた生活に耽り、公爵領の政務を疎かにしたばかりか、国王の再三の召喚も無視していた。

公爵領の統治・政務に関しては領民を慮ったアリシアが公爵家内で少数派だった真面な家宰達と共に代行していたが、その中でアリシア達は先々代国王とその息子である先代メン公爵、ケイ・メン公爵が禁止薬物の作成・取引を行っていた証拠を発見してしまった。

証拠を見つけたことにより、命を狙われるおそれを避けるため、アリシア達は公爵邸からの脱出を計画。公爵が全く本邸のアリシア達に見向きもしなかったことが幸いし、アリシア達は密かに連絡を取っていた当セイロン家の諜報員の手引きで証拠を確保して脱出に成功した。

万が一、公爵達が禁止薬物に関する証拠を隠滅しようと本邸に入ろうとしたときに備えて、家宰達は本邸の扉全ての鍵を全て交換して施錠して脱出した。

ケイ・メン公爵はバスローブ姿で本邸の窓ガラスを壊し、中に侵入しようとしていたところを窓の破壊音に気付いた巡回していた騎士達によって、取り押さえられたのだが、その容姿は頭髪は全て白髪に変わっており、恐ろしく瘦せ細った彼の実年齢よりも遥かに老化した姿になっていた。

本人の自白によると、目覚めたら愛人のバーバラの姿は彼女に買い与えた宝石や貴金属とともに消え、雇っていた別邸の使用人達の1人残らずいなくなっていた。誰かいないか探し歩き、本邸に向かい、扉のマスターキーで開けられなかったから、窓を壊して本邸に入ろうとしていたらしい。

奇妙な点はケイ・メン公爵は巡回していた騎士達に捕まるまでは別邸で生活していたらしいのだが、本人が言う、その別邸があったと思しき場所には長く伸びた木々が生い茂っている林で、建物は跡形もない状態だった。また、アリシアと彼女と共に公爵の下から脱出した家宰達は公爵が愛人を囲っていることは認識していたが、誰一人として、そのバーバラ嬢の顔を見た覚えがないと証言し、別邸の存在は知っていたが所在は分からず、入ったこともないと言っている。

実年齢からかけ離れて老けた容姿になったケイ・メン公爵は往生際悪く、自身の罪を認めていなかったが、アリシアが提出した禁止薬物の栽培と売買の記録などもあり、前述の離宮行きとなった。

ケイ・メン公爵は実父である先代メン公爵と共に王国史上では国家反逆を企てた大罪人として名を残される。

また、送られた離宮の地下で稀代の暗君として王国史に名を刻んでいる先々代国王と同じ刑罰、特殊な魔術が施された棺に入れられ、執行後は誰も訪れることがない地下室に入れられた棺は入り口が最初からなかったかの様に敷材と溶接材で埋め固められた上、分厚い壁を設置される。

棺に施された魔術の効果で、中にいる者は飢えと喉の渇きに苛まれるが、死ぬことは許されない。更に、刻まれた魔術の効果と棺に使われている鉱石の性質により、棺の中の音が外に漏れることはない。永劫、罪人が棺から出ることを許されない封印刑がメン公爵親子に下された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

あなたの隣は私ではないけれど、それでも好きでいてもいいですか、レオナルド様

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢エリアーナには、三年間ずっと抱えてきた秘密がある。 婚約者であるヴァルフォード公爵・レオナルドへの、誰にも言えない恋心だ。 しかし彼の隣にいるのは、いつも幼馴染の伯爵令嬢・ソフィア。 儚げな笑顔と上目遣いで男性を虜にするあざとい彼女に、レオナルドも例外ではないようで—— 「レオ、私のこと嫌いにならないでね?」 「……そんなことにはならない」 また始まった二人の世界。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

王族の言葉は鉛より重い

Vitch
恋愛
 フォークライン公爵の娘であるミルシェ。  彼女は間違い無く公爵の血を引く娘だった。  あの日までは……。

 《完結》 どうぞ、私のことはお気になさらず

ヴァンドール
恋愛
実家の伯爵家では、満足に食事も取らせてもらえず毎日、使用人以上に働かされた。  そして縁談が来たと思ったら火遊び好きな侯爵の隠れ蓑としての婚姻だった。

処理中です...