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第16話 翡翠竜は直近の【認識改変】が悪用された悲劇を知り、自重が旅に出た
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ネリト・アーク。シヴァ帝国のアーク侯爵家の次期当主で、高名な賢者様だそうだ。今回のクローディア・カーン辺境伯夫人を狙っている容疑者であり、ミシェラとは帝国学園で同期だったらしい。
クローディアが実年齢よりも若く見えるため、全く違和感が仕事をしていないが、実際、クローディアにはネリトと同い年の長女がいる。つまり、親子程度の歳の差がある。
ネリトは学園生時代、品行方正とは真逆の大問題児で、既婚女性を相手に両手両足の数を超える浮き名を流し、好みの女性には漏れなく粉をかけていた。それを語るミシェラの眼には強い嫌悪感が滲み出ている。
アーク侯爵家は代々優秀な賢者を輩出して、帝国の魔術に関する知識を全て独占している。そのため、アーク侯爵家の傘下ではない帝国貴族の魔術師は大成できないどころか、アーク侯爵家と傘下の貴族家が積極的に彼等を潰している。
現アーク侯爵家当主のティアス・アークも、この息子にして、この親ありといったクズの極みで、勇者の家系と言われている盟友のキリク侯爵家傘下のボン伯爵夫人を略奪して、ネリトの幼い弟のルカスを産ませたらしい。
妻を奪われたボン伯爵は当然抗議するも、ティアスが聞き届けることはなく、自身の主筋であるキリク侯爵家はアーク侯爵家に味方して、ボン伯爵に「愛想を尽かされたのが悪い」と言いだす始末。
元ボン伯爵夫人も、これまで愛し合っていたボン伯爵のことを、まるで以前毛嫌いしていたティアス・アーク侯爵に対していたかの様に、拒絶の言葉を浴びせ、ボン伯爵を追い返したことが知れ渡っている。
絶望したボン伯爵は現皇帝に爵位を親戚に譲位することを直接伝えた。その後、その後を継いだ新ボン伯爵によって彼、元ボン伯爵の病死が公表され、葬儀が行われた。
奇妙なことに、その葬儀に招待されていないアーク侯爵夫人、元ボン伯爵夫人が強引に葬儀に参列しようとしたらしい。
当然の如く遺族全員はもとより、アーク侯爵夫人になるにあたって、縁を切られた自身の両親・親族達からも相手にされず、アーク侯爵夫人は葬儀から締め出された。その翌日、元ボン伯爵との思い出の場所で、彼に送った首飾りと届いたときに添えられていた手紙を抱きしめて冷たくなった彼女が発見された。
そして、ティアス・アーク侯爵はというと、別の女性達の尻を追いかけ回り、子供のルカスを産ませた元ボン伯爵夫人には完全に興味を失ったばかりか、まだ幼いルカスを夫人の実家に追放する様にアーク侯爵家から追い出したらしい。
これはアーク侯爵家の悪事の氷山の一角であり、目をつけられた下級貴族と平民の女性達は文字通り使い捨てられて、表に出ていないものでも100件を軽く超えているらしいと【アイテムボックス】経由で、アーク侯爵家とキリク侯爵家、カーン辺境伯家など俺が関わることになると思われる帝国貴族の情報をまとめて送ってくれたユグドラが教えてくれた。
奴隷という立場ではあるが、ユグドラは身柄を預けられている奴隷店の店主の奥さんとは仲がよく、彼女に頼んで、俺のためにいろいろな情報を集めてくれているらしい。
余談だが、ティアス・アーク侯爵はある日の夜に、屋敷から突然姿を消し、白目を剥いて、気絶している全裸状態で唐突に帝都の中央大通りにある噴水に【転移】してきたそうだ。
人通りがまだあった時間だったため、すぐにその醜態の醜聞は帝国の上下を問わず瞬く間に広く知れ渡り、ティアス・アークは社会的に完全に死んだそうだ。敢えて言うが、この件に俺は一切、関わってはいない。
自信を完全に喪失して人目に怯えるティアスは当初の予定を大幅に早めて、嫡男のネリトへアーク侯爵家の家督を譲る手続きを進めているとユグドラが教えてくれた。
※※※
「おはようございます♪」
昨日別れた時よりも、明らかに肌艶が増して、ツヤツヤしているクローディアが嬉しそうに、朝の挨拶をしてきた。彼女の横にいるテオドールはクローディアとは対照的に両頬が若干痩せこけてはいるものの、昨日まで纏っていた剣呑な空気は完全に霧散していた。
まぁ、ナニがあったかを具体的に言及するのは野暮だな。
クローディアが【認識改変】の完了間近の状態である説明した後、俺から見て、如何にテオドール達がネリト達に対して危険で不味い状況にあるかを詳しく、クローディアを含めたその場にいた全員に説明した。そして、ネリト達への対策を提案し、共有した。
「ジェイド様、昨日、クローディア様に渡されたのはなんですか?」
訊いてきたミシェラの横には興味が抑えきれない様子のマリアが頷いていた。
ネリト対策を共有した後、クローディアとテオドールを2人だけにする必要があったので、俺は秘蔵の『翡翠竜印の蜂蜜酒』を2人に1本ずつ渡した。
「この蜂蜜酒の効能は覚醒作用と滋養強壮、精力アップに加え、命中率アップ。人体に有害・危険な副作用は臨床試験で発生しないのは確認済みだ」
話題の蜂蜜酒の瓶を片手に取り出した俺の回答を聴いて、乙女2人は顔を赤くした。ああ、初心ですねぇ。
更に、必中と精力・体力を朝日が昇るまで、無尽蔵にするワンランク上の蜂蜜酒も【アイテムボックス】内にダース単位で保存してある。しかし、テオドールとクローディアのあの様子を見る限り、別にそれがなくとも近いうちにマリアの弟か妹ができるかもしれない。
信じられないかもしれないが、【認識改変】対策として、記憶・思い出を重ねるという意味でも2人がシたことは特に効果的な行為だ。
俺が墓守りとして引きこもる前でも、【認識改変】を悪用した奴等の対策として、認識改変間近だった被害者夫妻にこの方法を教えて成果を出した。失敗した害虫共に煮え湯を飲ませて、生きたまま地獄送りにしたのはいい思い出だ。
また、ネリトがクローディアにかけた【認識改変】の術式を診た限り、奴等の使っている【認識改変】は俺が墓守りになる前に使っていたものと全く変わっていなかった。改良の余地はもとより、欠陥部分等が全く放置状態でそのままだったため、それで賢者を名乗っているとは片腹痛い。
後日、ネリト達がまたカーン辺境伯城に戻って来るのはほぼ明らかなので、昨日の対ネリトの仕込みの傍ら、【並列思考】で俺は片手間で【認識改変】の術式を弄りまくって、無駄な魔力消費部分を削り、進捗速度を上げることに成功、発動速度も向上させた【認識改変】を作成した。今後、俺が使用するかは未知数だが、他人に教えることは絶対にしない魔術の中に【認識改変・改】が加わった。
それから、部屋に残っていた残骸から分かったことだが、【転移】を付与した使い捨ての魔導具を使って、自身のホームであるアーク侯爵家領の領都へネリトは逃走した。奴はクローディアの【認識改変】が予定通り完了したと思ったのか、テオドール達が慌てるのを楽しむべく、しばらく傍観するつもりらしい。【目印付与】にテオドール達に関する言動を自動で文章化して専用フォルダに格納する様にしていた【言動記録】で確認した。
ネリトの居場所を捕捉するのに時間がかかってしまったのは破壊した魔力膜から逆探知でネリトに付けていた【目印付与】の反応がカーン辺境伯領内から、予想を大きく離れた場所にあったのと、俺が現在の地理が分からなかったためだ。
カーン辺境伯領のテオドール達の居城からアーク侯爵領の領都までの距離は、馬車で片道1月半。
テオドールは緊急時の連絡手段である「魔力通信」で、アーク侯爵家にネリトがクローディアの治療を途中で放棄して、辺境伯領から姿を眩ませたことに対する抗議を行った。また、現皇帝へも今回のネリトとアーク侯爵家の蛮行と使用された【認識改変】の危険性を「魔力通信」で行うと共に、証拠品や書類を持たせた使者を昨日の話し合い直後に、早馬で帝都へ派遣した。
思わず口から砂糖を大量生産してしまいそうな雰囲気を周囲に拡散し続けているテオドールとクローディア、朝食を摂り終えた2人のその様子を苦笑いしつつ見守っているマリア達に俺はネリト達の動きを伝えた。
クローディアが実年齢よりも若く見えるため、全く違和感が仕事をしていないが、実際、クローディアにはネリトと同い年の長女がいる。つまり、親子程度の歳の差がある。
ネリトは学園生時代、品行方正とは真逆の大問題児で、既婚女性を相手に両手両足の数を超える浮き名を流し、好みの女性には漏れなく粉をかけていた。それを語るミシェラの眼には強い嫌悪感が滲み出ている。
アーク侯爵家は代々優秀な賢者を輩出して、帝国の魔術に関する知識を全て独占している。そのため、アーク侯爵家の傘下ではない帝国貴族の魔術師は大成できないどころか、アーク侯爵家と傘下の貴族家が積極的に彼等を潰している。
現アーク侯爵家当主のティアス・アークも、この息子にして、この親ありといったクズの極みで、勇者の家系と言われている盟友のキリク侯爵家傘下のボン伯爵夫人を略奪して、ネリトの幼い弟のルカスを産ませたらしい。
妻を奪われたボン伯爵は当然抗議するも、ティアスが聞き届けることはなく、自身の主筋であるキリク侯爵家はアーク侯爵家に味方して、ボン伯爵に「愛想を尽かされたのが悪い」と言いだす始末。
元ボン伯爵夫人も、これまで愛し合っていたボン伯爵のことを、まるで以前毛嫌いしていたティアス・アーク侯爵に対していたかの様に、拒絶の言葉を浴びせ、ボン伯爵を追い返したことが知れ渡っている。
絶望したボン伯爵は現皇帝に爵位を親戚に譲位することを直接伝えた。その後、その後を継いだ新ボン伯爵によって彼、元ボン伯爵の病死が公表され、葬儀が行われた。
奇妙なことに、その葬儀に招待されていないアーク侯爵夫人、元ボン伯爵夫人が強引に葬儀に参列しようとしたらしい。
当然の如く遺族全員はもとより、アーク侯爵夫人になるにあたって、縁を切られた自身の両親・親族達からも相手にされず、アーク侯爵夫人は葬儀から締め出された。その翌日、元ボン伯爵との思い出の場所で、彼に送った首飾りと届いたときに添えられていた手紙を抱きしめて冷たくなった彼女が発見された。
そして、ティアス・アーク侯爵はというと、別の女性達の尻を追いかけ回り、子供のルカスを産ませた元ボン伯爵夫人には完全に興味を失ったばかりか、まだ幼いルカスを夫人の実家に追放する様にアーク侯爵家から追い出したらしい。
これはアーク侯爵家の悪事の氷山の一角であり、目をつけられた下級貴族と平民の女性達は文字通り使い捨てられて、表に出ていないものでも100件を軽く超えているらしいと【アイテムボックス】経由で、アーク侯爵家とキリク侯爵家、カーン辺境伯家など俺が関わることになると思われる帝国貴族の情報をまとめて送ってくれたユグドラが教えてくれた。
奴隷という立場ではあるが、ユグドラは身柄を預けられている奴隷店の店主の奥さんとは仲がよく、彼女に頼んで、俺のためにいろいろな情報を集めてくれているらしい。
余談だが、ティアス・アーク侯爵はある日の夜に、屋敷から突然姿を消し、白目を剥いて、気絶している全裸状態で唐突に帝都の中央大通りにある噴水に【転移】してきたそうだ。
人通りがまだあった時間だったため、すぐにその醜態の醜聞は帝国の上下を問わず瞬く間に広く知れ渡り、ティアス・アークは社会的に完全に死んだそうだ。敢えて言うが、この件に俺は一切、関わってはいない。
自信を完全に喪失して人目に怯えるティアスは当初の予定を大幅に早めて、嫡男のネリトへアーク侯爵家の家督を譲る手続きを進めているとユグドラが教えてくれた。
※※※
「おはようございます♪」
昨日別れた時よりも、明らかに肌艶が増して、ツヤツヤしているクローディアが嬉しそうに、朝の挨拶をしてきた。彼女の横にいるテオドールはクローディアとは対照的に両頬が若干痩せこけてはいるものの、昨日まで纏っていた剣呑な空気は完全に霧散していた。
まぁ、ナニがあったかを具体的に言及するのは野暮だな。
クローディアが【認識改変】の完了間近の状態である説明した後、俺から見て、如何にテオドール達がネリト達に対して危険で不味い状況にあるかを詳しく、クローディアを含めたその場にいた全員に説明した。そして、ネリト達への対策を提案し、共有した。
「ジェイド様、昨日、クローディア様に渡されたのはなんですか?」
訊いてきたミシェラの横には興味が抑えきれない様子のマリアが頷いていた。
ネリト対策を共有した後、クローディアとテオドールを2人だけにする必要があったので、俺は秘蔵の『翡翠竜印の蜂蜜酒』を2人に1本ずつ渡した。
「この蜂蜜酒の効能は覚醒作用と滋養強壮、精力アップに加え、命中率アップ。人体に有害・危険な副作用は臨床試験で発生しないのは確認済みだ」
話題の蜂蜜酒の瓶を片手に取り出した俺の回答を聴いて、乙女2人は顔を赤くした。ああ、初心ですねぇ。
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信じられないかもしれないが、【認識改変】対策として、記憶・思い出を重ねるという意味でも2人がシたことは特に効果的な行為だ。
俺が墓守りとして引きこもる前でも、【認識改変】を悪用した奴等の対策として、認識改変間近だった被害者夫妻にこの方法を教えて成果を出した。失敗した害虫共に煮え湯を飲ませて、生きたまま地獄送りにしたのはいい思い出だ。
また、ネリトがクローディアにかけた【認識改変】の術式を診た限り、奴等の使っている【認識改変】は俺が墓守りになる前に使っていたものと全く変わっていなかった。改良の余地はもとより、欠陥部分等が全く放置状態でそのままだったため、それで賢者を名乗っているとは片腹痛い。
後日、ネリト達がまたカーン辺境伯城に戻って来るのはほぼ明らかなので、昨日の対ネリトの仕込みの傍ら、【並列思考】で俺は片手間で【認識改変】の術式を弄りまくって、無駄な魔力消費部分を削り、進捗速度を上げることに成功、発動速度も向上させた【認識改変】を作成した。今後、俺が使用するかは未知数だが、他人に教えることは絶対にしない魔術の中に【認識改変・改】が加わった。
それから、部屋に残っていた残骸から分かったことだが、【転移】を付与した使い捨ての魔導具を使って、自身のホームであるアーク侯爵家領の領都へネリトは逃走した。奴はクローディアの【認識改変】が予定通り完了したと思ったのか、テオドール達が慌てるのを楽しむべく、しばらく傍観するつもりらしい。【目印付与】にテオドール達に関する言動を自動で文章化して専用フォルダに格納する様にしていた【言動記録】で確認した。
ネリトの居場所を捕捉するのに時間がかかってしまったのは破壊した魔力膜から逆探知でネリトに付けていた【目印付与】の反応がカーン辺境伯領内から、予想を大きく離れた場所にあったのと、俺が現在の地理が分からなかったためだ。
カーン辺境伯領のテオドール達の居城からアーク侯爵領の領都までの距離は、馬車で片道1月半。
テオドールは緊急時の連絡手段である「魔力通信」で、アーク侯爵家にネリトがクローディアの治療を途中で放棄して、辺境伯領から姿を眩ませたことに対する抗議を行った。また、現皇帝へも今回のネリトとアーク侯爵家の蛮行と使用された【認識改変】の危険性を「魔力通信」で行うと共に、証拠品や書類を持たせた使者を昨日の話し合い直後に、早馬で帝都へ派遣した。
思わず口から砂糖を大量生産してしまいそうな雰囲気を周囲に拡散し続けているテオドールとクローディア、朝食を摂り終えた2人のその様子を苦笑いしつつ見守っているマリア達に俺はネリト達の動きを伝えた。
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