20 / 30
第20話 翡翠竜は用意した昼食を振舞い、冒険者ギルドマスターと辺境伯達の話し合いに加わる
しおりを挟む
テオドールが結界内から退場して、先に調子を崩したのはクローディアだった。大剣に焦りが目に見えて出始めたので、クローディアに対峙させていたゴーレムにかけていた無属性上級魔術【|模倣《《トレース》】を解除して、それまで積ませた経験でクローディアへ応戦させた。
「あっ!」
大剣を受け流されて、大きな隙ができたクローディアは全身のバネを使った跳躍から唐竹割りを繰り出す大剣武技【獣王斬】のカウンターを受けて、彼女はテオドールの後を追った。
「無念。ジェイド殿、再戦をお願いします」
【模倣】を付与されたゴーレムと互角の戦い、いや、驚くことに僅かだが優勢になり始めていたオーランドも2対1の数の暴力には敵わず、再戦を希望して結界から消えた。
『次は負けないぜ』
『次に勝つのは私です!』
魔導具の効果で、消える間際の嬉しそうな赤髪の親友と冒険者仲間だったときのルシアとの記憶が唐突に俺の頭を過った。
「はぁ、やれやれだな」
ガチ練仕様の結界の中に独り残った俺は大きなため息を吐いた。
※※※
対アーク侯爵家のために行った戦闘訓練を終えると、時間は準備時間も含めて、腕丁度いい昼時になった。
「わあ、スパゲッティミートソース♪」
用意された皿の上に盛られた料理を見て、マリアが喜色満面で喜びの声をあげた。
若干、幼児退行した様に見えなくもないが、この食事が終われば年相応に戻るだろう。彼女の目の前の大皿にたっぷりのパスタとそれを覆うミートソースと粗挽き胡椒、彩りのパセリが乗っている。おや?
俺は思わず瞼を手で擦った。見間違いかと思ったが、前回俺がマリアに食べさせた時よりもスパゲティの量が多くなっていた。マリアの横に並ぶ、テオドール、クローディアの皿もマリアと同じ量。いや、並ぶ順に量が多くなっているだと!?
「では、食べようか」
テオドールが料理に手をつけてその場にいる全員が食べ始める。
今回はゲストの冒険者ギルドのギルドマスターとその補佐役の女性職員も同席している。
後でミシェラとファーナから聞いたが、平民が大半の冒険者に合わせたかなり略式にした作法らしい。
当のゲストである冒険者ギルドマスターとその補佐役の様子には既視感のある、口の周りをミートソースの赤で真っ赤に染め、鬼気迫る表情で、2人共、一心不乱に食べていた。
彼等とは対称的にクローディアは器用にパスタをスプーンの上に巻き上げて、優雅に食べている。食べているのだが、まるで清流が流れる様な、全く澱みのない洗練された動作が何度も繰り返され、俺が【アイテムボックス】から出して味変に使っていたタバスコをいつの間にか試し、粉チーズも味見をした後に、適量を自身のパスタの上に追加するなどして、堪能し、どこに入るのかを疑うレベルで特大盛だったクローディアのスパゲティの大皿はいつの間にか空になっていた。
また、テオドールはというと、両目を閉じて味を噛みしめて完食。俺も含めて、その他の面々も満足して昼食は終わった。
※※※
場所を食堂から会議室に移し、まず、補佐役の眼鏡の(重要)女性職員から、冒険者ギルドのランクの説明を受け、ギルドマスターから、俺の冒険者ランクの判定を聞くことになった。
端的に冒険者ギルドのランクの説明をすると、冒険者ギルドのランクは登録初日に登録手続きが終わった時点で、Fランクになる。次に、依頼を1つクリアした時点で、Eランクに上がる。その後、規定回数以上の依頼達成とギルドの監督職員の同伴で課題依頼を複数回達成し、Dランクに昇格する。冒険者の人口が最も多いのがこのDランクで、更に規定数以上の依頼達成と貴族の指名依頼、ギルドマスター1人の推薦でCランクに今はなれるそうだ。
「クローディア様とテオドール様のお2人を相手に終始余裕のある立ち回りで、お2人に傷1つ付けずに無力化した点から、ジェイドが戦闘能力に関しては、既存最上位であるAランクを超えているのは確実だ。確実なのだが、Aランクになるには3人、その前ランクであるBランクになるには2人のギルドマスターの認可が必要だ。Cランクなら俺の裁量で出せる」
如何にもといった典型的な厳つい顔立ちのカーン辺境伯領の冒険者ギルドマスターは子供が大泣きしそうな獰猛な笑みを浮かべてそう言い放った。
「ちなみに、Cランクからシヴァ帝国では帝国貴族の男爵位相当の扱いになります。あまり使う人はいませんが、主要な街の貴族門の使用や帝国内の関所を通常よりも簡易な手続きで早く通過できます。指名依頼が入るのは子爵位相当の扱いがされるBランクからですが、そういった貴族との付き合いが苦手で、実力はもっと上なのにCランクでランクを上げるのを止める方もいます」
そう続けた補佐役の冒険者ギルドの女性職員の自身の上司である冒険者ギルドマスターを見る目はジト目になっていたが、ギルドマスターは一切気にしていない様子だ。
「より本格的な中央貴族との付き合いをするつもりはないので、Cランクの登録でお願いします」
以前の冒険者生活の時はあまり深く考えないでルベウス達とBランクになったため、欲に塗れた貴族の指名依頼が殺到したばかりか、いろいろと不愉快な思いもした。その後、Sランクまで上り詰めて無茶な要求をしてきた指名依頼人の悪事を暴露したのはいい思い出だ。今はもう、Bランク以上のランクになるのは実害しか考えられないから俺は御免だ。自由なCランクのままがいい。
「ああ、わかった。Cランクのギルドカードの発行には1日かかるから明日、ギルドに受け取りにきてくれ。細かい話はその時にまたする。それで、他にも俺等に話があるのだろう? ジェイドの冒険者ギルド登録だけだったら、辺境伯様がわざわざ俺を呼び出すことなんて普通しないからな」
笑みから一転、ギルドマスターは探る様な鋭い視線をテオドールに向けた。
「ああ、近いうちにアーク侯爵家と戦うことになると思うから、冒険者達に大森林の防備をこれまで以上に頼みたい」
「は?」
ギルドマスターはテオドールの返答が予想外だったのか、聞いて固まった。
「おいおい、本気か? いや、本気ですか……ああ、本気なんですな。わかった。わかりましたよ。大森林の方は受けもとう、受け持ちます」
激しく動揺したギルドマスターの言葉遣いが激しく乱れている。
「ここは公式の場ではないから、無理に敬語は使わなくていい。ああ、……まず間違いなく、アーク侯爵家は『魔物大氾濫』を使って我が領に侵攻してくるだろうから地元の冒険者達と連携して警戒と連携は密にしたい」
テオドールはギルドマスターに真っ直ぐな視線を向けた。
「……了解した。だが、『魔物大氾濫』を人為的に引き起こすのは冒険者界隈でも御法度。帝国法でも大罪だぞ?」
テオドールの要請に答えたものの、ギルドマスターはまだ半信半疑の様子だった。
「引き起こしたことがバレなければ問題ない……と奴等は考えている」
「……おい、本気で言っているのか?」
俺の言葉にギルドマスターは怪訝そうな疑いの眼を向けてきた。
「クローディア様に精神操作系魔術を掛けて好き勝手しようとしていた輩に良識は期待できない」
俺は前以て、テオドール達と話合って決めていた手札を口にした。
「「精神操作系魔術?」」
冒険者ギルド職員2人が異口同音の言葉をつぶやいて、揃って頭を捻った。
話し合いの結果、【認識改変】の存在はあまり広まらない方がいいという結論にカーン辺境伯家首脳陣は至り、クローディアにかけられたのは一先ず、精神操作系魔術ということで、情報操作をすることになった。もっとも、アーク侯爵家との今回の件が落ち着いたら、ここにいる冒険者ギルドの重要人物2人にもきちんと詳細を話すことは決まっている。
「ジェイド殿が言ったことは本当だ。ネリト・アークは治療と偽り、クローディアの精神を蝕んでいたのは事実だ。証拠品の呪具もある」
テオドールは重々しく、苦虫をかみ潰した様な表情でそう告げて証拠品の魔導具を机上に出した。
「残念ながら、事実です。ジェイド殿との出会いという幸運がなければ、私はネリト・アークの虜になっていたでしょう」
被害者であるクローディアも憂い顔を見せた。
「……はぁ、それで俺達冒険者ギルドに、ん? おい、まさか……」
2人の様子から、ため息を吐いたギルドマスターはしばらくして、テオドールの意図に気が付き、焦りを隠せなかった。
「当辺境伯領に滞在しているアーク侯爵領の冒険者ギルド所属の冒険者達の行動に注意しておいてもらいたい。アーク侯爵家の尖兵として依頼を受け、カーン辺境伯領の治安を乱すかもしれない。当領の冒険者であっても連中と同調するなら、当家は容赦するつもりは一切ないことも周知しておいてほしい」
テオドールは低い声と冷たい眼差しでそう告げた。
「ゴクッ、わかった。それで、話を『魔物大氾濫』に戻すが、連中はどうやって引き起こすつもりだ? 引き金になりそうな大森林の魔物達はウチもそうだが、辺境伯家の方でも間引いているのだろう?」
気圧されて息をのんだ冒険者ギルドマスターの言葉に同意する様に、彼の補佐役の女性職員はその横で頷いている。
「俺の知識の中で、今のカーン辺境伯領で実施できる『魔物大氾濫』を起こす方法は少なくとも3つある。他に俺の知らない方法があるかもしれないが、その3つの中で1番可能性が高そうな方法について、明後日以降に俺がアーク侯爵領へ直接行って確認してくる」
俺の予想が当たっていた場合、事態はこの上なく面倒なことになる。それと共にことの元凶となるアーク侯爵家にはこの世界から完全に消えてもらうのが俺の中で確定する。
「なるほど、それでCランクの冒険者ギルドカードか。わかった。どんなに急いでもギルドカードを渡せるのは最短で明日の昼頃位になるだろうから、それぐらいに取りに来てくれ。アーク侯爵領から来ている連中のこともおかしな動きがわかったら連絡する。それから、またこういった話し合いの場を定期的に作ってくれると助かる。ああ、悪いが、俺達はこの後やることが山積みだから、今日はここ等で失礼させてもらうぞ。じゃあな」
そう告げると、冒険者ギルドマスターと補佐役の女性職員は席を立って、部屋を出て行った。
「あっ!」
大剣を受け流されて、大きな隙ができたクローディアは全身のバネを使った跳躍から唐竹割りを繰り出す大剣武技【獣王斬】のカウンターを受けて、彼女はテオドールの後を追った。
「無念。ジェイド殿、再戦をお願いします」
【模倣】を付与されたゴーレムと互角の戦い、いや、驚くことに僅かだが優勢になり始めていたオーランドも2対1の数の暴力には敵わず、再戦を希望して結界から消えた。
『次は負けないぜ』
『次に勝つのは私です!』
魔導具の効果で、消える間際の嬉しそうな赤髪の親友と冒険者仲間だったときのルシアとの記憶が唐突に俺の頭を過った。
「はぁ、やれやれだな」
ガチ練仕様の結界の中に独り残った俺は大きなため息を吐いた。
※※※
対アーク侯爵家のために行った戦闘訓練を終えると、時間は準備時間も含めて、腕丁度いい昼時になった。
「わあ、スパゲッティミートソース♪」
用意された皿の上に盛られた料理を見て、マリアが喜色満面で喜びの声をあげた。
若干、幼児退行した様に見えなくもないが、この食事が終われば年相応に戻るだろう。彼女の目の前の大皿にたっぷりのパスタとそれを覆うミートソースと粗挽き胡椒、彩りのパセリが乗っている。おや?
俺は思わず瞼を手で擦った。見間違いかと思ったが、前回俺がマリアに食べさせた時よりもスパゲティの量が多くなっていた。マリアの横に並ぶ、テオドール、クローディアの皿もマリアと同じ量。いや、並ぶ順に量が多くなっているだと!?
「では、食べようか」
テオドールが料理に手をつけてその場にいる全員が食べ始める。
今回はゲストの冒険者ギルドのギルドマスターとその補佐役の女性職員も同席している。
後でミシェラとファーナから聞いたが、平民が大半の冒険者に合わせたかなり略式にした作法らしい。
当のゲストである冒険者ギルドマスターとその補佐役の様子には既視感のある、口の周りをミートソースの赤で真っ赤に染め、鬼気迫る表情で、2人共、一心不乱に食べていた。
彼等とは対称的にクローディアは器用にパスタをスプーンの上に巻き上げて、優雅に食べている。食べているのだが、まるで清流が流れる様な、全く澱みのない洗練された動作が何度も繰り返され、俺が【アイテムボックス】から出して味変に使っていたタバスコをいつの間にか試し、粉チーズも味見をした後に、適量を自身のパスタの上に追加するなどして、堪能し、どこに入るのかを疑うレベルで特大盛だったクローディアのスパゲティの大皿はいつの間にか空になっていた。
また、テオドールはというと、両目を閉じて味を噛みしめて完食。俺も含めて、その他の面々も満足して昼食は終わった。
※※※
場所を食堂から会議室に移し、まず、補佐役の眼鏡の(重要)女性職員から、冒険者ギルドのランクの説明を受け、ギルドマスターから、俺の冒険者ランクの判定を聞くことになった。
端的に冒険者ギルドのランクの説明をすると、冒険者ギルドのランクは登録初日に登録手続きが終わった時点で、Fランクになる。次に、依頼を1つクリアした時点で、Eランクに上がる。その後、規定回数以上の依頼達成とギルドの監督職員の同伴で課題依頼を複数回達成し、Dランクに昇格する。冒険者の人口が最も多いのがこのDランクで、更に規定数以上の依頼達成と貴族の指名依頼、ギルドマスター1人の推薦でCランクに今はなれるそうだ。
「クローディア様とテオドール様のお2人を相手に終始余裕のある立ち回りで、お2人に傷1つ付けずに無力化した点から、ジェイドが戦闘能力に関しては、既存最上位であるAランクを超えているのは確実だ。確実なのだが、Aランクになるには3人、その前ランクであるBランクになるには2人のギルドマスターの認可が必要だ。Cランクなら俺の裁量で出せる」
如何にもといった典型的な厳つい顔立ちのカーン辺境伯領の冒険者ギルドマスターは子供が大泣きしそうな獰猛な笑みを浮かべてそう言い放った。
「ちなみに、Cランクからシヴァ帝国では帝国貴族の男爵位相当の扱いになります。あまり使う人はいませんが、主要な街の貴族門の使用や帝国内の関所を通常よりも簡易な手続きで早く通過できます。指名依頼が入るのは子爵位相当の扱いがされるBランクからですが、そういった貴族との付き合いが苦手で、実力はもっと上なのにCランクでランクを上げるのを止める方もいます」
そう続けた補佐役の冒険者ギルドの女性職員の自身の上司である冒険者ギルドマスターを見る目はジト目になっていたが、ギルドマスターは一切気にしていない様子だ。
「より本格的な中央貴族との付き合いをするつもりはないので、Cランクの登録でお願いします」
以前の冒険者生活の時はあまり深く考えないでルベウス達とBランクになったため、欲に塗れた貴族の指名依頼が殺到したばかりか、いろいろと不愉快な思いもした。その後、Sランクまで上り詰めて無茶な要求をしてきた指名依頼人の悪事を暴露したのはいい思い出だ。今はもう、Bランク以上のランクになるのは実害しか考えられないから俺は御免だ。自由なCランクのままがいい。
「ああ、わかった。Cランクのギルドカードの発行には1日かかるから明日、ギルドに受け取りにきてくれ。細かい話はその時にまたする。それで、他にも俺等に話があるのだろう? ジェイドの冒険者ギルド登録だけだったら、辺境伯様がわざわざ俺を呼び出すことなんて普通しないからな」
笑みから一転、ギルドマスターは探る様な鋭い視線をテオドールに向けた。
「ああ、近いうちにアーク侯爵家と戦うことになると思うから、冒険者達に大森林の防備をこれまで以上に頼みたい」
「は?」
ギルドマスターはテオドールの返答が予想外だったのか、聞いて固まった。
「おいおい、本気か? いや、本気ですか……ああ、本気なんですな。わかった。わかりましたよ。大森林の方は受けもとう、受け持ちます」
激しく動揺したギルドマスターの言葉遣いが激しく乱れている。
「ここは公式の場ではないから、無理に敬語は使わなくていい。ああ、……まず間違いなく、アーク侯爵家は『魔物大氾濫』を使って我が領に侵攻してくるだろうから地元の冒険者達と連携して警戒と連携は密にしたい」
テオドールはギルドマスターに真っ直ぐな視線を向けた。
「……了解した。だが、『魔物大氾濫』を人為的に引き起こすのは冒険者界隈でも御法度。帝国法でも大罪だぞ?」
テオドールの要請に答えたものの、ギルドマスターはまだ半信半疑の様子だった。
「引き起こしたことがバレなければ問題ない……と奴等は考えている」
「……おい、本気で言っているのか?」
俺の言葉にギルドマスターは怪訝そうな疑いの眼を向けてきた。
「クローディア様に精神操作系魔術を掛けて好き勝手しようとしていた輩に良識は期待できない」
俺は前以て、テオドール達と話合って決めていた手札を口にした。
「「精神操作系魔術?」」
冒険者ギルド職員2人が異口同音の言葉をつぶやいて、揃って頭を捻った。
話し合いの結果、【認識改変】の存在はあまり広まらない方がいいという結論にカーン辺境伯家首脳陣は至り、クローディアにかけられたのは一先ず、精神操作系魔術ということで、情報操作をすることになった。もっとも、アーク侯爵家との今回の件が落ち着いたら、ここにいる冒険者ギルドの重要人物2人にもきちんと詳細を話すことは決まっている。
「ジェイド殿が言ったことは本当だ。ネリト・アークは治療と偽り、クローディアの精神を蝕んでいたのは事実だ。証拠品の呪具もある」
テオドールは重々しく、苦虫をかみ潰した様な表情でそう告げて証拠品の魔導具を机上に出した。
「残念ながら、事実です。ジェイド殿との出会いという幸運がなければ、私はネリト・アークの虜になっていたでしょう」
被害者であるクローディアも憂い顔を見せた。
「……はぁ、それで俺達冒険者ギルドに、ん? おい、まさか……」
2人の様子から、ため息を吐いたギルドマスターはしばらくして、テオドールの意図に気が付き、焦りを隠せなかった。
「当辺境伯領に滞在しているアーク侯爵領の冒険者ギルド所属の冒険者達の行動に注意しておいてもらいたい。アーク侯爵家の尖兵として依頼を受け、カーン辺境伯領の治安を乱すかもしれない。当領の冒険者であっても連中と同調するなら、当家は容赦するつもりは一切ないことも周知しておいてほしい」
テオドールは低い声と冷たい眼差しでそう告げた。
「ゴクッ、わかった。それで、話を『魔物大氾濫』に戻すが、連中はどうやって引き起こすつもりだ? 引き金になりそうな大森林の魔物達はウチもそうだが、辺境伯家の方でも間引いているのだろう?」
気圧されて息をのんだ冒険者ギルドマスターの言葉に同意する様に、彼の補佐役の女性職員はその横で頷いている。
「俺の知識の中で、今のカーン辺境伯領で実施できる『魔物大氾濫』を起こす方法は少なくとも3つある。他に俺の知らない方法があるかもしれないが、その3つの中で1番可能性が高そうな方法について、明後日以降に俺がアーク侯爵領へ直接行って確認してくる」
俺の予想が当たっていた場合、事態はこの上なく面倒なことになる。それと共にことの元凶となるアーク侯爵家にはこの世界から完全に消えてもらうのが俺の中で確定する。
「なるほど、それでCランクの冒険者ギルドカードか。わかった。どんなに急いでもギルドカードを渡せるのは最短で明日の昼頃位になるだろうから、それぐらいに取りに来てくれ。アーク侯爵領から来ている連中のこともおかしな動きがわかったら連絡する。それから、またこういった話し合いの場を定期的に作ってくれると助かる。ああ、悪いが、俺達はこの後やることが山積みだから、今日はここ等で失礼させてもらうぞ。じゃあな」
そう告げると、冒険者ギルドマスターと補佐役の女性職員は席を立って、部屋を出て行った。
155
あなたにおすすめの小説
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる