22 / 30
第22話 翡翠竜の許に……
しおりを挟む
俺がアーク侯爵領に行っている間のテオドール達にやっておいてもらうことは伝えた。テオドール達は見習い達を除いて、悲嘆の表情を見せることはなく、むしろより強くなれると生き生きとしていた。
そして、俺の目の前には1匹の黒猫の子猫のぬいぐるみ……ではなく、黒猫の子猫のぬいぐるみにデフォルメされた魔導義骸―――魔導技術を使った人工の魂の器―――が一生懸命に毛繕いをしている。
「なんでソレに入っているんだ、ユグドラ?」
俺が声をかけると黒子猫は毛繕いをピタッと止めて、こちらを向いた。
「みゃう♪」
(ジェイドが迎えに来てくれるのが、大分先になりそうだったから、来ちゃった♪)
黒子猫は可愛いらしく鳴いて、ユグドラは【念話】で返答した。
「『来ちゃった♪」じゃないんだが! 奴隷商の店にある体の方は大丈夫か?」
ユグドラが使っている猫型義骸は生命維持が困難などの緊急事態に備えて、俺が超希少素材で作った特製品。元の肉体の生命活動と魔力を大幅に節約する特殊な仮死状態にして完全保護するカプセルベッド型魔導具と完全連動を前提に動作する仕様だ。
「にゃあ、にゃあ!」
(大丈夫、問題ないわ!」
どこかで聞いたことのある台詞に近い反応を黒子猫義骸inユグドラは元気よく返してきた。
「にゃお」
(帝都に見つかると、お店に迷惑をかけそうな人達がやってきたから、いなくなるまで、この猫の体を間借りさせてもらうことにしたの)
「おい、その迷惑かけそうな奴等って……」
「……」
(貴方の察しの通り、堕天したあの元天使達を崇める自称勇者達よ。正確にはその子孫達ね)
子猫の義骸は不機嫌そうなユグドラの言動に合わせて尻尾を揺らしている。
「あいつ等、見逃してやったのに恣意的に事実を捻じ曲げて広めているみたいだな。やはり根絶やしにすべきだったか……」
「にゃ、にゃぁ!!」
(おっ、落ち着いて! 魔力が漏れているわよ!……ッ!?)
「ぶっ、何をする?」
奴等への怒りから思わず怒気が漏れた俺に唐突に黒子猫inユグドラが飛び上がって、顔に張り付いてきたので、俺はその首根っこを掴んで引き離して、睨む。
(お客さんよ)
「客?」
俺がユグドラに聞き返すと同時に借りている客室の扉が控えめにノックされた。
※※※
「お休みになられている所、すいません」
ノックの主はテオドールとクローディアの娘のマリアだった。
「いや、あとは汗を流して休むだけだから構わないが、それで、ん? なんだ?」
マリアのこれまで何度か目にした好奇心に満ちた視線が俺に首根っこを掴まれてプラーンと宙吊りになっている、心なしか憮然とした感じを醸し出している子猫に注がれていた。
「そのこは、一体……」
予想通り、マリアは両目を輝かせて、好奇心に満ちた問い掛けがきた。
「使い魔兼黒猫型魔導具のユグドラだ。自律思考ができて、スキル【念話】を介して意思疎通もできるぞ」
今はユグドラが義骸の主導権を握っているが、猫型義骸には緊急回避のため、人工生命をベースにした自立思考できる機能を搭載している。マスター登録している俺、ユグドラの順に命令優先権が設定されているのはさっき確認した。
「【念話】ですか……わたしはそのスキル、持っていません……」
花が咲いた様な明るい表情から一転、マリアの表情は落胆したものに変わった。
「……」
なんかユグドラから、無言の圧をかけられてきている。やれやれ。
「ここに【念話】のスキルオー(ガシッ)う?」
俺が【アイテムボックス】から、ストックしているスキル取得アイテムの『スキルオーブ』を取り出すと、無警戒だったとはいえ、俺の反応速度を超えて、マリアがオーブを取り出した俺の手を瞬時に両手で掴んだ。しかも、クローディア譲りの儚げそうな容姿に反して、力が結構強いぞ、マリア。
まぁ、クローディアも大剣を振り回す程パワフルな面があるから不思議ではないかもしれない。
「どうすればこの道具でスキルを習得できるのですか?」
妙な圧を放ちながら、真剣な眼力を放つ本気なマリアが普段の声よりも低い声音で、尋ねてきた。
「オーブを額に当てて、オーブに封入されているスキル名を唱えればいい」
「【念話】」
マリアは俺の返答を聞くや否や、両手で掴んだ俺の手をそのまま引き寄せた。そして、俺の手が握っているスキルオーブをそのまま自分の額に押し当て、スキル名を唱えた。
「ミャーオ」
(わーお)
マリアのあまりに即断で迅速な行動力にユグドラは目を丸くして驚いていた。
「【念話】は取得しただけでは意思疎通できるスキルではないのだが……それはこの後すぐ教えるとして、とりあえず、供の者を連れずにどういった要件だ?」
合流してから、これまでいつもマリアの傍にいたミシェラまたはファーナといったお付きと思しき2人の姿が今はない。
時間的に譲歩してもギリギリセーフな時間帯ではあるが、それでも、結婚適齢期の次期辺境伯家当主が異性の部屋に単独でき来るのは外聞が良くない。もっとも、バレればの話ではある。バレれば。
そして、俺の目の前には1匹の黒猫の子猫のぬいぐるみ……ではなく、黒猫の子猫のぬいぐるみにデフォルメされた魔導義骸―――魔導技術を使った人工の魂の器―――が一生懸命に毛繕いをしている。
「なんでソレに入っているんだ、ユグドラ?」
俺が声をかけると黒子猫は毛繕いをピタッと止めて、こちらを向いた。
「みゃう♪」
(ジェイドが迎えに来てくれるのが、大分先になりそうだったから、来ちゃった♪)
黒子猫は可愛いらしく鳴いて、ユグドラは【念話】で返答した。
「『来ちゃった♪」じゃないんだが! 奴隷商の店にある体の方は大丈夫か?」
ユグドラが使っている猫型義骸は生命維持が困難などの緊急事態に備えて、俺が超希少素材で作った特製品。元の肉体の生命活動と魔力を大幅に節約する特殊な仮死状態にして完全保護するカプセルベッド型魔導具と完全連動を前提に動作する仕様だ。
「にゃあ、にゃあ!」
(大丈夫、問題ないわ!」
どこかで聞いたことのある台詞に近い反応を黒子猫義骸inユグドラは元気よく返してきた。
「にゃお」
(帝都に見つかると、お店に迷惑をかけそうな人達がやってきたから、いなくなるまで、この猫の体を間借りさせてもらうことにしたの)
「おい、その迷惑かけそうな奴等って……」
「……」
(貴方の察しの通り、堕天したあの元天使達を崇める自称勇者達よ。正確にはその子孫達ね)
子猫の義骸は不機嫌そうなユグドラの言動に合わせて尻尾を揺らしている。
「あいつ等、見逃してやったのに恣意的に事実を捻じ曲げて広めているみたいだな。やはり根絶やしにすべきだったか……」
「にゃ、にゃぁ!!」
(おっ、落ち着いて! 魔力が漏れているわよ!……ッ!?)
「ぶっ、何をする?」
奴等への怒りから思わず怒気が漏れた俺に唐突に黒子猫inユグドラが飛び上がって、顔に張り付いてきたので、俺はその首根っこを掴んで引き離して、睨む。
(お客さんよ)
「客?」
俺がユグドラに聞き返すと同時に借りている客室の扉が控えめにノックされた。
※※※
「お休みになられている所、すいません」
ノックの主はテオドールとクローディアの娘のマリアだった。
「いや、あとは汗を流して休むだけだから構わないが、それで、ん? なんだ?」
マリアのこれまで何度か目にした好奇心に満ちた視線が俺に首根っこを掴まれてプラーンと宙吊りになっている、心なしか憮然とした感じを醸し出している子猫に注がれていた。
「そのこは、一体……」
予想通り、マリアは両目を輝かせて、好奇心に満ちた問い掛けがきた。
「使い魔兼黒猫型魔導具のユグドラだ。自律思考ができて、スキル【念話】を介して意思疎通もできるぞ」
今はユグドラが義骸の主導権を握っているが、猫型義骸には緊急回避のため、人工生命をベースにした自立思考できる機能を搭載している。マスター登録している俺、ユグドラの順に命令優先権が設定されているのはさっき確認した。
「【念話】ですか……わたしはそのスキル、持っていません……」
花が咲いた様な明るい表情から一転、マリアの表情は落胆したものに変わった。
「……」
なんかユグドラから、無言の圧をかけられてきている。やれやれ。
「ここに【念話】のスキルオー(ガシッ)う?」
俺が【アイテムボックス】から、ストックしているスキル取得アイテムの『スキルオーブ』を取り出すと、無警戒だったとはいえ、俺の反応速度を超えて、マリアがオーブを取り出した俺の手を瞬時に両手で掴んだ。しかも、クローディア譲りの儚げそうな容姿に反して、力が結構強いぞ、マリア。
まぁ、クローディアも大剣を振り回す程パワフルな面があるから不思議ではないかもしれない。
「どうすればこの道具でスキルを習得できるのですか?」
妙な圧を放ちながら、真剣な眼力を放つ本気なマリアが普段の声よりも低い声音で、尋ねてきた。
「オーブを額に当てて、オーブに封入されているスキル名を唱えればいい」
「【念話】」
マリアは俺の返答を聞くや否や、両手で掴んだ俺の手をそのまま引き寄せた。そして、俺の手が握っているスキルオーブをそのまま自分の額に押し当て、スキル名を唱えた。
「ミャーオ」
(わーお)
マリアのあまりに即断で迅速な行動力にユグドラは目を丸くして驚いていた。
「【念話】は取得しただけでは意思疎通できるスキルではないのだが……それはこの後すぐ教えるとして、とりあえず、供の者を連れずにどういった要件だ?」
合流してから、これまでいつもマリアの傍にいたミシェラまたはファーナといったお付きと思しき2人の姿が今はない。
時間的に譲歩してもギリギリセーフな時間帯ではあるが、それでも、結婚適齢期の次期辺境伯家当主が異性の部屋に単独でき来るのは外聞が良くない。もっとも、バレればの話ではある。バレれば。
121
あなたにおすすめの小説
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる