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第27話 翡翠竜達は現場の下水処理場を目指して歩く
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転移門の様な便利な移動用魔導具は材料費等諸々を総合すると、開発当時の市場価格はどうしても高くならざるをえなかった。俺がこの世界に魔導具の『転移門』を造りだしてから、既に数えるのを忘れるレベルの月日が経っているから、本音を言えば、技術革新等々で量産されて普及しているのを期待していた。
しかし、実際は、自称賢者(笑)達の所為で、今では遺失技術扱いされる希少で高価な魔導具となっているようだ。俺が設置した転移門の多数が適切な整備をされなかったため、壊れて使えなくなっている。
今回の現場である下水処理場に俺が設置した転移門も下水処理場側の門も壊れてしまっているため、使えない。そのため、俺達は冒険者ギルドの最寄りのマンホールから地下の下水道(の脇道)を使って向かうことになった。
俺が引き篭もる前、下水処理場のメンテナンスに関しても簡単、安全完備など駆け出し冒険者でも安心してできる様にしていただけに、今回は依頼でしかも、未解決になっているのは嬉しくない予想の1つが的中したことになった。
「ジェイドさん、マリア様に下水処理場関連の冒険者依頼をさせるのは……」
お目付役として、テオドール達から同行を命じられたファーナが無理と分かってはいるのか、控えめに反論してきた。
気持ちはわからないでもない。問題の起こっている下水処理場は当然、衛生面に関しても最悪な環境で、強烈な悪臭が漂い、見るに耐えない汚物等が溢れているのは容易に想像できる。避けられない仕事でない限り、自分から近づきたいとは決して思わない場所だ。なお、特殊な趣味嗜好や性癖をもつ輩の奇行は除く。
しかし、マリアは領主であるテオドールの後を継ぐことを望んでいるのだから、こういった場所も自分が治める領地にはあるということを知っておいた方が良い。いや、知っておかなければいけないだろう。
「にゃあ」
(その点なら大丈夫だと思うわよ。衛生面に関して、この人の綺麗好きはその辺の下手に小奇麗な貴族よりも徹底しているから、病気になったりすることはないわ。もっとも、最初は下水処理場がどういう場所かをその身をもって体験させるつもりでしょうけどね。貴女も気を付けた方がいいわよ)
前世の中に夫婦の仲だったこともあり、ユグドラは俺の教育方針等を熟知しているから、やりづらい。ネタバラシイクナイ。
俺はユグドラにジト目を向けるが、彼女は素知らぬ顔で、定位置となったマリアの頭の上のタレ猫状態に戻った。
ちなみに、ファーナにも『スキルオーブ』を使って、【念話】を取得させているので、ユグドラとの会話は可能だ。不測の事態が起こって、俺がマリア達の傍を離れなければいけないときに備えてのことだ。
「だ、大丈夫です。どんな場所でも、わたしは次期辺境伯になります。なら、領内にある設備についても知っておかなければなりません!」
下水処理場がどういう場所で、前知識があって、ある程度想像できているからか、マリアは若干腰が引けているものの、それはご愛嬌だろう。速くはないが、遅くもない安定したペースでもって、俺達は順調に下水道に近づいていった。
※※※
「ミ“ャアアアアア!?」
最初に劇的な反応を示したのは黒子猫(魔導義骸)のユグドラだった。タレ猫状態でくっついていたマリアの頭の上から、突然、断末魔と誤解するレベルの壮絶な悲鳴をあげて、地面へ転げ落ちていき、着地こそ鮮やかに決めたものの、すぐに、その場で転がり続けながら、小さな前脚で鼻を押さえながら悶え苦しみ出した。
魔導義骸とはいえ、いや、だからこそというべきか、五感を含めたその身体能力は標準設定のままだと、本物の猫に可能な限り近づけているから、この惨状もさもありなん。
人の一億倍と言われている犬の嗅覚にこそ及ばないが、人の数万から数十万倍と言われる猫の鋭い嗅覚が、俺達が感知するよりも早く、下水の強烈な悪臭を拾ってしまったらしい。悲しい事件だ。
「ど、どうしたらいいの!?」
「わかりません。彼女はどうして? 苦しんでいるのでしょう!?」
苦しみ続けるユグドラの惨状に、マリアとファーナの2人はユグドラに何が起こっているのか分からず、困惑し、解決手段を持ち合わせていないようだ。
「【消臭】」
仕方ないので、俺は即座に独自魔術の【消臭】をユグドラにかけて、彼女を悪臭地獄から解放してあげた。
「……」
(ジェイド、貴方、こうなるって分かっていたのに、なんで予め私に【消臭】をかけてくれなかったの?)
助けてあげたのに責められるとはなんたる理不尽。だが、
「ユグドラには俺の【消臭】は随分前だけど、既に教えている。君のことだから、折を見て、自分に【消臭】を施していると思っていたんだよ。それに自分で義骸の嗅覚の設定を変更して、嗅覚をヒトに近づけることで回避できたはずだが?」
フイッ
俺がそう応えた直後、ユグドラはすぐに視線を逸らして、定位置となっているマリアのフードを被った頭の上でタレ猫状態に戻った。
ユグドラになにが起こったのかを説明するとともに、俺達は再び歩みを進めることにした。
「ん“ん”!」
そして、予想していた問題が発生した。これはマリアの教育が絡まなければ完全に回避している事態だ。ちなみに、今の人間態の俺の嗅覚はヒト並にしてあり、自分とマリア、ファーナには【消臭】はまだかけていない。
「「っ!!!!」」
案の定、2人は全速力でこの場から後退していった。無理もない。俺もマリア達の後を追い、一旦、その場を離れた
俺が冒険者時代のこの世界のトイレ事情は汲み取り式が一般だった。前世で広く普及していたウォシュレット完備水洗式トイレの記憶が強く残っていた俺は耐え切れずにまず、独自魔術で【消臭】を作って悪臭対策をしたのだが、それだけでは不十分だった。当然だ。臭いを消せても原因がなくなった訳ではないからだ。
その次に、自宅用の水洗式トイレと下水処理施設、出先でも使える携帯版のトイレ等を俺は作った。水洗浄化装置部分は魔力含有量が少なくて、売り物にならない魔石を使えるように苦労した思い入れがあるコスパのいい自作魔導具だ。
当時は有力貴族達や大商人、王族との繋がりがあったので、彼等がお忍び等で、俺達の家に来ることも少なくなかった。当然、トイレが一般化している汲み取り式ではなく、水洗式であることに気づかれた。
そして、彼等は連盟を組んで指名依頼を出してきて、王都の地下に、俺が下水処理施設と下水道を造る羽目になった苦い思い出がある。
「にゃあ」
(思い出に浸っていないで、あの2人を助けてあげなさいよ)
ユグドラがいつの間にかマリアの頭から降りて、俺の足下までやってきて、俺の脚を軽く叩き、呆れた様子でそう言ってきた。
「そうだな。やっぱり覚悟はあっても、下水処理場の臭いの洗礼は初見は無理だったか。まぁ、このレベルの強烈な悪臭だったら、無理もないか」
彼女の声に応えて、俺は年頃の乙女が他人に絶対に見せられない醜態を晒している2人にも、【消臭】をかけて悪臭を撃退した。
続いて、【浄化】、【滅菌】のコンボで周辺一帯を浄化した。
これで周辺一帯にある悪臭の発生源である汚物も完全に浄化されたから、一先ずこの辺は大丈夫だ。俺の魔術の効果範囲の汚濁していた汚水は水底が見える澄んだ水に変わった。
しかし、実際は、自称賢者(笑)達の所為で、今では遺失技術扱いされる希少で高価な魔導具となっているようだ。俺が設置した転移門の多数が適切な整備をされなかったため、壊れて使えなくなっている。
今回の現場である下水処理場に俺が設置した転移門も下水処理場側の門も壊れてしまっているため、使えない。そのため、俺達は冒険者ギルドの最寄りのマンホールから地下の下水道(の脇道)を使って向かうことになった。
俺が引き篭もる前、下水処理場のメンテナンスに関しても簡単、安全完備など駆け出し冒険者でも安心してできる様にしていただけに、今回は依頼でしかも、未解決になっているのは嬉しくない予想の1つが的中したことになった。
「ジェイドさん、マリア様に下水処理場関連の冒険者依頼をさせるのは……」
お目付役として、テオドール達から同行を命じられたファーナが無理と分かってはいるのか、控えめに反論してきた。
気持ちはわからないでもない。問題の起こっている下水処理場は当然、衛生面に関しても最悪な環境で、強烈な悪臭が漂い、見るに耐えない汚物等が溢れているのは容易に想像できる。避けられない仕事でない限り、自分から近づきたいとは決して思わない場所だ。なお、特殊な趣味嗜好や性癖をもつ輩の奇行は除く。
しかし、マリアは領主であるテオドールの後を継ぐことを望んでいるのだから、こういった場所も自分が治める領地にはあるということを知っておいた方が良い。いや、知っておかなければいけないだろう。
「にゃあ」
(その点なら大丈夫だと思うわよ。衛生面に関して、この人の綺麗好きはその辺の下手に小奇麗な貴族よりも徹底しているから、病気になったりすることはないわ。もっとも、最初は下水処理場がどういう場所かをその身をもって体験させるつもりでしょうけどね。貴女も気を付けた方がいいわよ)
前世の中に夫婦の仲だったこともあり、ユグドラは俺の教育方針等を熟知しているから、やりづらい。ネタバラシイクナイ。
俺はユグドラにジト目を向けるが、彼女は素知らぬ顔で、定位置となったマリアの頭の上のタレ猫状態に戻った。
ちなみに、ファーナにも『スキルオーブ』を使って、【念話】を取得させているので、ユグドラとの会話は可能だ。不測の事態が起こって、俺がマリア達の傍を離れなければいけないときに備えてのことだ。
「だ、大丈夫です。どんな場所でも、わたしは次期辺境伯になります。なら、領内にある設備についても知っておかなければなりません!」
下水処理場がどういう場所で、前知識があって、ある程度想像できているからか、マリアは若干腰が引けているものの、それはご愛嬌だろう。速くはないが、遅くもない安定したペースでもって、俺達は順調に下水道に近づいていった。
※※※
「ミ“ャアアアアア!?」
最初に劇的な反応を示したのは黒子猫(魔導義骸)のユグドラだった。タレ猫状態でくっついていたマリアの頭の上から、突然、断末魔と誤解するレベルの壮絶な悲鳴をあげて、地面へ転げ落ちていき、着地こそ鮮やかに決めたものの、すぐに、その場で転がり続けながら、小さな前脚で鼻を押さえながら悶え苦しみ出した。
魔導義骸とはいえ、いや、だからこそというべきか、五感を含めたその身体能力は標準設定のままだと、本物の猫に可能な限り近づけているから、この惨状もさもありなん。
人の一億倍と言われている犬の嗅覚にこそ及ばないが、人の数万から数十万倍と言われる猫の鋭い嗅覚が、俺達が感知するよりも早く、下水の強烈な悪臭を拾ってしまったらしい。悲しい事件だ。
「ど、どうしたらいいの!?」
「わかりません。彼女はどうして? 苦しんでいるのでしょう!?」
苦しみ続けるユグドラの惨状に、マリアとファーナの2人はユグドラに何が起こっているのか分からず、困惑し、解決手段を持ち合わせていないようだ。
「【消臭】」
仕方ないので、俺は即座に独自魔術の【消臭】をユグドラにかけて、彼女を悪臭地獄から解放してあげた。
「……」
(ジェイド、貴方、こうなるって分かっていたのに、なんで予め私に【消臭】をかけてくれなかったの?)
助けてあげたのに責められるとはなんたる理不尽。だが、
「ユグドラには俺の【消臭】は随分前だけど、既に教えている。君のことだから、折を見て、自分に【消臭】を施していると思っていたんだよ。それに自分で義骸の嗅覚の設定を変更して、嗅覚をヒトに近づけることで回避できたはずだが?」
フイッ
俺がそう応えた直後、ユグドラはすぐに視線を逸らして、定位置となっているマリアのフードを被った頭の上でタレ猫状態に戻った。
ユグドラになにが起こったのかを説明するとともに、俺達は再び歩みを進めることにした。
「ん“ん”!」
そして、予想していた問題が発生した。これはマリアの教育が絡まなければ完全に回避している事態だ。ちなみに、今の人間態の俺の嗅覚はヒト並にしてあり、自分とマリア、ファーナには【消臭】はまだかけていない。
「「っ!!!!」」
案の定、2人は全速力でこの場から後退していった。無理もない。俺もマリア達の後を追い、一旦、その場を離れた
俺が冒険者時代のこの世界のトイレ事情は汲み取り式が一般だった。前世で広く普及していたウォシュレット完備水洗式トイレの記憶が強く残っていた俺は耐え切れずにまず、独自魔術で【消臭】を作って悪臭対策をしたのだが、それだけでは不十分だった。当然だ。臭いを消せても原因がなくなった訳ではないからだ。
その次に、自宅用の水洗式トイレと下水処理施設、出先でも使える携帯版のトイレ等を俺は作った。水洗浄化装置部分は魔力含有量が少なくて、売り物にならない魔石を使えるように苦労した思い入れがあるコスパのいい自作魔導具だ。
当時は有力貴族達や大商人、王族との繋がりがあったので、彼等がお忍び等で、俺達の家に来ることも少なくなかった。当然、トイレが一般化している汲み取り式ではなく、水洗式であることに気づかれた。
そして、彼等は連盟を組んで指名依頼を出してきて、王都の地下に、俺が下水処理施設と下水道を造る羽目になった苦い思い出がある。
「にゃあ」
(思い出に浸っていないで、あの2人を助けてあげなさいよ)
ユグドラがいつの間にかマリアの頭から降りて、俺の足下までやってきて、俺の脚を軽く叩き、呆れた様子でそう言ってきた。
「そうだな。やっぱり覚悟はあっても、下水処理場の臭いの洗礼は初見は無理だったか。まぁ、このレベルの強烈な悪臭だったら、無理もないか」
彼女の声に応えて、俺は年頃の乙女が他人に絶対に見せられない醜態を晒している2人にも、【消臭】をかけて悪臭を撃退した。
続いて、【浄化】、【滅菌】のコンボで周辺一帯を浄化した。
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