雨と制服とジャージ

室生沙良

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雪と制服とジャージ

3.体育教官室

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「……雪、激しいな。止む気配ねえし、交通機関止まるんじゃねえの?」

先生は、小窓の脇にある臙脂色の二人掛けチェアに腰を下ろしてスマホを見る。
私は、止まない雪を眺めるのをやめて、すぐ近くで座っている先生を見た。

「どこもダイヤ乱れてる。ラッシュ時に大変だな」

気の毒そうに言いながら先生はスマホをポケットに戻す。

「私もすぐには帰れそうにはありませんね……」
「まぁ、すぐに解除されるだろう。ここで少しゆっくりしていけばいいんじゃないのか」

先生は、湯呑みを二つ取り出して、ティーパックの緑茶を淹れてくれた。
臙脂色のチェアに二人並んで湯呑みを持つ。

「あつ……」

恥ずかしながら、熱々が苦手な私は、すぐには飲めずにテーブルに戻す。
先生は平気な顔で飲みながら、ふっと吹き出した。

「猫舌かよ」
「はい……」
「冷えたものばかり飲んで、体を冷やすなよ。女子は温めないと」
「はい……」


おばあちゃんの知恵みたい……。

先生の話にくすりと笑っていると、先生が足を組み替えて、チェアがギィと軋んだ。

「先生はいつもこんな早くに来てるんですか?」
「いや、今日は見回り当番」

そんなのあるんだ。私がいたら、先生何にもできないよね……。

湯呑みがテーブルに二つ並んで、あたたかな湯気が立っているのが目に映る。
雪は止まない。


「……チョコ食いてーんだけど、一緒に食う?」
「えっと、じゃあ、いただきます」

私があげたチョコを膝の上で開封する先生。
どうやら、甘いものは好きそうだ。
そんなことも知らなかったから、新鮮な発見をした気分だ。

「何見てる?」

知らず知らずのうちにじっと見ていたらしく、先生が訝しむように尋ねてきた。


「あの、チョコお好きでよかったなって……私、先生のこと何にも知らないから……」
「好きだよ」

即答され、チョコのことだというのに、赤面してしまった。
好きなのはチョコだってば!

「お前さ。何も知らねえのに、何で俺のこと好きなの」

直球が飛んできて、少しフリーズ。
でも先生の瞳が真っ直ぐだから、隠さずに打ち明けた。

「前から……すごくいいなあと思っていて、雨の日に風邪ひかさないようにしてくれたこととか、もっと好きになっちゃったんです」

「……ふーん。へえ」

照れているのか、引いているのか、そんな返事しかくれなくて。
私も、同じこと聞いてもいいのかな……?

「……先生は、何で私のこと……」
「全力で色仕掛けしてきた奴は初めてで、びっくりしたんだよ」
「え」
「…………びっくりして、気になって仕方なくなってる」

またチェアが軋む。今度は私が動いたせいだ。
先生の大きな体にぴたりと寄り添い、ベルトのあたりに腕を回して、ぎゅうとしがみついた。
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