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4.ベイクの心配

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「おい、待て! なぜ置いていくんだ!」

足早に教室へと戻るわたしの後ろで、レイシュア様が騒いでいます。
あの名高いバーネット家に生まれても、中身が残念というのはかわいそうなことです。

「おい、貴様!」
「…………」
「おいってば! ブス!」
「…………」
「……ル、ルク!」

面倒なことこの上ありませんが、名前を呼ばれたので立ち止まりました。
レイシュア様ははあはあと肩で息をして、顔面蒼白になっています。

「レイシュア、お顔が白い……」
「……だから……置いていくなって言っただろ……」
「レイシュア!?」

すごい汗です。
レイシュア様はここにはご静養で来たという話ですし、何かご病気で具合が悪いのかもしれません。
わたしは倒れるレイシュア様を抱き止め、お姫様抱っこをしました。
すると、草陰から黒いスーツを着た男の人が出てきました。

「お手数をお掛けし申し訳ございません、ルク様。私はレイシュア様の執事、セイルと申します。あとは私めが」
「は、はい……ありがとうございます……(?)」

高身長で細身、スナイパーのような鋭い風貌ですが、レイシュア様を軽々と抱き上げました。

「ルク様は教室へお戻りください。数々の暴言、主人に代わりお詫び致します。今後とも宜しくお願い申し上げます」
「は、はい……こちらこそ(?)」

執事のセイルさんは迷う様子もなく保健室へと向かわれました。執事っていうかたぶんSP?
大人でスマートな対応に惚れ惚れしますが、レイシュアの面倒を見るのも大変だろうなと思いながら教室に戻るのでした。


「あ、ルク、戻ってきたー! あれっ?  レイシュア様はいないの?」
「保健室だよ。途中で倒れちゃって」
「え? どういうこと?」

待っててくれたソフィ―とエリカが首を傾げます。
みんな、レイシュアのかっこよさについて話しているけど、かっこいいのは見た目だけ。
わたしは次の授業の準備をしようと自分の席に戻りました。すると、ベイクがやってきました。

「大丈夫だったか? 介抱してたんだろ? 俺もついていけばよかった。任せてごめんな」

ぶっきらぼうなベイクが気にかけてくれているのがわかって、わたしの頬が赤くなりました。

「ありがとう。優しいね……ベイク。嬉しい……」
「え? あ、いや……優しいっていうか……ただ、心配だっただけだよ。お前が……」

そう言うベイクの顔も少し赤くなっているような気がします。
バツが悪そうに目をそらしていますが、そのしぐさも愛おしくて胸が詰まりました。
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