4つの力が彩るこの世界で。

あいう

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戦闘

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 家の扉を開けると強い光が3人を照射し、3人は揃いも揃って気だるげな顔をする。初はまだ外に出て1分だと言うのにしきりに額の汗を拭い、王も服をパタパタとして風をお腹の中に入れていた。

「暑いですね……」

 暑さに耐えきれずにそう言ってしまうと、初に睨まれる。まるで、『暑いってときに暑いって言うな』とでも言いたそうな目だ。

 歩いているだけで汗が吹き出し、意識がクラクラする。夏とはこんなに暑かったのか、それとも孤児院暮らしに慣れすぎたのか……孤児院の時はクーラーの効いた部屋で先生と勉強をし、出たくない時に外に出る必要は全くなかった。
 今の生活は真逆だ。規則正しい生活と、受けた依頼はこなさなくてはならない。それがここまで辛いとは思いもしなかった。
 住宅街を抜け、工業地帯も抜け、その先には小さな森がある。

「二人とも、もうそろそろだよ」

 王の言った先には、蜃気楼で霞んで見えたひとつの小屋があった。森の中の小さな開けた場所にある小屋は思っていたよりも小さく見える。

「あんな所にいるんですか?」
「最後に得た情報が正しいならね。ひとりだし、町外れの方が無警戒の時はやり過ごしやすいんだよ」
「……なるほど」

 納得している横で初は準備運動を始めている。早く戦いたくてうずうずしているのと同時に、緊張感が自分にも伝わってくる。

「わかったならそろそろ戦闘体制入っとけよ。って言ってもお前はそこで見ているだけで充分だ。」

 そう言って小屋の方へ走る初と、それに着いていく王。さっきまで並んで歩いていたのが嘘のようで、置いていかれていく気がしてしまう。
 小屋の距離まであと数メートルという所まで走ると、不意に木のドアが開きだす。

「朝からうるせぇなガキ共……殺すぞ」

 その声はとても低く、ドスの効いた声だった。
 その声と同時に出てきたのは三十歳位の見た目の男でとても痩せ細っている。古臭い服で、さらにボロボロのせいでとても老けて見えるが、その目には信念が宿っている。
 片手には日本刀らしきものが握られ、土を削り、草を散らしながら歩いてくる。

「おいおっさん。他所様に迷惑かけてんじゃねぇよ!」

 初のショルダーバッグから抜かれた短刀は、鷹が獲物を狙うように素早く的確に相手の首元へと近づく。

「おっさんじゃねぇ、『亮一』って名前があんだよガキが!」

 亮一と名乗る男は瞬時に一歩下がり、刀を振り上げると初の短刀の刃の先の部分を空へと弾き、使い物にならなくなる。
 亮一は振り上げた刀を流れるようにして、体勢を崩した初へと振り下ろしていく。

「危ない!」

 後から来た王が初の首根っこを掴み、王の後ろへと投げ飛ばす。
 しかし、勢いのある刀を止めることは出来ない。振り下ろされた刀は王の肩に直撃し、そのまま肩を貫通して斬られると迅は思った……
 おそらく敵も思っただろう。しかし、刀の方が折れたかのようにして止まり、王から血が一滴も流れることはなかった。

「俺にはそんなナマクラ効かないよ?」
「ちっ……ガキが調子に乗んなよ」

 亮一は一瞬戸惑いながらも、刀を元の位置に戻すと即座に攻撃を再開する。

 振り上げ、上段、下段、上段……

 刀を振る度に砂埃が舞い、王と亮一の周りの地面が禿げていく。
 攻撃は素早く、亮一の刀捌きは素人目に見ても達人技で、王に反撃の隙を与えない。

 下段、薙ぎ払い、上段、突き……

 次々と出される攻撃の全てを受け流し、唯一の隙を見つけるとすかさず腹部に蹴りを入れる。
 その攻撃が亮一をよろめかせ、反撃のチャンスが生まれた。

「リーダー! こいつの能力は『一刀両断』です!」

 初は立ち上がり、王に相手の能力の詳細を伝える。それらが有益な情報かどうかは王が決めることであり、初はとりあえず伝えるのが決まりらしい。



『一刀両断』
 一。全ての物を切れる刀を錬成。
 二。刀を使用する際、全ての物を切ることが出来る。



『適材適所』
 一。相互に味方だと認めた者を操る。
 二。触れた敵の能力の把握。



「さんきゅー初! それなら余裕だ」

 王はそう言うと流れるように攻撃を繰り出していく。途切れる間もない攻撃は亮一をダウンさせ、その間に刀を奪い取る。
 丸腰になった亮一の元へ、ゆっくりと初が近づいていき常備している手錠で手首を拘束する。

「刀が無けりゃあ、なんも出来ねぇただのおっさんだろ」

 夏の暑さのせいと戦闘の終わりから、初は完全に油断していた。手錠で縛ったいたから抜け出せるわけがないと思っているのだ。背中を敵に向け、前を歩いて町へ戻ろうとする。
 その瞬間に亮一は空間に『短刀』を錬成する。亮一の手が動かせる範囲はほんの少しだけだったが、その少しが手錠を真っ二つに切断した。
 王は後ろから見張っていたが、亮一が初を攻撃する方が速い。このままでは初は、手錠のように真っ二つに断たれてしまう。

「初さんッ!!! 後ろ!!」

 大声を出し、初になんとか気づいてもらおうとする。
 迅はこの戦闘を少し遠くで離れて見ていただけだったが、この瞬間咄嗟に身体が動いた。それが何故だかこの時は分からなかった。
 瞬間的に動いたその身体は、亮一が初を刺すよりも速く動き、亮一を殴り飛ばす。その速度は草花が風に吹かれたことを意識させないほどに速く、自分の声が後から聞こえてくるほどだった。

「このガキいつの間に……!」
「ナイスだ迅!」

 王がサポートに入り、手首を一瞬で縛りあげると完全に気絶するよう急所に思い切り攻撃する。次は確実に動けないように縛り、亮一は自分の意思では腕を少しも動かせない状態にされていく。

「あっぶねー…俺、あと少しで死ぬところだったじゃん」
「迅に助けられたんだよ。ちゃんとお礼を言って」
「…ありがとな。」

 お礼を言い慣れていないのか、それとも自分に言うのが恥ずかしいのか、少し俯いて照れくさそうにお礼を言う。

「いえいえ、俺がした事と言えばこれくらいですし……」
「でも、迅がいなければ初は死んでいたかもしれない。本当にありがとう」

 王からもお礼を言われて自分も恥ずかしくなる。今までお礼が言われ慣れてないせいで、二人のことを直視出来なくなる。

「…とりあえずコイツを連れていきましょう」

 恥ずかしさを隠すために咄嗟に話題を変える。歩いてきた道を戻り、街の中心部へと向かう。
 亮一の気が失ったまま役所に連れていき身柄を引き渡すと、討伐報酬を得る。
 その瞬間、緊張が解けるのと同時に三人は椅子へ倒れるように座り込むと、冷房の涼しさを実感した。
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