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プロローグ
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「昔々、あるところにとても可愛らしいお姫様が死にました」
それは10年前の、地球とは違う世界のとある国で起きた有名な悲しいお話し。
「お姫様は星が決めたルールを破りました。
世界のルールを破りました。
死霊魔法-ネクロマンス-
ヒトは蘇らせてはいけないという禁忌の魔法を使ってしまいました。
だから、そのルールを破ったので殺されました。
ルールはお姫様も知っていました。
知っていて尚もどうしても生き返らせたいヒトがいたのです。
王国の誰よりも聡明だったお姫様でも、この呪いに打ち勝てなかったのです。
たとえ、どれだけの民衆から非難されたとしても。
たとえ、どれだけ不幸が訪れることを知っていても。
–––––––––お母さんに会いたい。
たった一つの願いを叶えるためにお姫様は禁忌を犯したのです。
だから、そんなことのためにお姫様は死んだのです。
国外追放を言い渡され、しかし、裏ではお姫様の暗殺計画を企む者に殺されました。
お姫様を刺客から守るために立ち上がったヒト達も、お姫様を逃がすために1人、また1人と不幸にも次々に死んでしまいました。
最後に訪れた唯一の希望の町ですら人々に疎まれ、裏切られ、見捨てられ、1人ぼっちになったお姫様は最後の最後に崖から転落して死んでしまいました。
ヒトは生き返らせてはならない。
不幸になるから。それは自分だけじゃなく、大切なヒト達も不幸になるからです。
だから、死霊魔法を使いヒトを蘇らせようとはしてはいけない。
それは1000年以上も前から続く世界のルールなのです。
そう、それがこの世界に破滅をもたらした愚かなる王の呪いなのだから」
とある協会のシスターは子供たちのために絵本を朗読している。
子供に読み聞かせる童話にしてはちとヘビーな内容である。
しかし、子供たちは怖がるのではなく真剣にシスターのお話を聞いていた。
これはとても大事な話だから。
絶対に、唯一にしてこのルールだけは破ってはいけないから。
だから、子供たちは皆が子供の頃にこの絵本を読み聞かされる。
「お姫さま……かわいそう」
ここの教会に預けられた女の子の1人がそう呟いた。
この女の子も両親を亡くし独り身でお姫様に共感していた。それはこの女の子だけでなく、この教会で暮らす大抵の子供達全員が思った感想である。
「そうよね。お姫様はとても可愛そうよね」
シスターは少女の頭を撫でた。
「なーシスター。お姫さまは本当に殺される必要があったのかよ」
「そうだよ。コクガイツイホウってこの国から追い出されることなんだろ? それがなんでアンサツなんてことになってんのさ!」
「ちょっと母ちゃんに会いたかっただけなのに、こんなのってないよ!」
「本当に不幸があったとしてもみんなでチカラを合わせて立ち向かえばお姫様は絶対に救われたはずだよ!」
「「「そうだそうだ!」」」
「あなた達……」
子供たちの意見はごもっともだ。
こんな悲劇があっていいはずがない。
シスターは、この絵本を通じて子供たちが成長する姿をいつも嬉しく思っていた。
この感情は大切なモノなのだ。
「そうよね。あなた達の言う通りね」
だけど……とシスターは子供達に言った。
「もし、お父さんやお母さんを生き返らしたくなっても、絶対にしては駄目。お友達が亡くなっても、お墓を建ててお花を添えて冥福を祈ること。それが死者への手向けなのよ」
「そんなことはもうわかってるよ!」
子供たちが言いたいのはそうではない。
シスターもそれはわかっている。
それでも、シスターは続けて話をする。
「じゃあ、もしも私が死んだ時も生き返らせないって絶対に誓える?」
「うっ……そ、それはっ!?」
悪戯に不謹慎にもウインクをした。
大好きなシスターが死ぬ? そんなこと子供たちは望んでいなかった。
もし、そうなったら、もしかしたら子供達の誰かが法を犯すかもしれない。
だから、子供の頃から何度もこの手の絵本で言い聞かせる。
「シスターは死なないよ! 死なない……よね??」
「もしもの話だからね」
そう言って、念を押す。
もし自分が死んだとしても生き返らせないように。
まるで、自分がもうじき死ぬような言い方をする。
そして、シスターは最後の絵本のページをめくった。
子供たちは最後のページに、その絵にゾッとした。
悪い魔女がお姫様を苦しめる絵が描かれていたから。
「そうなのです。
本当はお姫様は悪くなかったのです。
悪い魔女に騙されて唆されたのです。
だけど、みんなは悪い魔女と一緒でお姫様を許しませんでした。
悪い魔女に騙されたお姫様は永遠にこの罪を償うことができないのです。
ずっと永遠に、あの世の地獄で罰を受け続けるのでした……」
話はここでおしまい。
シスターは絵本を閉じて、しかし、続きを話す。
「でもね、もうこんな悲劇は起こらないわ。それはみんながよく知ってるわよね?」
「うん! 星覇様たちがいるもん!」
「この町にはアマイもクエストしに来るもんな!」
「Eクラスで頼りないけどやる時はやる男だぜアイツは……多分!」
「エル姉ちゃんもコハクちゃんもいるよ~!」
「ふふっ、そうね。あの子たちがいるものね」
大丈夫よ、きっと・・・と話を締め括った。
この国にはたくさんの悲劇があった。
だから、もう二度とあんな悲劇が起こらないために彼らがやってくる。
国を守る魔法騎士団でもなく冒険者でもなく、異なる世界の魔法使いが夕方のこの時間、放課後にふら~っとクエストをしにやってくる。
星覇魔法学園という日本の魔法生たちが放課後にクエストをしにやってくる。
それは10年前の、地球とは違う世界のとある国で起きた有名な悲しいお話し。
「お姫様は星が決めたルールを破りました。
世界のルールを破りました。
死霊魔法-ネクロマンス-
ヒトは蘇らせてはいけないという禁忌の魔法を使ってしまいました。
だから、そのルールを破ったので殺されました。
ルールはお姫様も知っていました。
知っていて尚もどうしても生き返らせたいヒトがいたのです。
王国の誰よりも聡明だったお姫様でも、この呪いに打ち勝てなかったのです。
たとえ、どれだけの民衆から非難されたとしても。
たとえ、どれだけ不幸が訪れることを知っていても。
–––––––––お母さんに会いたい。
たった一つの願いを叶えるためにお姫様は禁忌を犯したのです。
だから、そんなことのためにお姫様は死んだのです。
国外追放を言い渡され、しかし、裏ではお姫様の暗殺計画を企む者に殺されました。
お姫様を刺客から守るために立ち上がったヒト達も、お姫様を逃がすために1人、また1人と不幸にも次々に死んでしまいました。
最後に訪れた唯一の希望の町ですら人々に疎まれ、裏切られ、見捨てられ、1人ぼっちになったお姫様は最後の最後に崖から転落して死んでしまいました。
ヒトは生き返らせてはならない。
不幸になるから。それは自分だけじゃなく、大切なヒト達も不幸になるからです。
だから、死霊魔法を使いヒトを蘇らせようとはしてはいけない。
それは1000年以上も前から続く世界のルールなのです。
そう、それがこの世界に破滅をもたらした愚かなる王の呪いなのだから」
とある協会のシスターは子供たちのために絵本を朗読している。
子供に読み聞かせる童話にしてはちとヘビーな内容である。
しかし、子供たちは怖がるのではなく真剣にシスターのお話を聞いていた。
これはとても大事な話だから。
絶対に、唯一にしてこのルールだけは破ってはいけないから。
だから、子供たちは皆が子供の頃にこの絵本を読み聞かされる。
「お姫さま……かわいそう」
ここの教会に預けられた女の子の1人がそう呟いた。
この女の子も両親を亡くし独り身でお姫様に共感していた。それはこの女の子だけでなく、この教会で暮らす大抵の子供達全員が思った感想である。
「そうよね。お姫様はとても可愛そうよね」
シスターは少女の頭を撫でた。
「なーシスター。お姫さまは本当に殺される必要があったのかよ」
「そうだよ。コクガイツイホウってこの国から追い出されることなんだろ? それがなんでアンサツなんてことになってんのさ!」
「ちょっと母ちゃんに会いたかっただけなのに、こんなのってないよ!」
「本当に不幸があったとしてもみんなでチカラを合わせて立ち向かえばお姫様は絶対に救われたはずだよ!」
「「「そうだそうだ!」」」
「あなた達……」
子供たちの意見はごもっともだ。
こんな悲劇があっていいはずがない。
シスターは、この絵本を通じて子供たちが成長する姿をいつも嬉しく思っていた。
この感情は大切なモノなのだ。
「そうよね。あなた達の言う通りね」
だけど……とシスターは子供達に言った。
「もし、お父さんやお母さんを生き返らしたくなっても、絶対にしては駄目。お友達が亡くなっても、お墓を建ててお花を添えて冥福を祈ること。それが死者への手向けなのよ」
「そんなことはもうわかってるよ!」
子供たちが言いたいのはそうではない。
シスターもそれはわかっている。
それでも、シスターは続けて話をする。
「じゃあ、もしも私が死んだ時も生き返らせないって絶対に誓える?」
「うっ……そ、それはっ!?」
悪戯に不謹慎にもウインクをした。
大好きなシスターが死ぬ? そんなこと子供たちは望んでいなかった。
もし、そうなったら、もしかしたら子供達の誰かが法を犯すかもしれない。
だから、子供の頃から何度もこの手の絵本で言い聞かせる。
「シスターは死なないよ! 死なない……よね??」
「もしもの話だからね」
そう言って、念を押す。
もし自分が死んだとしても生き返らせないように。
まるで、自分がもうじき死ぬような言い方をする。
そして、シスターは最後の絵本のページをめくった。
子供たちは最後のページに、その絵にゾッとした。
悪い魔女がお姫様を苦しめる絵が描かれていたから。
「そうなのです。
本当はお姫様は悪くなかったのです。
悪い魔女に騙されて唆されたのです。
だけど、みんなは悪い魔女と一緒でお姫様を許しませんでした。
悪い魔女に騙されたお姫様は永遠にこの罪を償うことができないのです。
ずっと永遠に、あの世の地獄で罰を受け続けるのでした……」
話はここでおしまい。
シスターは絵本を閉じて、しかし、続きを話す。
「でもね、もうこんな悲劇は起こらないわ。それはみんながよく知ってるわよね?」
「うん! 星覇様たちがいるもん!」
「この町にはアマイもクエストしに来るもんな!」
「Eクラスで頼りないけどやる時はやる男だぜアイツは……多分!」
「エル姉ちゃんもコハクちゃんもいるよ~!」
「ふふっ、そうね。あの子たちがいるものね」
大丈夫よ、きっと・・・と話を締め括った。
この国にはたくさんの悲劇があった。
だから、もう二度とあんな悲劇が起こらないために彼らがやってくる。
国を守る魔法騎士団でもなく冒険者でもなく、異なる世界の魔法使いが夕方のこの時間、放課後にふら~っとクエストをしにやってくる。
星覇魔法学園という日本の魔法生たちが放課後にクエストをしにやってくる。
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