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第一章 招かれた者達
今日が終わり、そして明日から
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賑やか過ぎる夕食が終わり、僕はくたくたになりながら兵士の人の案内で、なんとか自室へと帰還する。
たぶん、ここはお城なんだと思うけど・・・・・・実際に自分が歩くとなると、間違いなく一人では迷子になること請け合いだ。高校入学式の際、校舎内でさえ迷子になった僕にとっては迷宮と大差ないのである。
「お帰りなさいませ、ユウスケ様」
「ただいま。はぁ、疲れた・・・・・・」
食疲れなるものがあるのかどうかは分からないが、ここに来てどっと疲労が押し寄せてきたようだった。
今なら、煎餅布団でだってぐっすりと眠れる自信がある。
「お疲れ様です。まだこの世界に来られたばかりですから、きっと気疲れもあるかと思います。湯浴みの準備も出来ますが、今日はもうお休みになられますか?」
「ゆあみ?」
「はい。お湯で体を洗うことでございます。もちろん、私がお体を流させて頂きますので、ご安心ください」
・・・・・・それは、一体何をどう安心しろと言うんだろう。
まず間違いなく、僕はこの十七年間の人生の中で、最大のパニックに襲われることだろう。下心がないと言えば嘘になるが、それを実行に移せるほどの度胸は、残念ながら用意がない。
「えっと・・・・・・体は流したいけど、僕一人でできるよ?」
「はい。ですが、それが私の役目でございますから・・・・・・。もしや、私では不足でしょうか? 殿方の湯浴みはきちんと心得ているつもりなのですが・・・・・・」
ターナは、すごく不安げな眼差しで僕を見る。
それは、まるで自分の居場所がなくなってしまうかのような、冗談めかすことのできない雰囲気だった。
けど、それは僕だって一緒だ。
女の子と手を繋いだことさえないというのに、いきなり同伴で入浴など無事であるわけがない。
それも・・・・・・こんな、とんでもなくかわいい子と、だ。
「えっと・・・・・・あのね、ターナで不足なんてことは、絶対ないよ。まだ君のこと何も知らないけど、頼っちゃうのは僕の方だし。・・・・・・だけど、その、正直に言えば恥ずかしいんだ」
項垂れて白状する僕に、ターナは真っ直ぐな視線を向けている。
その表情はとても真面目で、僕の言葉をしっかりと受け止めようとしていることは、一目瞭然だった。
「承知しました。ユウスケ様のご意思を無視しては、私も立つ瀬がございません。ですが、お隣でなくとも・・・・・・せめて湯殿(※浴室。風呂場のこと。)にご一緒させては頂けないでしょうか。お願い致します」
深々と頭をさげるターナ。これでは断ることも容易ではないだろう。
僕の意見を尊重することも仕事だが、ターナにとっては僕の身の回りの世話をすることが大前提なんだと思う。
僕の世界の価値観では考えられないけど、ここで完全に拒絶してしまっては、なんだかひどく傷つけてしまう予感があった。
「ううん、僕の方こそ無理言ってごめん。きっと勝手とかも分からないから、すぐに聞ける距離にいてくれたほうが助かるよ」
「はいっ! では、湯浴みの後にお休みになられるということでよろしかったでしょうか?」
「うん、それでお願いしようかな」
すぐに準備致しますね、とターナは嬉しそうに部屋を後にする。
その時の表情は安堵の色も濃く見て取れ、余程僕の言葉が不安だったのかと、あらためて驚いた。
「たぶん、僕の方が慣れないといけないんだろうなぁ」
郷に入っては郷に従え、という言葉がある通りだ。
僕が今いる世界では、立場も身分も大きな意味を持つ。
下手をすれば、僕の一言でターナが今の立場を追われてしまう、なんてことにも繋がる可能性だってあるかもしれない。
それでも今日明日で順応なんて難しいかもしれないけど・・・・・・。
「ユウスケ様、湯浴みの準備が整いました。どうぞ、湯殿へご案内致します」
考えている内にターナが戻ってきて、僕は案内されるままに湯殿へと向かった。
折角だから、その最中で湯殿とは何かを聞いてみたら、やっぱり入浴場のことだと言っていた。湯殿なんて言い方、生まれて初めて聞いたよ。
到着すると、そこは僕の予想とは少し違う場所だった。
「では、私は一旦控えておりますので、不明な点がありましたらすぐにお聞きください」
「あ、うん。ありがとう」
すると、ターナは木造の屏風みたいな仕切りの裏側へと消えていく。
案内された扉の奥に広がる湯殿は、自室よりも一回り小さい個室のようなところだった。
鏡台やタンスを除けば、開けた空間に大きな木製の桶が置いてあり、そこに張られた湯から湯気が立ち上っていた。
てっきり、僕は大浴場みたいなのを想像してたのだけど、まさかこういう形とは・・・・・・。
(と、とりあえず脱ごう。そうだよね、たぶんシャンプーやボディソープなんてないだろうし、本当にお湯だけで洗うんだろうな)
文字通り、湯浴みというわけである。
石けんくらいはありそうなものだけど、ここの人達は使わないのかな?
「・・・・・・んっ」
色々と聞きたいことはあるが、とりあえずお湯に浸かりたいという欲求を満たすため、僕はタオルを片手につま先で湯温を確かめる。
思ったよりも熱めだけど、ぐっとこらえて桶の中へと腰を落ち着けた。
僕が小柄ということもあってか、いざ入ってみるとその桶は深さも広さも悪くない。
「ユウスケ様、湯加減はいかがでしょうか?」
「うん、ちょうどいいよ。はぁ、暖かくて落ち着く」
仕切りの奥から、くすり、と笑みを思わせるような声がもれた。
僕は、忘れないうちに手にしていたタオルをお湯の中に入れると、自分の秘所を覆い隠す。これで、万が一のことがあっても多少は冷静でいられるだろう。
「ねぇ、ターナ。聞いてもいい?」
「はい、なんでしょうか。 あ、少しお側に行ってもよろしいですか?」
普段の声量で話すには少し距離があるからだろう。
僕はターナの申し出を快諾し、すると袖とスカートの縁をたくし上げた格好の彼女が現れた。
突然の生足。唐突な太ももの視覚的奇襲に、危うく悲鳴をあげそうになる。
「ユウスケ様、どうぞお聞きください」
落ち着け。落ち着くんだ、朝倉祐介。
この格好はあくまで、湯浴みを手伝うときの正装なのだろう。
そりゃそうだ。体を流せばお湯が跳ねるだろうし、桶から溢れるお湯で服が濡れるのも当然。それを避ける為の工夫だというのは、理解できる。
仕方がない。仕方がないんだ。そう、皆がやってることなんだから、気にすることなんてないんだ。
「・・・・・・ユウスケ様?」
少し離れた場所で膝を着いたターナが、顔に疑問符を浮かべながら僕の名前を呼んだ。
なるべく別のことに意識が向くよう、僕は視線を泳がせながら話を切り出す。
「あ、あのさ、ここの人達ってその・・・・・・石けんとかは使わないの?」
「湯浴みの際に、ということでしょうか?」
「うん、そうそう」
「ネグロフに関しては、湯浴みの際に石けんを使用することはないと思います。石けんそのものはございますが、直接肌に使うには・・・・・・。普通ですと、洗濯物や油汚れを落とす際に使用されます」
「あー、なるほど。ってことは、結構汚れを落とす効果が強いんだね」
「はい、仰る通りです。おそらく、そのまま肌に使用されますと荒れてしまうかと・・・・・・」
要はお肌に優しくないってことか。
それなら合点がいく。そう考えると、僕たちの世界って随分と便利なんだなぁ。弱酸性だからお肌に優しい!、なんてキャッチフレーズがあるくらいだもんね。
「ですが、髪を洗う際は植物油を使いますよ」
「へ・・・・・・しょくぶつあぶら?」
「はい。ピスターネという植物の種を絞った油です。香りも良くて、保湿や肌荒れにも効果があるんですよ」
植物性オイルかぁ。その発想はなかったなぁ。
さすが生活の知恵というか、文明が進んでなくても、それなりに代替品を見つける部分って凄いと思う。
「ユウスケ様もお使いになりますか?」
「え、あるの?」
「はい。さすがに王族の方が使われるような最高級品ではありませんが、きっとご満足頂けると思います」
「わぁ、まさか髪洗えるなんて思ってなかったよ」
きゃっきゃっと無邪気に喜んだのが運の尽きである。
おもむろに立ち上がるターナを、お湯に浸かって上機嫌な僕はニコニコ顔で眺めていた。
それに、別の小さな桶と緑の液体が入ったガラス瓶を手にして、こちらもまたニコニコ顔で僕の後ろに回るターナ。
「ユウスケ様、少しの間目を閉じていてくださいますか?」
自分の仕事ができて嬉しいのか、ターナは耳元で優しくそう囁く。
その瞬間、僕は悟ったのだった。
(し、しまったぁぁぁぁああ!)
あれだけ接近を禁じていたというのに、自ら招き入れてしまうとは何たる不覚っ!
だがしかし、時既に遅し、である。
失礼致します、という声とともにじんわりとお湯が頭皮を伝っていく。
ぱしゃぱしゃ、という水音が響き、ターナの細い指が僕の髪を撫でるようにほぐしていく。
「ユウスケ様、綺麗な髪をされておりますね」
「え・・・・・・そ、そうかな? はは、手入れなんて何にもしてないけど」
「そうなのですか? みずみずしくて、艶もしっかりしておりますよ。・・・・・・ふふ、ちょっと羨ましいくらいです」
今まさに、この湯殿は僕にとって紛う事なき異世界であった。
辛うじてタオル一枚が僕を守る術であり、救いの手を差し伸べてくれる誰かはいない。
僕とターナの二人だけであり、自然と僕の口数が少なくなるせいか、先ほどとはうって変わり、ターナが僕の髪を洗う音だけが絶え間なく響く。
念入りに髪をほぐした後は、たぶんあのガラス瓶に入っていた液体だろう・・・・・・それを、ゆっくりと頭皮に馴染ませていく。
「ユウスケ様、かゆいところはございませんか?」
「だ、だいじょうぶ、ですっ」
余裕がなくなり、僕はついつい敬語が出てきてしまう。
目を閉じているせいか、聴覚と嗅覚がフル回転しており、ターナの息づかいや良い香りが、まるで目の前にあるような錯覚を覚えた。
「タ、ターナ」
「はい、なんでしょうか?」
「あのさ、ターナって若いよね。メイドさん達って大抵若い人な気がするけど・・・・・・何歳なの?」
まぁ、たぶん僕だって十分若いだろうから、なんだか言い回しに違和感があるけど、それを気にするだけの余裕はなかった。
「今年で十六になります」
「そうなんだ。いっこ違いだね。僕はターナより一つ上だよ」
沈黙よりはマシと思い、無理矢理話題を作ったけど・・・・・・まさか、十六歳だなんて。
僕らは元の世界じゃ学生だったけど、この世界ではもう働いているんだ。
「では、ユウスケ様は十七歳でいらっしゃるのですね。通りで肌つやもよろしいですし、お若いはずです」
「ははは、そんなことないよ。それより、十六なのにもう立派に働いてるなんて偉いよ。僕も見習わないと」
「そ、そんなっ。ユウスケ様、それは私には分不相応なお言葉です」
一転、落ち着いた口調からあたふたし始めるターナ。
「え、そ、そうかなぁ。・・・・・・ねぇ、僕ってそんなに偉い立場なの? 正直、全然実感がないんだけど・・・・・・」
「はい。私とは比較すること自体あってはなりません。ユウスケ様を含め、異人の皆様はこの世界の希望なのです」
希望、かぁ。それこそ、僕にはまったく想像もつかない言葉だ。
だって、この世界に来て僕らが変わったことなんてないんじゃないだろうか。
ただの高校生でしかない僕が救えるほど、きっと簡単な問題じゃないだろうし。
「そっかぁ。・・・・・・でも、僕はターナの方が偉いと思うけどな」
「・・・・・・」
「だってさ、ターナは僕に色々してくれてるけど、僕は何にもできてないよ」
「いえ、そんなことはございません。ユウスケ様は、ご謙遜が過ぎます」
後半、ターナは語気が強まった。それは、ともすれば怒っている風にも聞こえる。
「ユウスケ様は・・・・・・知らないのです」
「え?」
「もし、ユウスケ様がいらっしゃらなかったら・・・・・・私はここにいなかったかもしれません」
「ど、どうして?」
「お仕えする人が、いないからです」
予想外の答えに、僕は言葉を詰らせる。
えっと・・・・・・メイドさんって、このお城で働いてる人じゃないのかな。
「ここで働いてるんじゃないの? お城、だよね?」
「はい。ここは、ネグロフ王国の王城です。ですが、私のような一介の町娘が簡単に足を踏み入れられる場所ではありません」
「・・・・・・え、ちょ、ちょっと待って。僕、何か勘違いしてる・・・・・・よね?」
「勘違い、かは分かりませんが、私は王城付きの女中ではありません。そういった方は、貴族でなくとも王城で奉公できることを許されるだけの、教養を身につけている者だけですので」
「ターナは十分、教養がある風に見えるけど・・・・・・言葉遣いだって、しっかりとしてるよ。それに、王様だって働くことを許された者をって言ってたよ?」
「それは・・・・・・」
珍しく、ターナが言葉を詰らせた。
まるで、何かを言いかけたけど、それを呑み込んだように。
喋っている間も動き続けていた指が、ぴたりと止まる。
・・・・・・嫌な静寂だ。ぴちょん、と雫の音が湯殿に小さく響く。
ターナの表情を窺い知れないのが、余計に不安をかき立てる。
もしかして、僕はあんまり立ち入らない方がいい部分に、土足で踏み込んでしまったのではないだろうか。
「あの・・・・・・ターナ、ごめんなさい。困らせるつもりはなかったんだけど・・・・・・」
髪を洗ってもらっている途中ということもあり、なんとも間抜けな体勢であるのが悔やまれる。
「・・・・・・ユウスケ様」
「は、はいっ」
名前を呼ばれ、つい緊張が走る。
「私は果報者です。・・・・・・貴方様のような人にお仕えできて、ほんとうに・・・・・・・・・・・・」
僕が言葉を返すより早く、「お流ししますね」とターナが自分の仕事を再開してしまう。
けれど、そこには先ほどのような緊張感や困った様子はなく、とりあえず胸をなで下ろす。
何をしたわけでもないのに、ここまで慕われるというのはあまり居心地の良いものじゃないけれど、僕はこれ以上この話題を掘り下げることをやめることにした。
ターナ本人が納得してるなら、僕が必要以上に胸の内を聞き出すことはないだろう。
頭を流し終わった後、僕がそろそろあがることを告げると、バスタオルらしきものを取ってきてくれた。
案の定、「お拭き致します」と言われたが、そこは譲れないところである。
僕は自分でできると伝え、その日の湯浴みをなんとかクリアするのであった。
たぶん、ここはお城なんだと思うけど・・・・・・実際に自分が歩くとなると、間違いなく一人では迷子になること請け合いだ。高校入学式の際、校舎内でさえ迷子になった僕にとっては迷宮と大差ないのである。
「お帰りなさいませ、ユウスケ様」
「ただいま。はぁ、疲れた・・・・・・」
食疲れなるものがあるのかどうかは分からないが、ここに来てどっと疲労が押し寄せてきたようだった。
今なら、煎餅布団でだってぐっすりと眠れる自信がある。
「お疲れ様です。まだこの世界に来られたばかりですから、きっと気疲れもあるかと思います。湯浴みの準備も出来ますが、今日はもうお休みになられますか?」
「ゆあみ?」
「はい。お湯で体を洗うことでございます。もちろん、私がお体を流させて頂きますので、ご安心ください」
・・・・・・それは、一体何をどう安心しろと言うんだろう。
まず間違いなく、僕はこの十七年間の人生の中で、最大のパニックに襲われることだろう。下心がないと言えば嘘になるが、それを実行に移せるほどの度胸は、残念ながら用意がない。
「えっと・・・・・・体は流したいけど、僕一人でできるよ?」
「はい。ですが、それが私の役目でございますから・・・・・・。もしや、私では不足でしょうか? 殿方の湯浴みはきちんと心得ているつもりなのですが・・・・・・」
ターナは、すごく不安げな眼差しで僕を見る。
それは、まるで自分の居場所がなくなってしまうかのような、冗談めかすことのできない雰囲気だった。
けど、それは僕だって一緒だ。
女の子と手を繋いだことさえないというのに、いきなり同伴で入浴など無事であるわけがない。
それも・・・・・・こんな、とんでもなくかわいい子と、だ。
「えっと・・・・・・あのね、ターナで不足なんてことは、絶対ないよ。まだ君のこと何も知らないけど、頼っちゃうのは僕の方だし。・・・・・・だけど、その、正直に言えば恥ずかしいんだ」
項垂れて白状する僕に、ターナは真っ直ぐな視線を向けている。
その表情はとても真面目で、僕の言葉をしっかりと受け止めようとしていることは、一目瞭然だった。
「承知しました。ユウスケ様のご意思を無視しては、私も立つ瀬がございません。ですが、お隣でなくとも・・・・・・せめて湯殿(※浴室。風呂場のこと。)にご一緒させては頂けないでしょうか。お願い致します」
深々と頭をさげるターナ。これでは断ることも容易ではないだろう。
僕の意見を尊重することも仕事だが、ターナにとっては僕の身の回りの世話をすることが大前提なんだと思う。
僕の世界の価値観では考えられないけど、ここで完全に拒絶してしまっては、なんだかひどく傷つけてしまう予感があった。
「ううん、僕の方こそ無理言ってごめん。きっと勝手とかも分からないから、すぐに聞ける距離にいてくれたほうが助かるよ」
「はいっ! では、湯浴みの後にお休みになられるということでよろしかったでしょうか?」
「うん、それでお願いしようかな」
すぐに準備致しますね、とターナは嬉しそうに部屋を後にする。
その時の表情は安堵の色も濃く見て取れ、余程僕の言葉が不安だったのかと、あらためて驚いた。
「たぶん、僕の方が慣れないといけないんだろうなぁ」
郷に入っては郷に従え、という言葉がある通りだ。
僕が今いる世界では、立場も身分も大きな意味を持つ。
下手をすれば、僕の一言でターナが今の立場を追われてしまう、なんてことにも繋がる可能性だってあるかもしれない。
それでも今日明日で順応なんて難しいかもしれないけど・・・・・・。
「ユウスケ様、湯浴みの準備が整いました。どうぞ、湯殿へご案内致します」
考えている内にターナが戻ってきて、僕は案内されるままに湯殿へと向かった。
折角だから、その最中で湯殿とは何かを聞いてみたら、やっぱり入浴場のことだと言っていた。湯殿なんて言い方、生まれて初めて聞いたよ。
到着すると、そこは僕の予想とは少し違う場所だった。
「では、私は一旦控えておりますので、不明な点がありましたらすぐにお聞きください」
「あ、うん。ありがとう」
すると、ターナは木造の屏風みたいな仕切りの裏側へと消えていく。
案内された扉の奥に広がる湯殿は、自室よりも一回り小さい個室のようなところだった。
鏡台やタンスを除けば、開けた空間に大きな木製の桶が置いてあり、そこに張られた湯から湯気が立ち上っていた。
てっきり、僕は大浴場みたいなのを想像してたのだけど、まさかこういう形とは・・・・・・。
(と、とりあえず脱ごう。そうだよね、たぶんシャンプーやボディソープなんてないだろうし、本当にお湯だけで洗うんだろうな)
文字通り、湯浴みというわけである。
石けんくらいはありそうなものだけど、ここの人達は使わないのかな?
「・・・・・・んっ」
色々と聞きたいことはあるが、とりあえずお湯に浸かりたいという欲求を満たすため、僕はタオルを片手につま先で湯温を確かめる。
思ったよりも熱めだけど、ぐっとこらえて桶の中へと腰を落ち着けた。
僕が小柄ということもあってか、いざ入ってみるとその桶は深さも広さも悪くない。
「ユウスケ様、湯加減はいかがでしょうか?」
「うん、ちょうどいいよ。はぁ、暖かくて落ち着く」
仕切りの奥から、くすり、と笑みを思わせるような声がもれた。
僕は、忘れないうちに手にしていたタオルをお湯の中に入れると、自分の秘所を覆い隠す。これで、万が一のことがあっても多少は冷静でいられるだろう。
「ねぇ、ターナ。聞いてもいい?」
「はい、なんでしょうか。 あ、少しお側に行ってもよろしいですか?」
普段の声量で話すには少し距離があるからだろう。
僕はターナの申し出を快諾し、すると袖とスカートの縁をたくし上げた格好の彼女が現れた。
突然の生足。唐突な太ももの視覚的奇襲に、危うく悲鳴をあげそうになる。
「ユウスケ様、どうぞお聞きください」
落ち着け。落ち着くんだ、朝倉祐介。
この格好はあくまで、湯浴みを手伝うときの正装なのだろう。
そりゃそうだ。体を流せばお湯が跳ねるだろうし、桶から溢れるお湯で服が濡れるのも当然。それを避ける為の工夫だというのは、理解できる。
仕方がない。仕方がないんだ。そう、皆がやってることなんだから、気にすることなんてないんだ。
「・・・・・・ユウスケ様?」
少し離れた場所で膝を着いたターナが、顔に疑問符を浮かべながら僕の名前を呼んだ。
なるべく別のことに意識が向くよう、僕は視線を泳がせながら話を切り出す。
「あ、あのさ、ここの人達ってその・・・・・・石けんとかは使わないの?」
「湯浴みの際に、ということでしょうか?」
「うん、そうそう」
「ネグロフに関しては、湯浴みの際に石けんを使用することはないと思います。石けんそのものはございますが、直接肌に使うには・・・・・・。普通ですと、洗濯物や油汚れを落とす際に使用されます」
「あー、なるほど。ってことは、結構汚れを落とす効果が強いんだね」
「はい、仰る通りです。おそらく、そのまま肌に使用されますと荒れてしまうかと・・・・・・」
要はお肌に優しくないってことか。
それなら合点がいく。そう考えると、僕たちの世界って随分と便利なんだなぁ。弱酸性だからお肌に優しい!、なんてキャッチフレーズがあるくらいだもんね。
「ですが、髪を洗う際は植物油を使いますよ」
「へ・・・・・・しょくぶつあぶら?」
「はい。ピスターネという植物の種を絞った油です。香りも良くて、保湿や肌荒れにも効果があるんですよ」
植物性オイルかぁ。その発想はなかったなぁ。
さすが生活の知恵というか、文明が進んでなくても、それなりに代替品を見つける部分って凄いと思う。
「ユウスケ様もお使いになりますか?」
「え、あるの?」
「はい。さすがに王族の方が使われるような最高級品ではありませんが、きっとご満足頂けると思います」
「わぁ、まさか髪洗えるなんて思ってなかったよ」
きゃっきゃっと無邪気に喜んだのが運の尽きである。
おもむろに立ち上がるターナを、お湯に浸かって上機嫌な僕はニコニコ顔で眺めていた。
それに、別の小さな桶と緑の液体が入ったガラス瓶を手にして、こちらもまたニコニコ顔で僕の後ろに回るターナ。
「ユウスケ様、少しの間目を閉じていてくださいますか?」
自分の仕事ができて嬉しいのか、ターナは耳元で優しくそう囁く。
その瞬間、僕は悟ったのだった。
(し、しまったぁぁぁぁああ!)
あれだけ接近を禁じていたというのに、自ら招き入れてしまうとは何たる不覚っ!
だがしかし、時既に遅し、である。
失礼致します、という声とともにじんわりとお湯が頭皮を伝っていく。
ぱしゃぱしゃ、という水音が響き、ターナの細い指が僕の髪を撫でるようにほぐしていく。
「ユウスケ様、綺麗な髪をされておりますね」
「え・・・・・・そ、そうかな? はは、手入れなんて何にもしてないけど」
「そうなのですか? みずみずしくて、艶もしっかりしておりますよ。・・・・・・ふふ、ちょっと羨ましいくらいです」
今まさに、この湯殿は僕にとって紛う事なき異世界であった。
辛うじてタオル一枚が僕を守る術であり、救いの手を差し伸べてくれる誰かはいない。
僕とターナの二人だけであり、自然と僕の口数が少なくなるせいか、先ほどとはうって変わり、ターナが僕の髪を洗う音だけが絶え間なく響く。
念入りに髪をほぐした後は、たぶんあのガラス瓶に入っていた液体だろう・・・・・・それを、ゆっくりと頭皮に馴染ませていく。
「ユウスケ様、かゆいところはございませんか?」
「だ、だいじょうぶ、ですっ」
余裕がなくなり、僕はついつい敬語が出てきてしまう。
目を閉じているせいか、聴覚と嗅覚がフル回転しており、ターナの息づかいや良い香りが、まるで目の前にあるような錯覚を覚えた。
「タ、ターナ」
「はい、なんでしょうか?」
「あのさ、ターナって若いよね。メイドさん達って大抵若い人な気がするけど・・・・・・何歳なの?」
まぁ、たぶん僕だって十分若いだろうから、なんだか言い回しに違和感があるけど、それを気にするだけの余裕はなかった。
「今年で十六になります」
「そうなんだ。いっこ違いだね。僕はターナより一つ上だよ」
沈黙よりはマシと思い、無理矢理話題を作ったけど・・・・・・まさか、十六歳だなんて。
僕らは元の世界じゃ学生だったけど、この世界ではもう働いているんだ。
「では、ユウスケ様は十七歳でいらっしゃるのですね。通りで肌つやもよろしいですし、お若いはずです」
「ははは、そんなことないよ。それより、十六なのにもう立派に働いてるなんて偉いよ。僕も見習わないと」
「そ、そんなっ。ユウスケ様、それは私には分不相応なお言葉です」
一転、落ち着いた口調からあたふたし始めるターナ。
「え、そ、そうかなぁ。・・・・・・ねぇ、僕ってそんなに偉い立場なの? 正直、全然実感がないんだけど・・・・・・」
「はい。私とは比較すること自体あってはなりません。ユウスケ様を含め、異人の皆様はこの世界の希望なのです」
希望、かぁ。それこそ、僕にはまったく想像もつかない言葉だ。
だって、この世界に来て僕らが変わったことなんてないんじゃないだろうか。
ただの高校生でしかない僕が救えるほど、きっと簡単な問題じゃないだろうし。
「そっかぁ。・・・・・・でも、僕はターナの方が偉いと思うけどな」
「・・・・・・」
「だってさ、ターナは僕に色々してくれてるけど、僕は何にもできてないよ」
「いえ、そんなことはございません。ユウスケ様は、ご謙遜が過ぎます」
後半、ターナは語気が強まった。それは、ともすれば怒っている風にも聞こえる。
「ユウスケ様は・・・・・・知らないのです」
「え?」
「もし、ユウスケ様がいらっしゃらなかったら・・・・・・私はここにいなかったかもしれません」
「ど、どうして?」
「お仕えする人が、いないからです」
予想外の答えに、僕は言葉を詰らせる。
えっと・・・・・・メイドさんって、このお城で働いてる人じゃないのかな。
「ここで働いてるんじゃないの? お城、だよね?」
「はい。ここは、ネグロフ王国の王城です。ですが、私のような一介の町娘が簡単に足を踏み入れられる場所ではありません」
「・・・・・・え、ちょ、ちょっと待って。僕、何か勘違いしてる・・・・・・よね?」
「勘違い、かは分かりませんが、私は王城付きの女中ではありません。そういった方は、貴族でなくとも王城で奉公できることを許されるだけの、教養を身につけている者だけですので」
「ターナは十分、教養がある風に見えるけど・・・・・・言葉遣いだって、しっかりとしてるよ。それに、王様だって働くことを許された者をって言ってたよ?」
「それは・・・・・・」
珍しく、ターナが言葉を詰らせた。
まるで、何かを言いかけたけど、それを呑み込んだように。
喋っている間も動き続けていた指が、ぴたりと止まる。
・・・・・・嫌な静寂だ。ぴちょん、と雫の音が湯殿に小さく響く。
ターナの表情を窺い知れないのが、余計に不安をかき立てる。
もしかして、僕はあんまり立ち入らない方がいい部分に、土足で踏み込んでしまったのではないだろうか。
「あの・・・・・・ターナ、ごめんなさい。困らせるつもりはなかったんだけど・・・・・・」
髪を洗ってもらっている途中ということもあり、なんとも間抜けな体勢であるのが悔やまれる。
「・・・・・・ユウスケ様」
「は、はいっ」
名前を呼ばれ、つい緊張が走る。
「私は果報者です。・・・・・・貴方様のような人にお仕えできて、ほんとうに・・・・・・・・・・・・」
僕が言葉を返すより早く、「お流ししますね」とターナが自分の仕事を再開してしまう。
けれど、そこには先ほどのような緊張感や困った様子はなく、とりあえず胸をなで下ろす。
何をしたわけでもないのに、ここまで慕われるというのはあまり居心地の良いものじゃないけれど、僕はこれ以上この話題を掘り下げることをやめることにした。
ターナ本人が納得してるなら、僕が必要以上に胸の内を聞き出すことはないだろう。
頭を流し終わった後、僕がそろそろあがることを告げると、バスタオルらしきものを取ってきてくれた。
案の定、「お拭き致します」と言われたが、そこは譲れないところである。
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ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
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召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
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