月の光

ましゅまろん

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「私」

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「行かないの?」


まだうまく状況が飲み込めていない「私」に少年はまた声をかける。
えっと、何から聞くべき?
いつからそこに居たのか、一体誰なのか、それと……

「ず、随分綺麗な瞳ですね」




……

………………。


……………なんでわざわざよりによってこれを言ったんだろう……



「……………ぷふっ…ふふははははっ!」
「……笑わないでください、久しぶりに〈驚いた〉んです」
「いや、初対面で一言目に言われるのがそれは……笑うしかない…(震え声)」

(…………失礼なヤツ)

胸の内で一言呟いた瞬間、ピタリと少年の笑いが止まった。

「あれれ、仮面の下はなかなか口が悪いのかな?」
「え?」
「失礼なヤツ、って心の中で思ってたでしょう?」
(なんでわかったんだ……?)
「これが僕の能力だからだよ」
「……………心が読める、ですか」
「そう、文字を読むみたいにはっきりと。君も、何か能力があるからここに来たんでしょう?」
「……「私」に能力?そんなのないですよ?」
「えー、………嘘はついてないね、まだ発芽してないのかな」
「発芽?」
「うん、能力が開花することだよ。大抵は十歳位でなるんだけど」
「………覚えがないですね…」
「君、いくつ?」
「「私」は十五歳です。」
(この人は………十二、三歳かな………)
「君と同じく十五歳だよ💢」
「え、本当ですか?」
「………同い年だし、本当は口悪いのわかってるから、敬語やめてくれる?気持ち悪いからさ。」
「………すいません、出来ません。「私」は許されていないので。」
「………?そういえばさっきから、「私」って何なの?君の中ではっきり「私」と何か別のものが区別されてるのが見えるよ?」
「「私」はそんなこと、してない」

(……ふーん、なるほど。多分、この子の「能力たね」を「私」っていう人格が護ってるからまだ発芽していないんだ……そんなの見たことないよね、そこまで強力な能力なの……?)

「そっか、じゃあいいや。……そうだ、君の名前を聞いてなかった。君の名前は?」
「「私」の名前は……」


「話はそれくらいにして、手続きが終わったから中に入ろうか?」



急に割り込んできた声に、振り向く。
予想通り、私が待っていた人の声だった。




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