定年退職後の生活は異世界でした

村づくり 初級編

水路完成と夢のお告げ ２

　「洋一おじちゃんの事、パパって呼んで良い？」

　レイチェルは眼に涙を浮かべてながら、真剣な瞳で私を見つめる。

　私はレイチェルをそっと抱き寄せてから頭を撫でつつ「レイチェル、パパって呼んでくれてありがとう」と優しく話しかけた。

　レイチェルは緊張が解けたのか「パパ！」と声を上げて泣き出し、暫くしてからそのまま眠ってしまった。

　そんなレイチェルを優しく抱きしめながらルルを見ると嬉しそうな、そして少し寂しそうな顔をしてレイチェルを見つめている。

　「ルルもこっちにおいで」

　私はルルを呼び寄せて二人を抱きしめながら、

　「これから二人は姉妹だ。ルルはお姉ちゃんとしてレイチェルを頼んだよ」

　「うん」

　ルルは嬉しそうに頷く。

　「それに、これからもっと家族が増えるからね」

　私はルルにウインクして、レイチェルを優希にそっと渡してから立ち上がり、ルルの手を繋いでエルフ娘たちの元へ向かう。

　そこではエルフ娘達とミリーが楽しくデザートを食べながらお喋りをしていた。

　「みんなちょっと聞いてくれるかい？」

　私が声を掛けたところで、みんなが何々？といった感じで顔を向ける。

　「昨晩マシュー達と話し合った事だけど、もうラナから聞いてるかもしれないが、近日中にみんなの村へ何名か派遣しようと思っている」

　年長者達はラナから聞いたのか私の話に頷き、年少組は初めて聞いたのかビックリしている。

　「そこでの目的は、生き残った人達にこの土地への移住を打診する事と、みんなの家族や身内の安否を確認することです」

　数人のエルフ達は顔を俯かせている。もう家族がいない子達だ。

　「この中にはもう家族が居ない子もいる中で、この話をするのは憚れるかもしれないが、知らないよりは良いと思って話しました」

　私は一呼吸おいて、ルルの頭に手をのせる。

　「私と優希はね、みんながここに来てからずっと、自分の娘と思って生活してたけど、さっきレイチェルからパパと呼んで良いかと思い詰めた顔で聞いてきたんだ。その時になって初めて、想いじゃなくて言葉にして伝えないと駄目なんだと痛感したんだ」

　エルフ娘達はみんな黙って聞いている。

　「でだ、ここで話すのもどうかと思うけど・・・みんな私と優希の娘になってくれませんか？」

　「当然、これから向かうみんなの故郷で、本当の家族がいる子達は家族の元に戻るんだよ？ただ・・・あー、上手く言えないけど、家族や身内が居なかったら、その、ここで私達と家族になってくれたら嬉しいなぁ・・・と」

　私は自分が支離滅裂で何を話しているかよく分からなくなって段々と尻窄みなってしまう。

　「「「・・・・」」」

　私はアハハと頭を掻いて場を誤魔化していると、アンナが私の元にやってきて、

　「今更何言ってるの？『お父さん！』」と言って抱きついてきた。

　急に抱きついてきたアンナに私が目を白黒していると、ラナが近づいてきて、「私は成人してますが良いんですか？」と聞いてきたので、もちろんと答える。

　「それじゃ、私たちも大丈夫ね」とダイアナ、ソフィア、バネッサ、エリサ、レイン、ガーベラが近づいてきて「これからもよろしくお願いします『お父さん』」と言ってそれぞれとハグをする。

　「次は私たちね！パパ！」と笑顔でキリア、ジェニー、ジェシー、モニカ、ルナ、ミラーの年少組が抱きついてから優希の元へ向かっていった。

　「みんな、ありがとう」

　私はみんなにお礼を言いながらチラリとアマンダを見ると、アマンダは俯いて黙っている。

　「アマンダ、その、無理しなくて良いんだからね」

　私がアマンダに話しかけると、アマンダは「違うの！」と言ってまた俯いてしまった。

　俯いてしまったアマンダにどう話しかけたら良いか困っている私に、レインとガーベラが近ずいてきて、

　「アマンダは雄介さんが好きなんだよね～！だから兄妹になるのに抵抗があるんじゃない？」とニヤニヤしながらアマンダに話しかけてきた。

　「なっ！わっ私は別に、その、ゴニョゴニョ」

　アマンダは顔を真っ赤にしながら、更に俯いてしまう。
　
　「まっまぁ、それは当事者同士で上手くやってくれれば、ね！その、違う方のお義父さんでも・・・」

　私も何故か恥ずかしくなって顔を赤くしてゴニョゴニョと話し出すと、

　「ダメ！」と涙目で怒っているルルが話に割って入ってきた。

　「私が雄介お兄ちゃんのお嫁さんになるの！だからダメ！」

　アマンダがルルの言葉で顔をあげてキッとルルを睨む。

　おおう！何か修羅場になってきたぁ！

　「あら～、ウチの雄介はモテるわねぇ」

　優希がアマンダとルルが睨み合っている中にのほほんと割って入る。

　「まぁ、あの子はあなた達の父親洋一と同じで鈍感だから、二人とも積極的にアプローチしないと、あの鈍感息子は気が付かないわよ～」

　優希がチラリと雄介の方を向くと、そこにはラナ達にこれから長男として頑張るよ！と笑顔で話している

　優希の言葉に二人とも思い当たる節があるのか、妙に納得している。

　「それに、この世界では一夫多妻制が普通なんでしょ？だったら、二人とも雄介のお嫁さんになってくれると、お母さんは嬉しいなぁ」

　なっなんですと！？

　私が思わず優希の顔を見ると、優希の顔には『お前には言ってねぇ』とガッチリ書いてある笑顔で返されてしまった。

　お、おう・・・。