定年退職後の生活は異世界でした

青山ねこまる

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村づくり 初級編

水路完成と夢のお告げ 1

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 畑に生える雑草を引き抜いて、ポイっとスラ吉に投げると、スラ吉はビヨンと伸びて雑草をキャッチしてジュワッと吸収する。

 ポイ、ジュワ、ポイ、ジュワ、ポイ・・・

 「何だろうねあのコンビネーションは」

 アマンダとアンナは苦笑いしながら洋一達を見詰めていると、自宅からルルがやって来て、「みんな~そろそろ出発するよ~」と声をかけてきたので、アマンダは道具を片付けに向かい、アンナは洋一に声をかけにいった。

 「洋一さん~!そろそろ出るって~」

 「ん?もうそんな時間か」

 私は立ち上がって背伸びをする。凝り固まっていた筋肉が伸びて気持ちい。

 背伸びをしつつふと足元を見ると、スラ吉も同じ様に縦にビヨーンと伸びている。

 「お!スラ吉も気持ちいか」

 スラ吉の頭を撫でるとビヨンビヨンと揺れている。

 「よーし!それじゃみんなのところに行こうか!」

 私はスラ吉の動きに満足して、アンナに声をかけた。

 「はい!早く行きましょ!どんなお弁当なのか楽しみ!」

 アンナは満面の笑みで頷いて

 「スラ吉行くよ!」とスラ吉と一緒に自宅へ向かって行った。



 
 「みんな!忘れ物はない?」

 「「「大丈夫!」」」

 「戸締りは?」

 「「「した~!」」」

 「それじゃ出発しましょう!」

 「「「はーい!」」」

 上機嫌な優希の号令に年少組が元気に挨拶をして、みんなでワイワイと川へ向かって行く。

 鼻歌交じりに子供達の後ろを歩いている優希に、私は優希が持っているバスケットを受け取りつつ「やけに機嫌がいいね、何かあったか?」と聞いてみた。 

 「ん?この異世界に来てから始めて遠出だからね、なんか嬉しくって」

 優希が嬉しそうに辺りを見渡しながら答える。

 「そうか、そうだよなぁ、俺たちこの異世界に来てから家の周りしか出かけてないもんなぁ」

 私も川以外に遠出をしていないので、しみじみとしてしまう。

 「優希・・・後悔してないか?」

 優希はレイチェルと手を繋ぎ、楽しそうに歩いているルルを見ながら、

 「後悔?・・・してないわよ」と優しく微笑んだ。

 「あなたの方こそ、どうなのよ?」

 優希が私の方を向きながら聞いてきたので「当然!後悔なんてないさ」と答えてニッと笑ってみせ、

 「よし!近いうちに他の村や街に行ってみよう!」

 私が気合を入れて宣言したところで、優希も笑顔で「期待してるわよ!」と言って背中を叩いてきた。

 そんなやり取りをルナ、ミラー、モニカ達が少し寂しそうに見ていたので、「どうした?ルナ達も行ってみたいか?」と聞いてみた。

 ルナ達は私達の事を見ていたのが気まずかったのか、下を向いてしまったので、私と優希は顔を見合わせて、

 「娘が遠慮する事ないのよ?」

 「そうだぞ、遠慮することなんてないんだ。一緒に街に行ってみよう!」

 私と優希が、三人の頭を撫でながら優しく語りかける。

 その横で、スラ吉がビヨンビヨンと体を伸ばして左右に揺れて撫でろ撫でろと催促してくる。

 「ほら、スラ吉なんか遠慮のえの字もないよ」

 私は苦笑いしながらスラ吉の頭を撫でてやると、三人もそれをみてニッコリ微笑んだ。




 「おーい!お待たせー!」

 森を抜けた先で雄介達の姿を見つけたアンナが、大きな声でバスケットを掲げて近づいて行く。

 「お!待ってたぜ!」

 マシューが首に巻いたタオルで汗を拭きながら私達の方へ近づいてくる。

 「お疲れさま、どんな感じですか?」

 「あぁ、もう川まで繋がっていて板で仕切ったところだ」

 マシューが川の方へ顔を向けると、ダンゴが板から離れてこちらに戻ってくるところだった。

 「じゃ、お昼の準備をしますかね、雄介!この敷物を引いてくれるか?」

 「あいよ。エリサとキリア手伝ってくれる?」

 雄介が敷物を持ってエリサ達の方へ向かって行った。




 「えー、それでは、ここに無事水路が完成したのも一重に・・・」

 「話がなげぇよ!」

 マシューのツッコミにみんながドッと笑い、期待を込めた目で私を見つめる。

 「ゴホン!じゃぁ取り敢えず完成おめでとう!乾杯!」

 「「「「カンパーイ!」」」」

 みんながそれぞれの飲み物で乾杯をしてお弁当に手を伸ばす。

 お弁当の中身は、サンドイッチにおにぎりと、定番の唐揚げにウインナー、卵焼きなど、運動会などでお馴染みのおかずをお重に一杯詰め込んだのをみんなが手を伸ばし、ワイワイ言いながら食べている。

 私もおにぎりと唐揚げを両手に持って楽しく頬張る。

 うん、美味しい。

  「洋一お父さん」

 私が唐揚げを頬張っていると、ルルがレイチェルを連れて私のところへ来た。

 「うん?どうした?」

 「うん。あのね、レイチェルなんだけどね・・・」

 ルルが言いにくそうにしていると、一緒に俯いていたレチェルが私の方を向いて、

 「洋一おじちゃんの事、パパって呼んで良い?」と今にも泣きそうな顔で聞いてきた。
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