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ハヅキ様との通信を終えて一息ついた私たちは、今後の方針を決めることにした。
私は、表向きはローハルト殿下の命で修道院に入れられたように見せておいて、エルディオ様と共に王立図書館や研究所でハヅキ様の帰還の方法を探すことになった。カレン様はファーレン王国に滞在中の国王陛下夫妻と私の父親であるベスター公爵に連絡を取り、ローハルト殿下の今後について話し合うそうだ。
それを終えたら自身の帰国を明かし殿下と対峙するため、それまでになんとかしてハヅキ様をお帰しする方法を見付けておきたい。
「わたくしとエルディオにはゲームの強制力が働かないようだから、当面の間ディアはエルディオと行動を共にしてちょうだいね」
「一人になった途端に強制力が悪影響を及ぼす可能性も考慮しておきたいので、しばしご辛抱いただけると助かります」
「エルディオ様はお義姉様からとても信頼されているようですので、安心してお傍にいられます。至らないこともあるかと思いますが、ご指導いただけると嬉しく存じます」
「公爵家のお嬢様にそんな畏まった態度を取られると緊張しますし、変装して俺の助手のフリをするんですから、楽になさってください」
「そうですか?では、お義姉様にお仕えする先達に敬意を表して”師匠”とお呼びさせていただいても?」
「やっぱちょっとズレてますね!?」
カレン様所有の転移陣をお借りし、修道院での拠点としてあてがわれた一室と公爵邸の自室に設置することで自由な行き来が可能となった。ローハルト殿下の手の者から監視されているので、とても助かる。
転移陣は術式が刻まれた魔法陣を刺繍した敷物を床に広げるだけで使用可能で、王都内くらいの範囲なら一瞬で移動できる優れものだ。刺繍そのものは誰が刺してもよいが、転移可能なだけの魔力保有者が触れないと発動しない仕組みとなっている。なので、自室に無造作に敷いていてもうっかりミリアやジェイムズがどこかに飛ばされてしまう心配はないのだ。
「こちらの陣はお義姉様が手ずから刺繍されたのでしょうか?素晴らしい仕上がりです!」
「いいえ、それはエルディオの仕事よ。こう見えて器用なの」
「なんと……多才でいらっしゃるのですね。やはり師匠と呼ぶにふさわしい……」
「やめてください!刺繍はそこのお方が「内密に転移陣を増やしたいので余暇で量産しなさい」って無茶ぶりしてきたんですよ……お陰で余暇丸潰れ……」
「あなたがなんでも出来るお陰で、手札が増やせて助かったわ。とても素晴らしいことよ」
「はいはい光栄光栄。有難くて涙が出そうですねぇ……」
エルディオ様は魔術具や遺産について詳しいが、大掛かりな魔術具を自力で動かせるだけの魔力は保有していないため、一人では転移陣を起動出来ないようだ。そういった観点から見ても、私たちが一緒に行動するのは理にかなっている。カレン様のお傍にいられないことは少し残念だが、私は私の出来ることを精一杯やろうと思う。
「王立図書館の蔵書は無尽蔵で、わたくしもまだ見たことのない書架があるくらいよ。エルディオが居れば同行者も手続き無しで禁書庫に入れるように手配済みだから、協力して文献をあたってちょうだい」
「わかりました!お役に立てるよう励みます!!」
「あそこのことはエルディオがよくわかっているから、彼の言うことをよく聞いてちょうだいね」
「わかりました!師匠のお言葉はお義姉様のものと等しいと思ってついていきます!!」
「プレッシャーが凄いぞ……」
王立図書館には魔術遺産に関する文献や他国の書物が多数所蔵されており、貴族階級の者であっても手続きなしでは閲覧できないものがある。ハーヴェイ伯爵家直系のエルディオ様のお立場であれば大抵の蔵書の閲覧が可能なのだろう。どうやらこのお方はご自身の実力やお立場をしっかり生かしてカレン様を補佐しているようだ。私もローハルト殿下の補佐よりそっちがいい。
「師匠、しばらくお傍で学ばせていただききます」
「えーと、公爵家のご令嬢で王子妃教育を受けた方に学んでもらえるようなことは、何もできないですよ?」
「ご謙遜を。お二人のやり取りを拝見させていただいて、カレン様が師匠に信を置いていることは明白です。願わくば私も、そのようになりたいと思います。ローハルト殿下のお守り……いえ、補佐から解放された今、帰国されたカレン様のお傍に侍りた……ではなく、お役に立ちたいのです」
「我が国にとって最良の王子妃、社交界を彩る一輪の白薔薇、全貴族令嬢の憧れと言われたご令嬢がそれでいいんですかね……?」
「いいもなにも、婚約者ではなくなったのは殿下のご意向なので!」
エルディオ様と陣の上に立ち、王立図書館までの転移を踏む。
重大な任務に向かうところなのに不謹慎かもしれないけど、この状況にほんの少し胸が躍っている自分がいた。
私は、表向きはローハルト殿下の命で修道院に入れられたように見せておいて、エルディオ様と共に王立図書館や研究所でハヅキ様の帰還の方法を探すことになった。カレン様はファーレン王国に滞在中の国王陛下夫妻と私の父親であるベスター公爵に連絡を取り、ローハルト殿下の今後について話し合うそうだ。
それを終えたら自身の帰国を明かし殿下と対峙するため、それまでになんとかしてハヅキ様をお帰しする方法を見付けておきたい。
「わたくしとエルディオにはゲームの強制力が働かないようだから、当面の間ディアはエルディオと行動を共にしてちょうだいね」
「一人になった途端に強制力が悪影響を及ぼす可能性も考慮しておきたいので、しばしご辛抱いただけると助かります」
「エルディオ様はお義姉様からとても信頼されているようですので、安心してお傍にいられます。至らないこともあるかと思いますが、ご指導いただけると嬉しく存じます」
「公爵家のお嬢様にそんな畏まった態度を取られると緊張しますし、変装して俺の助手のフリをするんですから、楽になさってください」
「そうですか?では、お義姉様にお仕えする先達に敬意を表して”師匠”とお呼びさせていただいても?」
「やっぱちょっとズレてますね!?」
カレン様所有の転移陣をお借りし、修道院での拠点としてあてがわれた一室と公爵邸の自室に設置することで自由な行き来が可能となった。ローハルト殿下の手の者から監視されているので、とても助かる。
転移陣は術式が刻まれた魔法陣を刺繍した敷物を床に広げるだけで使用可能で、王都内くらいの範囲なら一瞬で移動できる優れものだ。刺繍そのものは誰が刺してもよいが、転移可能なだけの魔力保有者が触れないと発動しない仕組みとなっている。なので、自室に無造作に敷いていてもうっかりミリアやジェイムズがどこかに飛ばされてしまう心配はないのだ。
「こちらの陣はお義姉様が手ずから刺繍されたのでしょうか?素晴らしい仕上がりです!」
「いいえ、それはエルディオの仕事よ。こう見えて器用なの」
「なんと……多才でいらっしゃるのですね。やはり師匠と呼ぶにふさわしい……」
「やめてください!刺繍はそこのお方が「内密に転移陣を増やしたいので余暇で量産しなさい」って無茶ぶりしてきたんですよ……お陰で余暇丸潰れ……」
「あなたがなんでも出来るお陰で、手札が増やせて助かったわ。とても素晴らしいことよ」
「はいはい光栄光栄。有難くて涙が出そうですねぇ……」
エルディオ様は魔術具や遺産について詳しいが、大掛かりな魔術具を自力で動かせるだけの魔力は保有していないため、一人では転移陣を起動出来ないようだ。そういった観点から見ても、私たちが一緒に行動するのは理にかなっている。カレン様のお傍にいられないことは少し残念だが、私は私の出来ることを精一杯やろうと思う。
「王立図書館の蔵書は無尽蔵で、わたくしもまだ見たことのない書架があるくらいよ。エルディオが居れば同行者も手続き無しで禁書庫に入れるように手配済みだから、協力して文献をあたってちょうだい」
「わかりました!お役に立てるよう励みます!!」
「あそこのことはエルディオがよくわかっているから、彼の言うことをよく聞いてちょうだいね」
「わかりました!師匠のお言葉はお義姉様のものと等しいと思ってついていきます!!」
「プレッシャーが凄いぞ……」
王立図書館には魔術遺産に関する文献や他国の書物が多数所蔵されており、貴族階級の者であっても手続きなしでは閲覧できないものがある。ハーヴェイ伯爵家直系のエルディオ様のお立場であれば大抵の蔵書の閲覧が可能なのだろう。どうやらこのお方はご自身の実力やお立場をしっかり生かしてカレン様を補佐しているようだ。私もローハルト殿下の補佐よりそっちがいい。
「師匠、しばらくお傍で学ばせていただききます」
「えーと、公爵家のご令嬢で王子妃教育を受けた方に学んでもらえるようなことは、何もできないですよ?」
「ご謙遜を。お二人のやり取りを拝見させていただいて、カレン様が師匠に信を置いていることは明白です。願わくば私も、そのようになりたいと思います。ローハルト殿下のお守り……いえ、補佐から解放された今、帰国されたカレン様のお傍に侍りた……ではなく、お役に立ちたいのです」
「我が国にとって最良の王子妃、社交界を彩る一輪の白薔薇、全貴族令嬢の憧れと言われたご令嬢がそれでいいんですかね……?」
「いいもなにも、婚約者ではなくなったのは殿下のご意向なので!」
エルディオ様と陣の上に立ち、王立図書館までの転移を踏む。
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