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序章

序章第一節 故郷、シールドランドにて

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盾の王の広大な玉座の間で、静寂が支配する中、リザ男は深く一礼をした。彼の背筋は、未来への決意で真っ直ぐに伸びていた。盾の王の声が、堂々とした響きで空間を満たす。

「リザ男よ、諸国を漫遊し、見聞を深める使命をお前に託す。この旅が、我が国のさらなる発展の礎となることを願う。」

リザ男の目は、その言葉に燃え上がるような光を宿していた。「陛下、この重大な任務を全うするため、全力を尽くします。」

「良い。そして、お前の旅を支えるため、リス蔵を従者として与えよう。彼の機転と忠誠心は、お前の旅の大きな支えとなるだろう。」王の指し示す方向には、静かに頷くリス蔵の姿があった。

リス蔵は前に一歩踏み出し、リザ男に向かって敬意を表する。「リザ男様、私はあなたの旅を全力で支えます。どんな困難も、共に乗り越えましょう。」
「うむ、よろしく頼む」
「どうだ、リザ男。初めて従者を持った気分は」
盾の王は尋ねる。
「従者を持つということは、私にとって新たな使命を背負うことを意味します。リス蔵と共に、我が国の未来のために、広い世界から学び、成長して帰ることを誓います。」
「うむ、重畳、重畳。その娘、リス蔵と共に成長するならばそれ以上のことはない。ついでに、娘と子を成し、諸共に成長してもらえればより有り難いものじゃ」
「?! ま、まさか! リス蔵、お主、ひょっとして!」
「お久しゅうございます、リザ男様。そうです。あなたがリス子リス子と呼んでいた、あのリス子でございます」
答えたリス蔵は、あらためて頭を深々とリザ男に下げる。リザ男はたじろいだ。
「へ、陛下‥。室を持ち、世継ぎを成すことも某の役目と心得ますが、リス子は某の娘も同然の者にございます。その者と子を為せとは‥」
「ふむ、リスは好みではないと申すか? そう言っておるが、どう致すか? リス子」
リス子は答えない。みるみる瞳に涙が浮かんでくるのがわかる。
「わたくしは、リザ男様にお仕えし、お支えすることを夢見てまいりました。そのために、リザ男様にお救いいただいた命を捧げることを夢見てきたのです。室としての役目はわたくしの体には荷が勝ちすぎるとお考えかもしれませんが、どうかリザ男様の懐の片隅に忍ばせていただければ幸いと存じます。どうか、どうか!」
そこまで言われ、リザ男は拒否するわけにはいかなくなった。散々悩んだが、盾の王の命を受け入れ、その夜、リス蔵を抱いた。
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