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第一章

第一章第一節 港湾都市バークレンへ

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七月の十五夜、空には満月が輝き、星々が瞬いていた。リザ男とリス蔵は、この吉兆の夜に母国シールドランドを後にした。目指すは、活気に満ちた港湾都市バークレン。そこでは、国王エドモントの待望の王子トリスタンの誕生を祝う祭りと、それに伴う武闘会が開催されるという。

旅の道中、二人は様々な風景を眺めながら進んだ。豊かな森林を抜け、時には小川のせせらぎを聞きながら、リス蔵は期待に胸を躍らせていた。「リザ男様、バークレンの祭りはどんなに賑やかなのでしょうか!そして武闘会では、どんな勇士たちが技を競うのでしょうか!」彼の声には、冒険への興奮が満ち溢れていた。

リザ男は微笑みながら、彼の興奮を共有する。「確かに、バークレンでの経験は我々にとって貴重なものになるだろう。しかし、忘れてはならぬ。我々の旅の目的は、見聞を広げ、国のためになる知識を得ることだ。祭りも武闘会も、その一環に過ぎない。」

道中、二人は時折、旅人や商人とすれ違い、彼らからバークレンの最新の話題や道の情報を聞き出した。リス蔵は、その度に目を輝かせ、バークレンでの冒険に思いを馳せた。

旅の途中、リス蔵が小さな村の市場で色とりどりの布を見つけ、リザ男に見せびらかす場面もあった。「見てください、リザ男様!この布、美しいですね!バークレンではもっと素晴らしい品々が見つかるかもしれません!」リザ男は、彼のこのような一面もまた、旅の楽しみの一つだと感じていた。

ついに、長い旅路の末、二人はバークレンの壮大な城門に到着した。城門をくぐるその瞬間、二人は新たな冒険が始まることを互いに認識した。彼は少し浮かれた様子で、しかしリザ男はいつものように落ち着き払って、バークレンでの挑戦に備えた。

港湾都市バークレンの城門を前に、二人の心は期待で高鳴っていた。祭りの賑わい、武闘会での熱戦、そして未知の出会いが、彼らを待ち受けている。
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