シールドランド物語 第一部 カタ=リナの少女

第二章

第二章第一節 武闘会一日目1

武闘会の日、期待に胸を膨らませた観客が闘技場を埋め尽くしていた。リザ男は参加者の一人として、力強く闘技場に足を踏み入れる。リス蔵から贈られた豪華なマントが彼の肩を包み、リザ男の戦士としての風格を一層際立たせていた。それは動くたびに優雅に揺れ、その刺繍が鈍い光を放ち、彼の存在感を増すのに一役買っていた。

貴賓席の最上段には国王エドモンドが座っており、その権威ある佇まいが場に威厳をもたらしていた。しかし、傍らにいるはずの王妃イザベラと生まれたばかりの王子トリスタンの姿はない。

「我が名はガーヴェイ、砂漠を治める獅子。我の前に立つ者は、砂と化す運命にある！」と、リザ男の対戦相手であるガーヴェイが力強く名乗りを上げる。その声には、砂漠の遊牧民の誇りと、無敵を誇る戦士の自信が込められていた。

続いてリザ男が前へと進み出る。
「我が名はリザ男、盾の王の地より来たりし者。荒れ狂う風となり、敵を貫く。この愛槍「千本針」と共に、我が道を切り開く」
彼の名乗りは闘技場を揺るがすほどの迫力を持っていた。その瞬間、リザ男が掲げた愛槍「千本針」が鈍い光を放つ。マントともども彼の戦士としての風格を一層引き立て、その光景は観客たちに深い印象を残した。

銅鑼の響きが闘技場を包む中、開幕の合図と共に、砂漠の獅子ガーヴェイが激しい気迫をもってリザ男に向かって猛然と駆け出そうとした。「小癪なトカゲめ！」彼の声は闘志に満ちあふれ、腰のシミタールを抜き放ちながら一気に間合いを詰めようとする。

しかし、リザ男は全く動じない。これは全て彼の計算の範囲内だった。ガーヴェイの攻撃を見越していたリザ男は、ガーヴェイの足が踏み出す前に、愛槍「千本針」で瞬時に反撃した。その一撃は風を切るように軽く、ガーヴェイの手からシミタールを吹き飛ばした。

「おのれ！」と立腹したガーヴェイは、代わりに小刀に手をかけたが、その試みも虚しく終わる。リザ男の「千本針」は容赦なく、ガーヴェイの体を撫で回すように蹂躙した。その技術と速さに、ガーヴェイは完全に出し抜かれてしまった。

痛撃を喰らったガーヴェイは、ついに左膝を地につき、屈服の姿を見せる。リザ男はいつの間にか距離を詰め、ガーヴェイの額に「千本針」の切先を当てた。「参った。降伏する」とガーヴェイは悔しさを押し殺しながら降伏を宣言した。

この決着に、国王エドモンドを始めとする観客たちは驚きと喜びの声を上げた。リス蔵も、リザ男の勝利に喜びを隠せず、舞い踊るようにその場を盛り上げた。リザ男の勝利は、彼の戦士としての名誉と地位を不動のものとし、観客たちに深い印象を残した。

闘技場に響き渡る歓声の中、リザ男は静かに「千本針」を下ろし、ガーヴェイに敬意を表するジェスチャーをした。この一戦は、リザ男の武闘会での冒険の中で忘れられない一ページとなり、彼の伝説をさらに色濃くした。