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第五章

第五章第二節 決勝でのリザ男とゼファーの対決

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アレンの厳かな声が闘技場に響き渡る。「それでは戦いを始める。用意、初め!」その合図と共に、銅鑼の深い響きが空気を震わせた。

「うおおおお!」という力強い雄叫びと共に、先手を取ったのはリザ男だった。彼は背中に担いでいた槍「千本針」を素早く構えると、猛烈な勢いでゼファーに向かって突きを放った。彼の攻撃は魔法の力で高められており、光弾となってゼファーに降り注いだ。

しかし、何十発もの光弾がゼファーに向かって放たれたにもかかわらず、一発として彼に掠ることはなかった。ゼファーの体がほんのわずかにゆらりと傾くと、その姿はいつの間にか一歩左に移動していた。まるで彼が次の瞬間どこにいるのかを予測することが不可能なほどの敏捷さを見せつけた。

「笑止、リザ男よ。お主の力はこんなものか?」ゼファーは挑発するように言った。

リザ男は激しさを増して応じた。「やるなぁ、「北の」!まだまだこれからよ!」彼はさらに光弾を放つが、ゼファーは右へ、そして左へと素早く躱し、ある時には高くジャンプしてその攻撃を避けた。リザ男の攻撃がどれほど激しくても、ゼファーはそれを軽やかにかわし続ける。リザ男の攻撃で捉えることができないゼファーの動きは、観客たちを驚愕させ、同時に彼らの期待を高めた。

リザ男の攻撃は激しさを増していたが、ゼファーはそれを軽やかにかわし続ける。リザ男の額には緊張の汗が浮かび、彼の攻撃の激しさが、その汗の滴とともに闘技場に響き渡っていた。

「いけない!」リス蔵の声が緊迫した空気の中で突然響き渡る。彼はゼファーの狙いに気づいたのだ。ゼファーはリザ男をおちょくるように動き回り、彼を闘技場の外周に誘導していた。リザ男の息が乱れ、その位置からゼファーに利を与える形となっていた。

何度目かの光弾を放つリザ男だが、ゼファーはそれをかき消えるようにして躱す。そして次に現れた時、彼は舞台の中心に堂々と立っていた。リザ男がゼファーの位置変更に気づいた時には、既に遅かった。

猛烈な速さでリザ男の懐に飛び込んだゼファーは、足元から強烈な斬撃を放つ。リザ男は千本針を盾にして応戦するが、それを見越した上でのゼファーの計算された左の一撃が、まるで狙い澄ましたかのように放たれた。リザ男の心の中で警鐘が鳴り響く。

(躱せん!)

千本針を手放し、リザ男は体を大きく後ろに反らせて、そのまま地面を転がる。立ち上がったときには、彼は既に闘技場の隅に追いやられていた。この瞬間、ゼファーは隙を逃さない。数えきれない連撃がリザ男に向かって繰り出される。離れたところにいるリス蔵とネコ美からは、異口同音に心配と恐怖を込めた悲鳴が上がる。

リザ男は鉤爪を使い、必死にゼファーの連撃に対応しようとする。しかし、極近接戦闘の中ではゼファーの方が明らかに有利で、リザ男の反撃は次第に効果を失っていく。ゼファーの動きはあまりにも速く、精密で、リザ男がどれだけ技を繰り出しても、ゼファーの技の前に虚しく無効化された。

リザ男は、頭によぎった敗北の予感を振り払うかのように、必死になって応戦するが、その焦りは動作に無駄を生み、本来の冷静さを欠いていた。例に漏れず、ゼファーはリザ男のその一瞬の隙を見逃さない。舞台の外周から中心へと逃れ、戦いの流れを一気に変えようと放たれたリザ男の大ぶりな攻撃を軽やかに避けつつ、ゼファーは再度彼の懐に飛び込む。

そして、手にした片手斧を静かに、しかし確実にリザ男の首筋に当てた。その瞬間、闘技場内は静まり返り、ゼファーの行動がリザ男の敗北を意味していることを、誰もが理解した。

「‥まいった。俺の負けだ」とリザ男は肩を落とし、声を絞り出す。その言葉に、観客席からは驚きと尊敬の入り混じった息遣いが聞こえた。リザ男の敗北が決まり、闘技場は一瞬の沈黙に包まれた後、ゼファーへの称賛の拍手が雷のように鳴り響いた。

リザ男とゼファーの戦いは、技術と勇気、そして戦士としての尊厳を見せつけるものだった。リザ男が敗れはしたものの、彼の戦いぶりは多くの観客の心を捉え、彼らに深い印象を与えた。
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