シールドランド物語 第一部 カタ=リナの少女

第五章

第五章第三節 閉会式

日は徐々に傾き、舞台の片付けが終わると、閉会式の時が訪れた。国王エドモンドが堂々と舞台に登壇し、その存在感だけで場の空気を一変させた。

「両名とも、数多の強敵たちを退け、よくここまで勝ち登った。最大の賛辞を送ろう！」エドモンド国王の声が闘技場に響き渡る。「皆も、ここに立つ強者たちを讃えようぞ！」その呼びかけに応えるかのように、割れんばかりの拍手と歓声が闘技場を一杯に満たした。

リザ男は、傍に立つ武人、ゼファーに向かって握手を求めた。「素晴らしかったぞ、「北の」！よくぞ俺を退け、頂点に登り詰めた！俺はお前のことを忘れない。機会があれば、俺はまたお前と戦いたい！」

ゼファーはその挑戦を真っ直ぐな目で受け止め、「応！里を出て以来、お主ほど気持ち良い男と戦ったことは無かった！時がめぐれば機会は必ずやってこよう！それまで、達者でいろ！」と力強く答えた。

「お主こそな！」リザ男の声に力がこもる。二人は固い握手を交わし、その瞬間、改めて観客たちから熱狂的な歓声があがった。

国王エドモンドが重々しい声で宣言した。「それでは、優勝したゼファー・ノースウインドには、約束通り我が家の宝刀「グリムブレイカー」を授与する。この大会で優勝した証となろう。末代まで誇りに思うが良い！」彼の手から聖剣グリムブレイカーが差し出されたが、ゼファーはそれを押し留めた。

「不敬を承知で申し上げます、陛下。我が部族に伝わる闘法は、風のように駆け、敵の懐に潜り込み、内臓を食い破るが流儀。我が斧は我が爪、我が牙。この役はいかに聖剣とはいえ、短刀には務まりますまい」とゼファーは静かに述べた。

「ふむ、それで？」国王は興味深そうに問いかけた。

ゼファーは続けた。「我がここで戦うも、我が部族を襲いし災いのため。それを退けるには多くの財が必要となることを申し上げます。願わくば、顕彰を、聖剣にかわり、相応の財で為すことを、心より願い奉ります」

国王エドモンドは一瞬の沈黙の後、「‥あい分かった。其方には、我が国の金貨千枚を顕彰としよう」と宣言した。

「ありがたき幸せ」とゼファーは深く頭を下げた。

そして、国王は更に付け加えた。「惜しくも優勝を逃したリザ男殿には、同じく我が国の金貨百枚を顕彰とする。」

リザ男は、その言葉に「ははっ！」と心からの笑みを浮かべた。

最後に国王エドモンドが宣言する。「それでは、大義であった！皆の者、帰りに馳走を持って帰るが良い！皆皆にも今宵は素晴らしき夜が訪れんことを願う！」その言葉に、闘技場は再び歓声で満ちあふれた。