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第六章
第六章第三節 王座の間突入
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空高く、エレナ・スカイダンサー、コールサイン「蝶々」が軽やかに舞っていた。彼女はエルフィン、空中を舞う小人の一人で、その手には双眼鏡型魔道具「千里眼」が握られている。この特別な道具を通して、エレナはバークレン王宮内の兵員の現在位置やその他重要な情報を得ていた。彼女の鋭い視線は王宮の中を透かして見るかのように、敵の動きをくまなく把握している。
彼女が心の中で描くバークレン王宮の図は、思考結晶を通じてグリフォンズのメンバーに瞬時に伝達される。この卓越したコミュニケーション能力により、グリフォンズのメンバーは透過の魔法を無効化する「千里眼」の能力を共有することになり、事実上、不意打ちが通用しない状態を作り出していた。
更に、兵員の配置が筒抜けになるため、グリフォンズは複数人による機動的な作戦行動に強力無比な効果を発揮することができた。この一連の情報共有は、グリフォンズにとって絶対的なアドバンテージをもたらし、彼らの行動をより一層効率的なものにしていた。
王座の間への突入作戦は、エレナの空からの支援無くしては成し遂げられなかったであろう。彼女の存在は、グリフォンズメンバーが団結し、一丸となって戦うための大きな力となっていたのだ。
コールサイン「若」リザ男と「リス」リス蔵の王座の間突入を成功させるためには、バークレンの王宮の守備隊を通常の警備位置から遠ざける必要があった。「石頭」バルドの立てたプランは以下の通り
1.「石頭」が正門へ不意打ちを行い、守備隊の意識をできるだけ引き寄せる。
2.「蝶々」が守備隊の流れを逐一全員に報告。それに応じて、「イヌイヌ」が要所に魔法障壁を設置。混乱を増幅させる。
3. それに乗じて「若」、「リス」は王座の間に突入する。
「石頭」は最後に言った。
『騒ぎを起こすだけて無茶はしませんが、全体を把握することは困難です。作成開始時点より、指揮権は「若」に移譲します』
彼の言葉は、リザ男への信頼と、彼に託された責任の大きさを物語っていた。
部屋を出て程なくして、リザ男とリス蔵の二人はバルドの報告どおり、援軍の警備兵の一団に遭遇した。警備兵たちは雄叫びを上げながら剣を振り回して襲い掛かってきたが、リザ男は槍であるはずの「千本針」を鈍器に見立て、上から容赦なく叩き潰した。その力強い一撃に、警備兵たちは恐怖の声をあげて飛び退いた。
その隙に、リス蔵が投げた催涙剤入りのカプセルが次々と警備兵たちに命中し、もんどりうって悶絶する。彼らの頭上には、リザ男の千本針が容赦なく振り下ろされた。
『Fooo、So 容赦ナシ』「イヌイヌ」からの通信が入ると、「若」ことリザ男は断固として答えた。
「このまま突っ込む! 「イヌイヌ」、中央回廊に繋がる他の通路を封鎖。どれぐらいかかる?」
『We are ready. Please GO!』ターロックの返答は即座で、行動を開始する準備ができていることを示していた。
「うむ! 「蝶々」、残敵の報告を怠るな!」リザ男は指示を出し続けた。
『イエス・サー!』エレナの応答は明るく、彼女の偵察と通信が重要な役割を果たしていることを再認識させた。
精密機械と化したグリフォンズの攻撃によって、バークレン王宮は大混乱に陥っていた。
警備兵が宮廷賢者アレンに報告する。「せ、正門より敵襲!その数1!」彼の声は緊張で震えていた。
アレンは怒りを露わにして警備兵を叱咤した。「1?! 何かの間違いだろう!誰が好んで正面から敵が来るものか!落ち着いて報告しろ!」
しかし、警備兵の返答は断固としていた。「ま、間違いありません。ドワーフが一人、斧で正門を破壊しようとしています!」
「ば、バカな!」アレンの明らかな焦りを遮るように、国王エドモンドが冷静かつ断固たる態度で応じた。
「兵たちが言っているのならば間違いは無いのだろう。発見されている敵兵が一人しかいないと言うのならば、それは揺動だ。本命はすでに宮殿内に侵入していると考えよ。」
国王はさらに命じた。「わが子トリスタンと妃イザベラの元の警備兵を増強せよ。それから、我が子の命を救ってくれた聖女殿の警備兵もな。」彼の指示は明確で、宮殿内の安全を何よりも優先するものだった。
その時、警備兵がためらいながら口を開いた。「そ、それが‥」
「ん? まだ何かあるのか?」国王が問うと、警備兵は困惑しながら答えた。「宮殿内の各所に通行を阻害する障壁発生装置が設置されています。解除にしばらく時間が‥」
国王は深くため息をつきながら、重い決断を下した。「うむ、そうか‥。では、先ほど申した、トリスタン、イザベラ、聖女殿を宮殿より直ちに脱出させよ。敵の目標は、この私だ。」
彼の言葉に、警備兵たちは驚きを隠せなかった。「へ、陛下!?」
しかし、エドモンドの決断は揺るがない。「ここにいる者ども、聞いたであろう? すぐに宮殿より脱出せよ!」と彼は再び命じる。その言葉に、警備兵たちからは反抗の声が上がった。「なりませぬ、陛下! 最後まで私もお供します」「私も!」「陛下!」
アレンはこの光景に動揺を隠せなかった。彼はバークレン国王エドモンドのカリスマがこれほどまでに強いとは思ってもみなかった。彼が密かに計画していた、エドモンドを亡き者にするという策略は、警備兵たちの忠誠心の前に霧散したのだ。そして、宮殿下にこれだけの混乱を巻き起こした者たちの手際に、アレンは内心驚嘆していた。その手腕を持つ者たちがいるのならば、彼らは相当な力を持っているに違いない。
「何者だ!」
その場の誰かが叫んだ。中央回廊の向こう側で、警備兵たちが突然の人影に警戒を強めた。
その時、力強い一歩を踏み出した人影が、手にした三又槍を振るって警備兵たちを難なくあしらい、槍先を頭部に向けて鈍器のように振り下ろした。王座の間を守るはずの武勇に優れた警備兵たちも、この人影の前ではまともに相手にされなかった。
人影が近づいてくる。
その姿は緑の鱗で覆われており、その武勇はその場にいたすべての者が知るところだった。
「乱れ突き!!!!!!」その名を聞いた瞬間、誰もがその姿に慄いた。
しかし、国王エドモンドは動じず、一喝した。「無礼者、控えよ!」
リザ男は三又槍、千本針を収め、跪き、臣下の礼を取った。
「シールドランド・グリフォンズ副司令、「乱れ突き」リザ男であります。此度は、バークレン国王エドモンド陛下に、お伝えしたき議あり、無礼なれども推参した次第。どうか、奏上をお許しいただきたい。」
その言葉に宮殿内は一時的な静寂が訪れた。リザ男の姿勢には、彼が持つ強い意志と使命感が表れていた。国王エドモンドはリザ男の言葉に静かに耳を傾け、その目には評価するような光が宿っていた。
彼女が心の中で描くバークレン王宮の図は、思考結晶を通じてグリフォンズのメンバーに瞬時に伝達される。この卓越したコミュニケーション能力により、グリフォンズのメンバーは透過の魔法を無効化する「千里眼」の能力を共有することになり、事実上、不意打ちが通用しない状態を作り出していた。
更に、兵員の配置が筒抜けになるため、グリフォンズは複数人による機動的な作戦行動に強力無比な効果を発揮することができた。この一連の情報共有は、グリフォンズにとって絶対的なアドバンテージをもたらし、彼らの行動をより一層効率的なものにしていた。
王座の間への突入作戦は、エレナの空からの支援無くしては成し遂げられなかったであろう。彼女の存在は、グリフォンズメンバーが団結し、一丸となって戦うための大きな力となっていたのだ。
コールサイン「若」リザ男と「リス」リス蔵の王座の間突入を成功させるためには、バークレンの王宮の守備隊を通常の警備位置から遠ざける必要があった。「石頭」バルドの立てたプランは以下の通り
1.「石頭」が正門へ不意打ちを行い、守備隊の意識をできるだけ引き寄せる。
2.「蝶々」が守備隊の流れを逐一全員に報告。それに応じて、「イヌイヌ」が要所に魔法障壁を設置。混乱を増幅させる。
3. それに乗じて「若」、「リス」は王座の間に突入する。
「石頭」は最後に言った。
『騒ぎを起こすだけて無茶はしませんが、全体を把握することは困難です。作成開始時点より、指揮権は「若」に移譲します』
彼の言葉は、リザ男への信頼と、彼に託された責任の大きさを物語っていた。
部屋を出て程なくして、リザ男とリス蔵の二人はバルドの報告どおり、援軍の警備兵の一団に遭遇した。警備兵たちは雄叫びを上げながら剣を振り回して襲い掛かってきたが、リザ男は槍であるはずの「千本針」を鈍器に見立て、上から容赦なく叩き潰した。その力強い一撃に、警備兵たちは恐怖の声をあげて飛び退いた。
その隙に、リス蔵が投げた催涙剤入りのカプセルが次々と警備兵たちに命中し、もんどりうって悶絶する。彼らの頭上には、リザ男の千本針が容赦なく振り下ろされた。
『Fooo、So 容赦ナシ』「イヌイヌ」からの通信が入ると、「若」ことリザ男は断固として答えた。
「このまま突っ込む! 「イヌイヌ」、中央回廊に繋がる他の通路を封鎖。どれぐらいかかる?」
『We are ready. Please GO!』ターロックの返答は即座で、行動を開始する準備ができていることを示していた。
「うむ! 「蝶々」、残敵の報告を怠るな!」リザ男は指示を出し続けた。
『イエス・サー!』エレナの応答は明るく、彼女の偵察と通信が重要な役割を果たしていることを再認識させた。
精密機械と化したグリフォンズの攻撃によって、バークレン王宮は大混乱に陥っていた。
警備兵が宮廷賢者アレンに報告する。「せ、正門より敵襲!その数1!」彼の声は緊張で震えていた。
アレンは怒りを露わにして警備兵を叱咤した。「1?! 何かの間違いだろう!誰が好んで正面から敵が来るものか!落ち着いて報告しろ!」
しかし、警備兵の返答は断固としていた。「ま、間違いありません。ドワーフが一人、斧で正門を破壊しようとしています!」
「ば、バカな!」アレンの明らかな焦りを遮るように、国王エドモンドが冷静かつ断固たる態度で応じた。
「兵たちが言っているのならば間違いは無いのだろう。発見されている敵兵が一人しかいないと言うのならば、それは揺動だ。本命はすでに宮殿内に侵入していると考えよ。」
国王はさらに命じた。「わが子トリスタンと妃イザベラの元の警備兵を増強せよ。それから、我が子の命を救ってくれた聖女殿の警備兵もな。」彼の指示は明確で、宮殿内の安全を何よりも優先するものだった。
その時、警備兵がためらいながら口を開いた。「そ、それが‥」
「ん? まだ何かあるのか?」国王が問うと、警備兵は困惑しながら答えた。「宮殿内の各所に通行を阻害する障壁発生装置が設置されています。解除にしばらく時間が‥」
国王は深くため息をつきながら、重い決断を下した。「うむ、そうか‥。では、先ほど申した、トリスタン、イザベラ、聖女殿を宮殿より直ちに脱出させよ。敵の目標は、この私だ。」
彼の言葉に、警備兵たちは驚きを隠せなかった。「へ、陛下!?」
しかし、エドモンドの決断は揺るがない。「ここにいる者ども、聞いたであろう? すぐに宮殿より脱出せよ!」と彼は再び命じる。その言葉に、警備兵たちからは反抗の声が上がった。「なりませぬ、陛下! 最後まで私もお供します」「私も!」「陛下!」
アレンはこの光景に動揺を隠せなかった。彼はバークレン国王エドモンドのカリスマがこれほどまでに強いとは思ってもみなかった。彼が密かに計画していた、エドモンドを亡き者にするという策略は、警備兵たちの忠誠心の前に霧散したのだ。そして、宮殿下にこれだけの混乱を巻き起こした者たちの手際に、アレンは内心驚嘆していた。その手腕を持つ者たちがいるのならば、彼らは相当な力を持っているに違いない。
「何者だ!」
その場の誰かが叫んだ。中央回廊の向こう側で、警備兵たちが突然の人影に警戒を強めた。
その時、力強い一歩を踏み出した人影が、手にした三又槍を振るって警備兵たちを難なくあしらい、槍先を頭部に向けて鈍器のように振り下ろした。王座の間を守るはずの武勇に優れた警備兵たちも、この人影の前ではまともに相手にされなかった。
人影が近づいてくる。
その姿は緑の鱗で覆われており、その武勇はその場にいたすべての者が知るところだった。
「乱れ突き!!!!!!」その名を聞いた瞬間、誰もがその姿に慄いた。
しかし、国王エドモンドは動じず、一喝した。「無礼者、控えよ!」
リザ男は三又槍、千本針を収め、跪き、臣下の礼を取った。
「シールドランド・グリフォンズ副司令、「乱れ突き」リザ男であります。此度は、バークレン国王エドモンド陛下に、お伝えしたき議あり、無礼なれども推参した次第。どうか、奏上をお許しいただきたい。」
その言葉に宮殿内は一時的な静寂が訪れた。リザ男の姿勢には、彼が持つ強い意志と使命感が表れていた。国王エドモンドはリザ男の言葉に静かに耳を傾け、その目には評価するような光が宿っていた。
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