俺は配管工だけど勇者として世界を救うことになった

チャハーン

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第2章・爆裂旅団結成!

13.空も飛べるはずさ

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「えっ、おいバカ!」

 俺は咄嗟に叫んだ。魔王軍を討伐するための爆弾が、俺たち三人の足元に仕掛けられていて今にも破裂しそうだったからだ。形からすると恐らく閃光か気絶の類だから、きっと死にはしないはずだろう……多分。

「魔法陣が間に合わない!」

 次の瞬間、俺たちは空中に投げ出された。


 遡ること数時間前、俺は金貨目当てに高難易度クエストを受注した。地域一帯を支配するオークの群れを始末する内容だ。ボスの名前は【アイアンジョー】、既に多くの冒険者を葬ったらしい。

 常識的に考えたら初心者冒険者の俺がこんなクエストを受注するのは馬鹿げていると言える。一理あるが俺には強い仲間がいた。勇気を与えてくれる聖剣、風と炎を操る魔法使い、それと強力な爆弾を作るメカニック。

 戦闘は思っていたよりも順調に進んだ。特にこの俺が活躍したみたいで、バッタバッタと敵を薙ぎ倒していったとか。

「しかし……このアリの巣みたいなのはなんなんだ?」

 途中、俺はエルに聞いた。アイアンジョーの住処から徒歩五分くらい離れた場所にそれはあった。
 新しく習得した〈ジオルーク〉を使って探索してみると、地下四十メートルくらいまで広がっている大迷宮のようだ。人……というより魔物の数は百と少し、仮に出てきたらやばい事になるのは間違いない。

「じゃあぶっ飛ばすとしますか、メルル」

「わかったぞ!全部爆破してやる」

 頼もしい限りだ。メルルは爆弾の天才なだけあって、適当な薬草を集めて混ぜただけで即席の爆弾を作り上げてしまった。どうやったのか聞いてみたのだが、固有の魔力が色々とやってくれるらしい。

「この赤いのが衝撃波とか閃光、あと気絶系の爆弾。この黄色いのは貫通型で地下深くまで爆風が浸透する。両方とも踏めば起爆するから細心の注意を払ってくれよな」

「了解した」

 厄介なことに一度起爆すれば連鎖するらしい。間違って踏んだら俺たちは即お陀仏だ。異世界に来てまで死ぬのは御免だ。
 俺とエルは慎重に爆弾を持って、手分けしながら爆弾を穴の各所に設置し始めた。本当に運が良かったのか、地下のモンスターが登ってくる気配は無い。

「メルル、穴に一個ずつ入れたんだがこれで巣を全滅出来そうか?」

「うーん……多分下まで崩壊させることは出来ない。でも上を塞げば敵は殲滅出来る!」

「残酷な処刑だな」

「魔王軍なら仕方ないさ!」

 穴の中にいるのは魔王軍の尖兵だ。工業都市を掌握するため、まずはここを拠点に戦力を整えているのだろう。出来れば和平なりやってみたかったが、そういうのは他の人に任せるべきだ、俺の出る幕ではない。
 俺は兵士として、冒険者として目の前の敵を潰すだけだ。

「設置し終わったわ!」

「よし、急いでここから撤退しよう。下のやつらも動き始めてる」

「えっ!早く引っ張りあげて!」

「飛べばいいだろエル!」

「魔力使いたくないわよ~!」

 駄々をこねるエルを引っ張りあげると俺はメルルに合図した。メルルは手投げ弾のような物を構えると、全力で穴に向かって投げた。手投げ弾はしばらく穴の縁を転がり、ルーレットの球のように落ちていった。

 刹那、魔物が顔を出して俺たちと目が合った。

 やばい、来る。と思った瞬間、禍々しい見た目の魔物は爆風や炎と共に消えた。穴に引っ込んだというより、消し飛ばされたの方が正しい。

「二人とも伏せろ!」

「いやそれより逃げよう!」

「あっ」

 エルの素っ頓狂な声が聞こえた。彼女の視線の先、足元を見ると赤の爆弾が落ちて今にも爆発しそうだった。これは終わったな。

「えっ、おいバカ──」

 俺たちは空を飛んだ。とてもいい夕焼けで、このまま空を飛んでやりたい気分だった。しかし空なんて飛べるはずもなく、そのまま俺たちは地面に衝突して気を失った。

 * * *

「ったく、お前がちゃんと爆弾を設置してたらこんなことにはならなかったはずなのにな」

「違うわよ!私はちゃんと設置したけど、あの魔物が投げたのよ」

 言われてみればそうかもしれないが、もっとちゃんと固定してたらこうはならなかったかもしれない。しかしまぁ……楽しかったから今回はよしとしよう。
 俺は帰り道、報酬について話した。

「なぁ、二人とも……今思ったんだけど、魔物を倒した証拠とかってあったか?」

「ないね」

「ないわ」

 そりゃそうか、全部吹っ飛んじまったからな。
 ギルドの職員を連れてくればなんとかしてくれるとは思うが。まあそれはいいとしよう。アイアンジョーの首輪はちゃんと持ってきたし。

「報酬は四百セラだったっけか、結構いい感じだな」

「命を懸けた分にしては安いかもね」

「私も魔力たくさん使ったわよ」

 いや使ってないだろ、と俺は思わず言った。が、どうやら俺たち三人が吹っ飛んだ際、緊急で防御魔法を展開してくれたらしい。落下死しなかったのもそれのおかげだとか。

「今日は俺が奢ろう」

「本当?アタシ肉食べたい」

「じゃあ私は特大ステーキで」

 そんな食べたら太るぞ、と言うとエルは杖を振り回して俺の背中を叩いた。杖はめちゃくちゃに堅い木の枝を使っていたので、背骨が折れそうなくらいには痛かった。
 エルは革製の財布を開くと、中に入った小銭を数え始めた。メルルも釣られて財布を開くが中身は空だ。

「なんだなんだ、お前ら金欠か?俺はいつも財布の中に──」

 ほとんど言葉が出かけたところで俺は詰まった。財布には三セラ、日本円に直すと三千円しか入っていなかった。これはしまったな、と思いながら俺は歩くペースを早めた。

「財布の中に……なんだっけ?」

「うるせえ、エルもほとんどないだろ」

 うぐっ、と呟くとエルは下を向きながら歩き続ける。全員合わせて十セラもいかないだろう。もしもギルドから報酬が出なかったら俺たちは即物乞いになってしまう。

「ふっ……」

「はっはっはっ!」

 俺とエルはどうしようもなくて笑い始めた。メルルも釣られて豪快に笑い出す。エルは薄手の手袋で口元を抑えながら笑い、メルルは地面を転げまわった。
 貧乏だけど意外と楽しいものだ。

「さてと、物乞いの道でも目指すか」

「アタシは死んでも嫌だぞ」
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