愛されて飼われたいSubのお話。【本編完結済】

めんだこ

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「志也、そろそろ出かけようか。」

器に入っていた粥を全て食べきったあと、ズボンも履くように促された。

「ど、こ行くんですか。」
「....志也を元気にするための場所だよ。」

にこ、と慧さんは笑って答えた。元気にするための場所...?テーマパークとかかな?とワクワクしながら車に乗せられ着いた場所は....

 sub専門の診療所だった。


どうしてここに?と尋ねようとしたが抱っこされて手持ち無沙汰になった自分の手首を見つめて分かった。

   僕は、舌だけじゃない。身体中が傷だらけだったんだ。手首には手錠で縛られたあとがくっきり着いているし、ちょっと前に殴られた腹部も思い出すと痛いような、気がする。

   診療所に来るなり慧さんは僕を診察室に1人きりにした。「すぐにお医者さんが来るからここで待っていて。」と言われたが、椅子に座ること自体慣れていない僕は床に直で座って待っていた。


   しばらくすると、診察室に入った時の扉とは反対方向にあった扉が開いて、背が低い、白衣を着た男の人が入ってきた。sub、だろうか。首に細く赤い」首輪が巻き付けられている。カルテをじっと見ていて、こちらは視界に入っていない様子だ。

「こんにちは、えーと志也くんだね、、ってうわ!」

「.....?」


入ってきた男の人は、僕を見るなりすごく驚いた顔で後ずさった。なにか、おかしかったのか。

「うーん、えーと志也、くんで合ってるかな?」

こくり、と頷くとその人はとりあえず椅子に座ろっか、と僕に手を差し出す。

「あー、、うんうん、なるほど。慧くんの言ってたことがちょっとわかったよ。君はご主人様のいることが自然体なんだよね。」

「....。」

よく分からない。目の前の人はわざとらしく指先を顎に当てて、考え込むような仕草をしている。慧さんがなにか言っていたのだろうか。

「あ、僕はここの診療所にいる医者の1人で、奈津ナツと言います。診察するから、ちょっと腕捲るね。」

そう言われてそっと腕を掴まれる。その瞬間、司馬にいつも腕を捻り上げられて拳を振るわれていた事はフラッシュバックする。

   怖くなって、逃げないといけないと思って掴まれた腕を振り払って扉のすぐそばまで逃げる。足はほとんど使い物にならないから、走って逃げたというか、犬や猫などのような四足歩行になってしまった。

「うーん、怖がられちゃったか...」


   苦笑いをこぼしたナツさんは、僕の視線に合うように近づいてしゃがみこむ。


「ちょっとまっててね。さすがにいきなりは怖かったね、ごめん。」


そう言い残してナツさんは扉を開けて診察室を出ていった。すぐにナツさんが、「慧くーん」と呼ぶ声が聞こえる。


ガラリと後ろの扉が開いたかと思ったら、慧さんの姿がドアップで映される。


「志也、怖かったね。大丈夫、後は僕も一緒にいるからね。」


そう言って慧さんは僕の手を引き、椅子のそばまで移動させる。

「ナツ、クッションとかあるかな。」

「あるよ、持ってくるね。」

しばらくすると、僕の足とゆかの間にフカフカとしたクッションが敷かれた。ずっと小屋で過ごしていた時に毎日使っていたブランケットとは全く違うサラサラふわふわの触り心地を不思議に思い、ずっとそのクッションを撫でていた。




◇◇◇



「ナツ、志也のこと、どう思う?」

「どうって、、そりゃあ健康状態は地の底で最悪だけど、、、慧くんが聞きたいのはそっちじゃないでしょ?」

撫でられて心地よくなっている間、ナツさんと慧さんはなにかを話している様子だった。2人とも顔が険しいから、どうしたのかと思って慧さんの方を見あげるとふわっと足が浮いて腕に抱きしめられた。

まるで安心していい、と言わんばかりのその行動に嬉しくなって、慧さんの胸にすりすりと顔を擦り付けた。


「うーん、まあ、慧くんが責任もって飼えるって言うんなら、僕は別に問題じゃないと思ってるよ。無理に人馴れさせる必要も無いし。」

「そうだなあ、でも、その前にやらなきゃいけないことが結構ありそうだ。まあ、飼うつもりではあるけど。」

「ありゃあ、、訳ありっぽいもんねぇ、、でも、志也くんも慧くんに懐いてるみたいだし、いいんじゃない?」

「はは、ありがとう。じゃあ、今日は薬だけ処方してもらうよ。」

「うん、お気をつけてね~。」


なんだか、体が揺れているような気がする。目をうっすら開くと僕はもう既に車の中に戻っていた。どうやらすっかり寝てしまっていたようだ。

隣を見ると、たくましい手でハンドルを握る慧さんの姿があった。僕がじっと見ていることに気がついたのか、慧さんは気まぐれに僕の頭を撫でてくれて。

   なんだかずっと、胸がぽかぽかしていた。
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