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家に着くなり、慧さんは迷いもなく僕を腕に抱いて移動し始める。少し照れくさいけど、どうせ今降ろされても1人で歩くことはできないような気がするし。何も言わずに慧さんの裾にしがみついていた。
リビングに入ると、僕はふわふわのカーペッドの上に降ろされる。「少しまっていてね」と言われて、僕はお座りの体制のまま辺りを見回した。
診療所に行く前はあまり気にならなかったけど、改めて見るとすごく広い部屋だ。僕はずっと、体を丸めてやっと入るぐらいの小さな小さな小屋に居たから違和感が拭えない。僕の世界は、あの小屋と雑音の混じるクラブしか知らなかった。
クラブには僕以外のSubがいることもあったが、そのことを考慮したカーペットやラグなどがあるはずもなく、ほとんどのSubは冷たい床に直に座らされていた。
ここに、座ってていいのかな。
だからこそ、そんな疑問が浮かぶ。だって今までこんな質の良さそうなカーペットの上に居たことなんてなかったんだ。怒られてしまいそうな気がして、汚してしまいそうな気がして僕はそっとカーペットの無い所まで移動した。
温もりがなくなり、床の冷たい温度を感じた。少し寒いけど、慧さんが着させてくれたセーターのおかげで体自体は暖かい。こんな冷たさぐらいなんて事ない。それどころか、これで怒られないとほっとしてさえいた。
「志也、お待たせ。水持ってきたから、この薬、、って志也?」
慧さんは、僕の足元を見て、驚いたように足を止めた。
その瞬間、鋭いGlareが慧さんから放たれる。
「...っ!」
Glareを出したまま、慧さんが1歩1歩と僕の方に近づいてくる。久々の強いGlareに、僕の心臓はどくどくと痛いほど鳴っていた。
「志也、僕はさっきどこで待ってて、って言ったのかな?」
.....怒ってる。
声自体は柔らかいのだが、溢れ出る慧さんのGlareが、僕に対して怒っているのだと、ひしひしと感じさせる。
だが、なんで怒っているのか僕はまだ分からないでいた。だから、頭の中は恐怖はありつつも、ハテナマークでいっぱいだ。そんな僕の様子を見てさらに機嫌を損ねたのか、慧さんは無理やり僕の口を開き、舌の傷口に錠剤を押し当てた。
「い"っ、!あ"ぅ、、」
「志也、聞こえなかった?僕はどこで待てと言ったの?」
痛さと薬の苦さに涙目になってしまう。それでも言わなければ、慧さんは薬を押し付ける手を止めるつもりは無さそうだ。
「そ、そこのカーペットのうえ、れす......!」
「うん、そうだよね。だったらどうしてそんな所に座ってるの?」
「よ、汚しちゃう、か、ら、」
「......あぁ、なるほどね。でも僕は汚れることを嫌だと一言でも言ったかい?」
舌が痛くて喋ることが辛くって、僕はぶんぶんと首を振る。
「じゃあ、志也は次からどうするべきかな?」
「けい、しゃんのいう、ことききます、、!!」
言い終えると、慧さんはふっと笑ってGlareが急激に緩まった。水の入ったコップを持たされ、飲んで、と促される。
「は、ぃ、、」
まだ痛みで涙目になるが、それ以上に叱られたことに対しての涙が止まらなかった。ポロポロとこぼれ落ちてしまって、視界がぼんやりと滲む。だめだ、止めなきゃ、と思うほど悲しくなって仕方がない。
水を飲み干して、ちらりと慧さんの表情を伺う。
「おいで、ご褒美をあげよう。」
「ぇ、、、?」
てっきりまだ怒っているものだと思っていた僕は、急に甘くなったGlareと声色にびっくりする。慧さんは僕の体をひょいと持ち上げ、膝の上に乗せられる。安心できる場所に戻れたような感覚で、元々止まらなかった僕の涙がさらに流れ出てしまう。
「うぇ、っうう、」
「よしよし、大丈夫だよ。よく頑張ったね。」
汚い泣き声をあげる僕を嫌がる様子もなく、優しい手つきで撫でてくれる。そのまま慧さんは僕の顎の下をするりと撫で、必然的に上を向かされる。
すると慧さんの顔が近づいてきて、ちゅ、と音を立てて僕の唇に暖かいものがあたる。
「.....へ..?」
「かわいいね、志也。」
何が起きたか分からない。未だに近い慧さんの顔の瞳をじっと見つめる。
、、今、キスされた..?
そう、自覚すると共に顔が熱くなる感覚がした。慧さんは僕の目尻や首元に何度もキスを落とす。僕はまた、さっきとは違う意味で涙目になる。
「っや、!」
僕は恥ずかしさが頂点に達して、慧さんの体を精一杯押しのけた。だけど力が上手く入らなくてただ慧さんの胸に手を当てただけ、みたいになってしまった。
「志也、どうして?」
「え、、あ、ぼく、きたない、、から、、」
口に出してやっと自覚した。そう、僕の体はとっても汚いのだ。司馬のパートナーであった時はろくにお風呂にも入れてもらえていなかったし、そもそも僕の唯一の居場所である小屋ですら煤けて見るに耐えなかったのだから。
「うーん、別に汚いとは思ってないんだけど、、。まあ、体がベタベタしたままじゃ嫌だよね。先にお風呂に入ろうか。」
そう言って慧さんは軽々と僕を持ち上げる。
...慧さんって僕のことよく抱っこしてくれるけど、すごく力が強いのかな?鍛えてるとか..?
ついさっきまで感じていた恐怖は完全に姿を消して、腕に揺られる間、ぼーっとそんなことを考えていた。
リビングに入ると、僕はふわふわのカーペッドの上に降ろされる。「少しまっていてね」と言われて、僕はお座りの体制のまま辺りを見回した。
診療所に行く前はあまり気にならなかったけど、改めて見るとすごく広い部屋だ。僕はずっと、体を丸めてやっと入るぐらいの小さな小さな小屋に居たから違和感が拭えない。僕の世界は、あの小屋と雑音の混じるクラブしか知らなかった。
クラブには僕以外のSubがいることもあったが、そのことを考慮したカーペットやラグなどがあるはずもなく、ほとんどのSubは冷たい床に直に座らされていた。
ここに、座ってていいのかな。
だからこそ、そんな疑問が浮かぶ。だって今までこんな質の良さそうなカーペットの上に居たことなんてなかったんだ。怒られてしまいそうな気がして、汚してしまいそうな気がして僕はそっとカーペットの無い所まで移動した。
温もりがなくなり、床の冷たい温度を感じた。少し寒いけど、慧さんが着させてくれたセーターのおかげで体自体は暖かい。こんな冷たさぐらいなんて事ない。それどころか、これで怒られないとほっとしてさえいた。
「志也、お待たせ。水持ってきたから、この薬、、って志也?」
慧さんは、僕の足元を見て、驚いたように足を止めた。
その瞬間、鋭いGlareが慧さんから放たれる。
「...っ!」
Glareを出したまま、慧さんが1歩1歩と僕の方に近づいてくる。久々の強いGlareに、僕の心臓はどくどくと痛いほど鳴っていた。
「志也、僕はさっきどこで待ってて、って言ったのかな?」
.....怒ってる。
声自体は柔らかいのだが、溢れ出る慧さんのGlareが、僕に対して怒っているのだと、ひしひしと感じさせる。
だが、なんで怒っているのか僕はまだ分からないでいた。だから、頭の中は恐怖はありつつも、ハテナマークでいっぱいだ。そんな僕の様子を見てさらに機嫌を損ねたのか、慧さんは無理やり僕の口を開き、舌の傷口に錠剤を押し当てた。
「い"っ、!あ"ぅ、、」
「志也、聞こえなかった?僕はどこで待てと言ったの?」
痛さと薬の苦さに涙目になってしまう。それでも言わなければ、慧さんは薬を押し付ける手を止めるつもりは無さそうだ。
「そ、そこのカーペットのうえ、れす......!」
「うん、そうだよね。だったらどうしてそんな所に座ってるの?」
「よ、汚しちゃう、か、ら、」
「......あぁ、なるほどね。でも僕は汚れることを嫌だと一言でも言ったかい?」
舌が痛くて喋ることが辛くって、僕はぶんぶんと首を振る。
「じゃあ、志也は次からどうするべきかな?」
「けい、しゃんのいう、ことききます、、!!」
言い終えると、慧さんはふっと笑ってGlareが急激に緩まった。水の入ったコップを持たされ、飲んで、と促される。
「は、ぃ、、」
まだ痛みで涙目になるが、それ以上に叱られたことに対しての涙が止まらなかった。ポロポロとこぼれ落ちてしまって、視界がぼんやりと滲む。だめだ、止めなきゃ、と思うほど悲しくなって仕方がない。
水を飲み干して、ちらりと慧さんの表情を伺う。
「おいで、ご褒美をあげよう。」
「ぇ、、、?」
てっきりまだ怒っているものだと思っていた僕は、急に甘くなったGlareと声色にびっくりする。慧さんは僕の体をひょいと持ち上げ、膝の上に乗せられる。安心できる場所に戻れたような感覚で、元々止まらなかった僕の涙がさらに流れ出てしまう。
「うぇ、っうう、」
「よしよし、大丈夫だよ。よく頑張ったね。」
汚い泣き声をあげる僕を嫌がる様子もなく、優しい手つきで撫でてくれる。そのまま慧さんは僕の顎の下をするりと撫で、必然的に上を向かされる。
すると慧さんの顔が近づいてきて、ちゅ、と音を立てて僕の唇に暖かいものがあたる。
「.....へ..?」
「かわいいね、志也。」
何が起きたか分からない。未だに近い慧さんの顔の瞳をじっと見つめる。
、、今、キスされた..?
そう、自覚すると共に顔が熱くなる感覚がした。慧さんは僕の目尻や首元に何度もキスを落とす。僕はまた、さっきとは違う意味で涙目になる。
「っや、!」
僕は恥ずかしさが頂点に達して、慧さんの体を精一杯押しのけた。だけど力が上手く入らなくてただ慧さんの胸に手を当てただけ、みたいになってしまった。
「志也、どうして?」
「え、、あ、ぼく、きたない、、から、、」
口に出してやっと自覚した。そう、僕の体はとっても汚いのだ。司馬のパートナーであった時はろくにお風呂にも入れてもらえていなかったし、そもそも僕の唯一の居場所である小屋ですら煤けて見るに耐えなかったのだから。
「うーん、別に汚いとは思ってないんだけど、、。まあ、体がベタベタしたままじゃ嫌だよね。先にお風呂に入ろうか。」
そう言って慧さんは軽々と僕を持ち上げる。
...慧さんって僕のことよく抱っこしてくれるけど、すごく力が強いのかな?鍛えてるとか..?
ついさっきまで感じていた恐怖は完全に姿を消して、腕に揺られる間、ぼーっとそんなことを考えていた。
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