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「じゃ、行くか。」
ユーリが名残惜しそうに部屋を出たあと、冬は機嫌良さそうに立ち上がる。
「あぁ。談話室で受け取りを行うらしい。」
フレデリクは扉を開き、こっちだ。と促す。
「案内の件、問題なさそうだったか?」
「問題ない。今日はこのまま非番になった。」
「そうか。色々案内頼むわ。」
冬は廊下の窓から小さく見える城下町を眺める。
「ここに来てから教会とここしか見てなくて目が疲れたわ。無駄にキラキラしてんだもん。」
そう呟く冬を、フレデリクは少し可愛らしく感じて微笑む。
「あと少しの辛抱だな。」
ここだ。と、フレデリクがたどり着いた先のドアを開ければ、お待ちしておりましたと祭司が迎えた。
冬が席に着くと、早速祭司は説明をはじめる。
「こちらが身分証となります。身分は平民。生年月日は現在のご年齢から逆算して879年の12月1日。苗字はウーラノス。出身地、家族構成は無しと記載しましたが、こちらは皆任意で登録するものですので問題ありません。今回は首にかける形に致しましたが、身につけていれば何でも構いません。」
「ん。分かった。」
冬はそれを受け取り首にかける。
「次にこちら、金額は50万ルナとなります。こちらは一般平均の宿代と食費+雑費で計算いたしました。」
祭司は袋を冬に渡す。
中を確認すれば金色の硬貨が入っている。1枚1万ルナだろう。
フレデリクの反応からするに妥当な金額で間違いないようだ。
「最後がこちら、御要望のあったお召し物を入れておきました。一般的に持たれるカバンなのでお使いください。」
「ご親切にどーもな。」
カバンを受け取り、こちらも中身を確認すれば、シャツとパンツが何組か入れられていた。
「こちらからは以上になります。貴方様の旅路に幸運がありますようお祈りしております。」
「いろいろと世話になったな。じゃ、行くわ。」
冬はカバンに金を詰め、それだけ言うと部屋を出た。
「じゃ、案内頼むわ。フレデリク。」
「あぁ。任せておけ。」
二人は街に向かい歩き始める。
「にしても新しい苗字って慣れねえな。ウーラノスか。」
「ウーラノスは空という意味がある。祭司もなかなかセンスがあったようだな。フユという名にも意味があるのか?」
「ん?あぁそうか。向こうの世界の言葉はもうこの名前だけになっちまったな。」
個人の名詞だからだろうか、話す言語がこちらのものになっても、フユという自分の名の発音だけは変わらなかった。
試しに季節の冬を思い浮かべて言葉を発すれば、それはこちらの世界の言語となって発音された。
「こっちの世界の'冬'って意味だ。やべ、頭おかしくなりそう。」
冬は日本語とこちらの言葉が曖昧になり、深く考えるのはやめにした。
「なるほど。合わせれば冬の空か。良い名だな。」
「冬の空ねぇ。」
そんな他愛もない話をしながらしばらく歩けば、風景は段々と賑やかになる。
その町並みはヨーロッパににていた。
白い石像の立つ噴水の周りには人が集まり、石畳の道には、所狭しと屋台が出ている。
「随分賑やかだな。」
「おそらく今日、神子様の正式な発表がされる。皆お祭り騒ぎだ。」
「あぁ。なるほどね。」
「まずはどうする?宿を探すか、欲しいものがあれば買い出しに行くか。」
「宿だな。ギルドにそこそこ近くて、なるべく一般的なものがいい。ここの生活水準を知りたいからな。」
「わかった。ギルドへは昨日連絡をしておいた。何時でもいいそうだから宿を確保したら顔を出すか。」
「ん。それがいい。」
「一般的な宿か……ギルドの近くとなると2軒ほどあるな。」
「先に着く方でいい。」
「ではこっちの道だ。ここから宿への通りに店も揃っていて分かりやすい。」
フレデリクは噴水の広場から四方に広がる道のひとつを指さす。
「わかった。」
歩き出すフレデリクに、冬は大人しく着いて行った。
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