どちらの世界にしろ変わらないが、こっちの方が性に合ってる気もする

隠ノ茸

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ネテロスの言葉を守り、懸命に目の前の料理に向かう冬を観察しながら、ネテロスは妙な高揚感を覚えた。

 ……誰にもしっぽを振らない狂犬に餌付けしている気分だ。
 そう思いながら酒を煽る。

 冬はしばらく黙々と食べ続け、疲れたというように息をついた。

「腹いっぱいになってきたわ。」

「そうか。どれが美味かった?」

「んー。これ?」

 冬は少し不安そうに目の前の皿を指さす。
 肉を焼いただけのシンプルな料理だ。

「なんか固くて美味かった。食った感が強ぇ。」

 そう付け加えた冬に、ネテロスは笑い声をあげる。

「はは!そうかそうか。よかったな。」

 なんだか酷く子供扱いされてるようで、冬は少しぶっきらぼうに、うん。とだけ答えた。

「そろそろ行くか。」

 大方の料理を食べ終え、ネテロスは何杯目か分からない酒を飲み干してそう立ち上がる。
 冬もそれに続いた。

 会計を終えて店を出る。

「ごちそうさま。」

「ん。明日はどうする?」

「あー。バジリスクの討伐が残ってればそれ行く予定。」

「働きモンだなぁ。早く終わったらまた部屋に来い。仕立て屋連れてってやる。あと連絡用魔法石な。」

「……わかった。」

 気付けば空は真っ暗になっていた。
 繁華街をぬけ、噴水のある広場まで戻ってきた。

「じゃ、こっからは1人で帰れるか?」

「あぁ。帰れる。」

「また明日な。気をつけろよ…なんて言葉必要無さそうだな。」

 可笑しそうに笑いタバコに火をつけるネテロス。

「ん。じゃ、今日は世話んなったわ。」

 お互い軽く手を上げ帰路につく。
 街灯に照らされほのかにオレンジ色に染まる石畳を歩きながら、冬は伸びをした。

 ……まさか食事の仕方を教えられるとはな。
 向こうの世界でも誰も教えてくれなかった常識を、まさか異世界で教えられる事になるとは思わなかった。

 冬はクスリと笑い、辿り着いた宿へ入る。
 シャワーを浴びてベットへ入る。

 ……この世界は良い奴が多いな。

 昼の戦いのアドレナリンのせいか、滅多に飲まない酒を飲んだせいか、冬ははじめてそんな事を考えながら、ストンと眠りに落ちた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 朝。冬はスッキリと目覚めて起き上がる。

 やっぱ身体を動かした次の日は調子いいな。

 そう思いながら時計を確認すれば11時。
 んー。と伸びをしギルドへ向かう支度をする。

 魔法で綺麗になった服を身につけ、宿を後にする。

 昨日より早い時間だからか、ギルド内は少し静かだ。

 掲示板を見れば、目当ての依頼書はまだそこに貼られていた。
 昨日とおなじ要領で受付を済ませ、馬車に乗り込む。

 今回の現場は馬車で1時間ほどらしい。
 車内でもう一度依頼書を確認する。

 バジリスク一体の討伐。

 図鑑によれば猛毒の牙を持ち、噛まれれば最悪命を落とすらしい。同じく猛毒のブレスを吐き、こちらは吸い込むだけで小動物は即死と記されていた。
 しかし毒を持つ魔物の中では中間あたりの強さのようだ。

 光魔法がどれだけの浄化力か試すには丁度いい。報酬金の額も申し分ない。

 依頼書に描かれた蛇と鶏の中間のような姿絵を見ながら、そんな事を考える。

 しばらくして停車した場所は、鬱蒼とした湿原のような場所だった。
 少し離れた場所に馬車を待たせ、冬はしっかりとした足取りで湿原へ入っていった。
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