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第三話 日の出にて
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「何を探しておる?」
神さまは、道に這いつくばっている人に尋ねた。
「いやあ、何か探しているわけでは無いんです。これが私のライフスタイルなんです」
神さまは感心した。それは神さまが知るかぎり一番正しい形だったから。その事を這いつくばっている人に伝えた。
「いやいや、そんな柄じゃないです。若い頃はスクッと立って胸を張っていたものです。モテたくて毎朝練習をした。走るのも跳ぶのもこの辺りじゃ一番になった」
ちょうど朝日がのぼりだし、辺りを白く映し出す。
「そうして村から町へ行った。町には私くらいの人間が何十人といた。当然誰も私に関心を持たないし、ましてやモテることなどなかった。急にやって来たことがバカバカしくなった。脳みそが少しもウキウキしない。練習しても、まわりも練習するから差は縮まらない。」
這いつくばっている人は、どうやら雑草を抜いているらしい。動く手は止めずに話を続けた。
「しばらくは朝起きるのも辛い日々だった。ある日フッと空を飛んだらどうだろう!と思いついた。急に血が体中を駆けめぐり、脳みそが脈を打ち始めた。景色に色が付き生々しく映った。これだ!私は走ることに加えて跳ぶことも、それなりにできた。ずば抜けてはいないが、両方ともやれる者は多くなかった。これも今までの練習の賜物だ。やるしかない」
「で、どうだった?」
神さまが合いの手のように尋ねた。
「ははは、ものの見事に墜落しました。助走も踏み切りもまずまずのものでしたが、覚悟が足りなかったのかもしれません。丘の下、前方数百メートル先にいる観衆のずっと手前に、ほぼ直角に墜落しました。全身打撲と骨折の後遺症で這いつくばることしかできなくなってしまったんです。それがこの様です」
這いつくばっている人は、晴れ晴れとした顔をしていた。
「何十年も何故こんな事になってしまったのか?悶々と考えてきました。天才でも無い自分が何故飛べると思ったのか?死に場所でも探していたのか?はっきりした答えはわかりません。しかしあの時、私の心を惑わした事がひとつありました。あの日私は正装用のスカートの下に下着カバーをつけ忘れていました。つまり下から覗かれると下着が丸出しでした。しかもあの日の朝に着けた下着が赤地にピンクのドット柄だったのです。あれは私の趣味で、気分を上げたい時に密かに着けていたものでした。その日もそんな気分ではあったのですが、着慣れないスカートだったのでカバーをつけ忘れてしまったのです。その事は助走中に気づいてしまいました。かなりのスピードがのっていましたから、もはや止める選択肢はありませんでした。と同時にこんな事も思いました。これを飛べたら、また次に何かやらなくちゃならないのかな?と。覚えているのはここまでです。気づいたら地面にうずくまっていたという訳です。パンツをさらけだして」
神さまはいなくなっていた。這いつくばっている人は何事もなかったように、雑草を抜き続けている。日の出はもうすぐ終わる、聖者の美しい告白を残して。
神さまは、道に這いつくばっている人に尋ねた。
「いやあ、何か探しているわけでは無いんです。これが私のライフスタイルなんです」
神さまは感心した。それは神さまが知るかぎり一番正しい形だったから。その事を這いつくばっている人に伝えた。
「いやいや、そんな柄じゃないです。若い頃はスクッと立って胸を張っていたものです。モテたくて毎朝練習をした。走るのも跳ぶのもこの辺りじゃ一番になった」
ちょうど朝日がのぼりだし、辺りを白く映し出す。
「そうして村から町へ行った。町には私くらいの人間が何十人といた。当然誰も私に関心を持たないし、ましてやモテることなどなかった。急にやって来たことがバカバカしくなった。脳みそが少しもウキウキしない。練習しても、まわりも練習するから差は縮まらない。」
這いつくばっている人は、どうやら雑草を抜いているらしい。動く手は止めずに話を続けた。
「しばらくは朝起きるのも辛い日々だった。ある日フッと空を飛んだらどうだろう!と思いついた。急に血が体中を駆けめぐり、脳みそが脈を打ち始めた。景色に色が付き生々しく映った。これだ!私は走ることに加えて跳ぶことも、それなりにできた。ずば抜けてはいないが、両方ともやれる者は多くなかった。これも今までの練習の賜物だ。やるしかない」
「で、どうだった?」
神さまが合いの手のように尋ねた。
「ははは、ものの見事に墜落しました。助走も踏み切りもまずまずのものでしたが、覚悟が足りなかったのかもしれません。丘の下、前方数百メートル先にいる観衆のずっと手前に、ほぼ直角に墜落しました。全身打撲と骨折の後遺症で這いつくばることしかできなくなってしまったんです。それがこの様です」
這いつくばっている人は、晴れ晴れとした顔をしていた。
「何十年も何故こんな事になってしまったのか?悶々と考えてきました。天才でも無い自分が何故飛べると思ったのか?死に場所でも探していたのか?はっきりした答えはわかりません。しかしあの時、私の心を惑わした事がひとつありました。あの日私は正装用のスカートの下に下着カバーをつけ忘れていました。つまり下から覗かれると下着が丸出しでした。しかもあの日の朝に着けた下着が赤地にピンクのドット柄だったのです。あれは私の趣味で、気分を上げたい時に密かに着けていたものでした。その日もそんな気分ではあったのですが、着慣れないスカートだったのでカバーをつけ忘れてしまったのです。その事は助走中に気づいてしまいました。かなりのスピードがのっていましたから、もはや止める選択肢はありませんでした。と同時にこんな事も思いました。これを飛べたら、また次に何かやらなくちゃならないのかな?と。覚えているのはここまでです。気づいたら地面にうずくまっていたという訳です。パンツをさらけだして」
神さまはいなくなっていた。這いつくばっている人は何事もなかったように、雑草を抜き続けている。日の出はもうすぐ終わる、聖者の美しい告白を残して。
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