君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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  今日は初めての学校がない日。そう、休日である。普通なら学校の勉強以外の稽古事がこういった休日にあったりするけど、今日僕は入っていないので時間がたっぷりとある。その時間を有意義に使いたく、あれこれとしたいことは考えていたが、数日前僕の寝ている間にリュークさんに会ったという話を聞いて思い出したというか、心に決めたことがある。それは庭園のガゼボにあった女神の像を見に行くことだ。前に行ったときは、ほんのちょっと見ただけで気絶しちゃったし、すごく綺麗だったなという記憶はあるけどなんだかあやふやだから、もう一回見に行きたい。時間もいっぱいあるしね。まさか今日もまたリュークさんがあそこにいるわけでもないだろうし、ちょっと女神の像を見に行くだけならみんなと一緒に行かなくても大丈夫なんじゃないのかな?

 とは言いつつ、前回みたいに2人からお説教を受けるのが怖いので隣の部屋のシンに一応断りを入れて僕は出かける。








 森は相変わらず暗いし、前の時に比べてかなり迷ったけれどなんとかガゼボにたどり着く。外から中を覗いてみるけど、どうやらリュークさんはおろか、誰もいないっぽい。これで心置きなく女神の像を見ることができる!!僕は慎重にガゼボの中に入っていった。

 
























 ......不思議だなぁ。この女神の像、大おばあ様にそっくりだ。



 僕の大おばあ様、つまりルーナ=シューベルトは英雄と呼ばれていたが、同時に女神とも呼ばれていた。その理由は彼女の美しさや慈悲深い性格にもあるが、一番は魔術上の特性にある。





 大おばあ様の扱う魔術属性は主に光だった。特に月との相性が良かったらしく満月の光に当たると魔力が呼応して白に近い金色の髪や琥珀色の眼が光り輝き、その上どういう原理かいまだ解明されていないが、普段の何倍もの魔力を引き出せていたようだ。そのあまりにも神秘的な姿から人々は大おばあ様のことを月の光の加護を受けた女神だと称え、今でも伝説として語り継がれている。それにあやかり、シューベルト家の家紋には満月の絵が描かれている。
                              
 

 この話を思い出すたびに僕はそんな月の光に呪われているんだな…としみじみ思う。やっぱり大おばあ様はすごい人だ…。もし大おばあ様が今も生きていたら、僕の呪いも解けてたのかな、なんて何回考えたことだろうか。










 呪いか…。もしかしたらリュークさんなら解けたりしないだろうか…。魔力も他と比べ物にならないほどあるし、闇属性の魔術を扱えるから呪いの構造にも詳しいと思うし…。リュークさん…、怖いけど悪い人ではなさそうなんだよね。前にここに来て倒れちゃった時も保健室に運んでくれたし、リュークさんから他の人達みたいにあからさまな敵意をもたれたこともないし、「呪いを解いてください!」って頼んだら無表情で解いてくれそうだし…。「僕の呪いを解くことってできますか?」って今度会ったら聞いてみようかな。いやリュークさんでも無理かな…?それに、まずは気絶しないで話せるようにならないと。あれ、そういえばこの間廊下で見かけたときは気絶しなかったんだっけ。そもそも気絶する原因って何なんだろう。他の人が気絶したっていう話も聞かないし、なんで僕だけなんだろう。いっつもリュークさんの目真っ黒だなぁで気を失っちゃうん………。





 ん?…目?もしかして目を見たら気絶しちゃうとか…?まさか、そんな…。確かに毎回気絶する前の最後の記憶リュークさんの目だったけど…。あ、もしそうなら後ろから話しかけられた時も、姿を見かけた時も気絶をしなかったことに説明ができるな。あれ、でも入学式の日は眩暈しただけだったよな…。じゃあ別に関係ないのか?あーだめだ。考えれば考えるほど分からなくなる。もういいや女神像見よ。







 女神像のほうを見ようとした瞬間、背中にぞわぞわとした感覚が走る。嫌な予感…。後ろを振り向いて確認したいけれど、何かが終わりそうで何もできない。
 なんで…?今日は来ないと思ったのに!



 とりあえずなにも見ずその場を去ろうとするけど、「おい。」と声をかけられ、立ち止まってしまう。

「そこで、何をしている。」視界の端で黒いローブが翻っているのが映る。
「いや…その…。」と言いながら僕はゆっくり振り向く。さっきの考えを思いついたからか、向き合っても目を合わせられないでいる。でも、実際近くても気を失っていないわけだから、あながち僕の考え間違っていないのかもしれない。

「もしかして、女神の像か?」
「へ?あ、あぁ!はい!」
「前も来た時に触れようとしていたよな。なんかあるのか?」
 あの時起きてたんですね…。
「き、きれいだなぁと思って。」
「そうだな。お前のひいおばあさんに似てる。」
「大おばあ様を知っているんですか?」
「もちろん。小さいころから話をよく聞かされていた。」リュークさんも大おばあ様の伝説とか聞かされていたのかな?なんか、意外だな…。

「そうなんですね…。」
「ああ。」
「……。」
「……。」



 ………話が、びっくりするほど続かない…。話しやすそうな共通の話題なんて僕の頭では見つからないし、こんな時リーンがいればゴムマリのごとく会話が弾むのにな。いやさすがのリーンもリュークさん相手じゃ無理か...?リュークさんもなんだか居心地が悪そうで、何かを話そうとしている気配がする。リュークさんも困ったりするんだな…。






「リュークさんは何しに来たんですか?」意を決し苦し紛れだが、僕から話しかけてみる。
「俺か?俺はその…呼ばれ、いや、散歩だ。」
「散歩…。ここにはよく来るんですか?」
「まぁまぁだな。こんなところ誰も来ないから昼寝にはうってつけだし。」確かにここは自然が多いし、なんだか落ち着く。
「そういえば、お前どうしてここに来れた?」
「ソーンくん、ソーン=エンゲルスくんに教えてもらったんです。」
「ソーン、あいつか。」
「あれ、知ってるんですか?」
「あぁ、前に話しかけられた。」リュークさんに話しかけるって…ソーンくん強いな。











 少しの沈黙があり、ふとリュークさんがなにかに気付いたように顔をあげる。
「あ、肩にごみが…。」
「本当ですか?」
「ちょっとじっとしてろ。」
「はい。」と言いリュークさんが手を伸ばす。


「…っ!?」肩に手が触れると、体に電流が走ったような感覚がして、思わず手を払ってしまう。




あ…。やってしまった。これは完全にやってしまった…。





 行き場の失った手をおずおずと下ろすのが見え、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「...どうかしたか?」
「...あぁ、えっとなんか変な感覚が...。」
「変な...?」訝しげな表情でリュークさんが聞いてくる。
「その、ゾワッとしたというか、ピリッとした?とにかくなにかを感じて...。あ!嫌だったわけじゃないんです!むしろ取ろうとしてくださってありがたかったですし...。」こんな状況でも目が合わせられず、俯いて地面ばかりを見てしまう。どうしよう...。
「やっぱりお前...。」




「アル!良かったここにいた!」
この声は、
「ソーンくん!?」息を切らせながらソーンくんが近寄ってくる。
「探したんだよ?朝部屋に行ったら誰もいないからどこにいるんだろうって学園中探し回ったよ!」
「そうなの?」
「あ!シャンブルク様!お話のところ悪いのですが、僕達急ぎの用事がありましてこの辺で失礼しますね!!」
「あ、あぁ。」ソーンくんに押されながらその場を去る。





「ソーンくん、用事って何?僕今日何もないはずなんだけど...。」
「ごめん用事があるっていうのは嘘。たまたま通りかかったら2人がいて、アルなんだか困ってそうだったから。もしかして僕邪魔しちゃった...?」
「ううん。大丈夫。ありがとうね。」
「あ、そういえばねリーンがみんなで遊ばない?って。」
「遊ぶ?」
「うん。みんなこの時間暇らしくて、それなら遊ぼうって!部屋にお菓子とかいっぱいあるらしいよ!」
「本当?」
「本当!みんなもう部屋にいるから急ごう!!」
「うん。」




 その後僕の部屋で待っていたシンとリーン、そして兄と一緒にゲームをしたりお菓子を食べたり楽しい時間を過ごしたはずだったが、僕はリュークさんのことがどうしても気にかかってあまり楽しめなかった。

 

リュークさん今何してるんだろう...。
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