44 / 104
幕開け
41
しおりを挟む「ねぇ、アル。そういえばさ、あの子は?ほら、ピンク髪のふわふわした感じの子。」袖をくいくいと引っ張って聞いてくるソーン君。それ、あざといな…。
「ピンク…あぁ、テオ君のことかな?それが、授業終わった後どこかに行っちゃったんだよね…。」
「ん?テオ君って誰のことだ?」シンがいぶかしげに聞いてくる。そっか、シンとリーンは会ったことないのか。
「テオ=リーレン君だよ。さっき知り合ったんだ。ほんわかしてて小動物みたいな子なんだけど、
とっても頭がいい子なんだ。たしか、歴史学と古語学が満点だったんだけど、知らない?」
「俺は知らないな。その授業取ってないし。リーンは?」
「テオ=リーレン君ねぇ…。名前は聞いたことあるかな。親が商人だとかなんとか…。う~んよく分からないわ…。」そうか、顔が広いリーンでさえもあまり知らないのか…。
「僕も今までそんな子会ったことないな…。どこ出身の子なの?」
「僕もよく分からないんだけど、この国じゃないって言ってたかな。」
「言葉は?なまってなかったの?」
「うん。とっても流暢だったよ。だから始めはこの国の出身だと思ってた。」
「クラス一緒だったんだよね?今まで話したこととか見たことなかったの?」
「もともと人数が多い授業だったし、気づかなかったのかも。」
ソーン君が立て続けに質問をしてくる。すごい興味もってるな…。もしかして友達になりたんじゃ…!
ソーン君の止めどない質問に答えていたらいつの間にか学園の寮についていた。中に入ろうとした瞬間、ぐいっと襟をつかまれた。
「やっと来た。いつまで待たせるつもりだ。」
…なんとなく、そろそろ来るんだろうな、とは思ってたんだよ…。
「メルロス殿下、あの、苦しいです…。は、はなしてくださぃ…。」
「まったく。あちこち探したのにいないから、ここで待っていたというのに来るのが遅いぞ!」…え、なんで僕怒られてるの…?
「それより、メルロス殿下何か御用ですか?」
「あぁ、そうだ。お前明後日暇だろ?特訓してやるから、体育館に来い。試験が近くなるとなかなか時間が取れなくなるだろうから、配慮してやったんだぜ。絶対に来いよ。来なかったら今日みたいにあちこち探すし、待ち伏せるからな。いいな。」
去り際も見えなくなるまで「絶対に来いよー!」と叫びながらメルロス殿下は学園のほうに行ってしまった。いつにも増して念押しされたな…。またゲストとか来るのかな…。
寮の自室に戻り少し筋トレをする。筋トレはメルロス殿下に言われて毎日やっているが、筋肉はいっこうについてくれない。けれど心なしか姿勢はよくなったし、武術の授業でよろけたりすることが減った気がする。そのおかげか、前回の試験では二番目にいい成績の優をもらえた。もしかして、目に見えないだけで筋肉は少しずつついているのかもしれない。
とはいえ、依然、ほかの生徒との距離は物理的にも心理的にも遠く感じる。むしろ少し遠のいた気すらしてくる。メルロス殿下が横にずっといてアドバイスをすることが多いからか、見えないバリアみたいなのができているし、話しかけに行こうとしも同じ距離だけ離れて行ってしまう。最近は、あんなに話しかけていた先生すらも近づいてこなくなって、完全なるマンツーマンになってしまっている…。せめて、挨拶ができるようになりたいけど、何かいい方法はないものか…。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
前世が悪女の男は誰にも会いたくない
イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です
ーーーやってしまった。
『もういい。お前の顔は見たくない』
旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。
前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた
しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう
その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める
頑張って運命を回避しようとする話です
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
【運命】に捨てられ捨てたΩ
あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる