君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 そろそろお兄ちゃんの出番が控えているということで、僕とソーン君は控室にいるであろうお兄ちゃんに会いに行った。シンとリーン、メルロス殿下は朝挨拶したから観客席で試合を見てるって言ってたけど、それならなんでソーン君はついて来たのかのかな…?


 控室に着き、お兄ちゃんを探す。そこそこ人がいるから見つけるのに時間がかかるかと思ってたけど、すぐに見つかった。人がごった返している控室の中でそこだけ異様に人が少なかったからだ。
「お兄ちゃん応援しに来たよ!…おっと…。」


 ……てっきりお兄ちゃんだけかと思ってたんだけど、その隣にカルロ殿下、ロストさん、それにカイルさんがいたのだ。ここだけ心なしかキラキラしている気がする…。

「あれ?カイルさん!!どうしてここに?」いつもより少しオーバーな反応をするソーン君。
「アランの応援に来たんだけど。もしかしてソーン君も?」
「そうなんです!え、こんなところで会えるなんてすごい偶然!」
 あぁ。もしかしてソーン君がついてきたの、このためだったのかな…。


 二人で和気藹々と話し込んでいるソーン君とカイルさんをよそに僕はお兄ちゃんに話しかける。
「調子はどう?試合の自信のほどは?」
「まぁまぁってところだな。相手はそこそこ強いけど、勝てない相手ではない。」
「まぁ、初戦で負けてしまったら弟君に合わせる顔がないもんな。」お兄ちゃんの隣に座っているカルロ殿下が言う。
「さっきの試合結構ギリギリだった人には言われたくないですけどね。」
「だから、ギリギリじゃない!あれはかなり余裕をもって勝ててた!」
「あれはどう見てもギリギリでしたよ。殿下は焦ったときに顔に出すぎです。俺には分かります。」
 ……あれ、もしかして…。僕、邪魔だった…?ロストさんのほうを見るとどうやら同じように思っていたらしく、二人して顔を見合わせて肩をすくめていた。



 お兄ちゃんの初戦もかなりあっさりと終った。相手は他国で経験を積んできたような年上の人だったけれど、お兄ちゃんのほうが二枚も三枚も上手だった。メルロス殿下が言うには、僕とお兄ちゃんは戦い方がよく似ているのだそうだ。かなり視野が広いし、相手のちょっとした動きもよく見ている。相手の裏をかくような動きが得意で、すぐに相手の後ろをとることができる。

 お兄ちゃんのハンデは魔術の使用回数が制限されていることだけでなく、使える属性も制限されていた。
 お兄ちゃんって光属性魔術が目立っちゃってるけど、実は扱える属性って光の他にも風と水があるんだよね。しかも、その中で主属性(一番得意としている属性)は風。続いて水、土、光で、光属性はかなり苦手。使ったらだいぶ体力が奪われるし、扱える魔術の種類も片手で数えれるほどしかなく、かなり不自由。だけど、この試合では上三つの風と水と土に制限がかけられて、一番苦手な光属性しか使えないっていうハンデが課せられている。
 そんな中でお兄ちゃんは光属性の魔術を惜しみなく使い、相手から勝利をもぎ取っていった。しかも、今回は測定テストの時と違い人間の相手もいるということで、より大おばあさまを彷彿とさせる瞬間があり、僕の隣に座っていたソーン君も『本物のルーナ=シューベルトみたいだ…。』と言っていた。そのためか、お兄ちゃんの勝利が決まった時の歓声がどの試合よりも大きかった気がする。
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