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第一部
原罪の箱庭⒀
しおりを挟むムスカリ帝国としてリヤンが支配者となる前、24の小国からなる大陸は途春と呼ばれていた。それぞれの領土には王や、部族長などがおり、自国の文化や技術を発展させ、数千年に渡り治めていた。ところが、ひとつの国が何らかの原因で滅びると、周辺国が領地の奪い合いを始め、小さな争いが次第に激化していった──。
「……寵女か」
朝食を終えたアセビは、寝所からクオンが立ち去ると、状況を整理した。
(わたしは今、恩女として皇帝に好き勝手な扱いを受けているが、昨晩の態度を見るかぎり、わたしを妊娠させようとしているフシがある……。わざわざ避妊具を掻きだし、ひと晩で幾度も通じるとは、そうとしか思えぬだろう……。これはいったいどういうことだ? わたしを寵女にする意味が、何かあるというのか?)
腹部の張りは解消したが、腰痛や目眩の症状はあった。さすがに即座に懐妊の兆候は得られないが、心なしか熱っぽいアセビは、「ふぅ」と、深い溜め息を吐いた。しばらくするとシルキが戻るなり、いつものようにアセビの体調を巻物に記した。
それから二日後、再びシルキはクオンの部屋に泊まり、アセビは皇帝の腕に抱かれた。その際、あらかじめ綿を詰める手順を省かれたため、なんの前触れもなく寝所に姿をあらわしたリヤンは、無言でアセビを押し倒した。
(……くっ、相変わらず乱暴な男だ! ……しかし、このままでは本当に身籠ってしまう危険がある! 皇帝は、本気で子作りをしに来ているのか!?)
無遠慮に腰をふるリヤンの表情は、いつも不機嫌そうで、快楽を優先する抱き方にしては、眉間に皺を寄せていた。
「……っ!?」
ふいに、上体を抱き起こされたアセビは、リヤンの太腿にまたがる体位で下から突きあげられた。背中が反りかえり倒れそうになるが、リヤンの首筋へしがみつき、上下運動に耐えた。熱い子胤が体内を遡ってくると、アセビの全身はビクビクッと、ふるえた。
(ああ、すごい……。今、わたしの内奥に皇帝がいる……)
「リュンヌ・ギア」
体力と気力が限界に達したアセビの耳に、リヤンの低い声が響く。
「そなたには、内事の秘密を共有してもらうぞ。……よいか、手始めに、余の息子を産むのだ。必ず、男児を産んでみせよ。さすればそなたは、たんなる寵女ではなく、寵主となる」
(……ハイ……ム?)
確かに、そう聞こえた。寵主とは、皇帝の権限により選ばれた貴人の別称で、生まれや身分に関係なく皇帝に仕える最高位の女人である。この官位に就いた女人は、皇后にさえ頭をさげる必要がなく、周囲の人間からも敬意を示される対象だった。
(このわたしに、皇帝を補佐する女人になれだと? そのために男児を産めとは、ぐ、愚行すぎる!)
ようやく魂胆を告げられたアセビだが、複雑な心境に陥った。
✓つづく
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