異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

文字の大きさ
7 / 171
幕開け

第7話

しおりを挟む
※挿話です


 いつもより森がさわがしい。というのも、滅多めった地上、、へ姿をあらわさない〈黒蛇クロヘビ〉の痕跡が、あちこちで見つかっているからだ。


「これって、もしかして……」

「ま、まちがいない。大蛇ヤツだよ。こんなあたたかい季節に活動するなんて、今までなかったのに……(モグモグ)」

「それに、このにおい、……人間?」

「人間が森に侵入したあと、黒蛇におそわれたのかも。だとしたら、気の毒だな。頭から丸呑まるのみにされたら、助けようがないね(モグモグ)」

 
 話し声は聞こえるけれど、彼らの姿を見ることはできない。向かって左の樹木の裏に野猫ノネコ、反対側の草陰くさかげ仔栗鼠コリスが隠れている。どちらも雑食性の半獣属(オス)だが、自然界では適度な距離をたもつという暗黙のルールを、しっかり心得こころえている。

 ノネコは黒白のハチワレで、キリッとかしこそうな顔をしていた。コリスの体型は[ぽちゃっ]としており、おなかは白で、からだは赤みがかった灰色をしている。ノネコと会話する最中さいちゅうも、採れたてのきのこをおいしそうに食べていた。

「助けるって、人間をかい? おまえさん、ずいぶん変わっているな」

「ほえ、そうかな。だって、人間がみんな悪いやつなら、とっくに滅びてるでしょ……(モグモグ)」

「自滅するってことかい」

「う~ん、というより、共喰い?(ゴクンッ)」

 コリスは、大胆な発言を平気な顔でする。きのこを食べたばかりでも、もう次のきのこを探して地面をチョロチョロ動きまわった。ノネコはあきれ顔になるが、樹木の裏から出てくると、黒蛇がったあとを注視した。

「人間が、なんの用で足を踏み入れたのだろう。まだ、微かに臭気が残っている。東のほうから、流れてくるのか。……人間は、生きている?」

 ノネコは、探偵のような洞察力どうさつりょくで現状を推理する。いっぽう、食欲旺盛おうせいなコリスは落ちていた木の実を、パクパクほおばっていた。

 縄張りの平穏を乱すものは、徹底的に排除すべきだと考えるノネコだが、おいしいものをおいしそうに食べるコリスをまえに、拒絶して追いだすのではなく、あとくされしない手段はないものかと、考えをあらためた。

 半獣属には、人間と対話する能力(あるていどの知性)が、生まれながらそなわっている。しかし、言語など使わなくても、人間ほど他者の居場所を踏み荒らしたりしない。動物たちは、周囲にいる共生体を刺激しないよう、必要悪な行動は本能的に避けている。


「なんだろう、この妙な感じ……」


 胸の奥がざわつくノネコは、やがて亮介を観察対象と見なし、彼のスローライフを支える一員いちいんとなるが、それはもう少し先の話である。同じ現場で鉢合はちあわせても、コリスの関心は人間の行方ゆくえではなく、食事をとることだった。


「モグモグ、パクパク」 


 野生のリスは単独行動を好む傾向があり、頬袋に木の実などを詰めこみ、貯食する習性がある。頬をぱんぱんにしたコリスは、満足げに巣のある樹上へもどり、ひと休みした。

 ノネコは山中で野生化した猫だが、半獣に属する動物である。狩りをしない時間はのんびり寝て過ごすため、コリスが姿を消したあと、枯れ葉のベッドで丸くなった。


「人間がいる。この森に……。いったい、どんなやつだろう……」


 ノネコの祖先そせんは、人間に飼育された経歴がある。半獣属へと突然変異ミューテイションした現在も、遠い記憶は受け継がれていた。


★つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

処理中です...