異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

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第7部

第126話

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 精霊は役割を果たすと個体が変化し、呼び名だけが受け継がれていく。現在、亮介と共にるミュオンは、遙か昔から森に生きる水の精霊だが、彼らは分化したさいに記憶を共有しないため、まったく新しい個体(精霊)の誕生とも言えた。


 引っ越しの準備も終わりに近づくと、コリスが亮介の荷物を目に留め、「それ、なぁに?」と、たずねた。

「これは学ランだよ。僕が着ていた制服なんだ」

「ほえ? でも、リョースケくんのからだの大きさに合ってないよ?」

(しまった! 僕が現代人だってこと、まだ話してなかったっけ!?)

 色々ありすぎて、自分の素性を打ち明ける機会を忘れていた亮介は、キールやノネコ、ハイロとミュオンがそろっている今こそ、告げておくべきだと思った。それとなくノネコへ視線を向けると、なにかを察して「ふむ」と、小さくうなずいた。

「みなさん、丸太小屋を去るまえに、リョウスケくんの話を聞いてあげましょう」

「あん、急になんだよ、ノネコ。おいらたちより、リョースケの過去を知ったふうな口ぶりじゃねーか」

 ノネコをジロッとにらむキールは、つづけて、亮介の顔を見据えた。

「まあ、人間の過去なんて興味ねぇけど、リョースケが話したいことがあるってなら、聞かないでもないぞ」

「ありがとう、キール。それじゃあ、みんな聞いて。えっと……、僕の見た目は8歳だけど、ほんとうは16歳だって言ったことあよね。あとね、もうひとつ信じられないことがあって……」

 実年齢だけでなく、異世界にきてしまったことを白状すると、コリスがいちばん目を丸くして驚いた。ハイロやミュオンはなにも言わず、ノネコも黙って耳をかたむけている。もともと人間嫌いのキールは、あからさまに顔をしかめ、「で?」と、話しのつづきをかした。

「う、うん。最初は、どうして幼児化したのか、なにもわからなくて不安だったけど、ミュオンさんやハイロさんが手を差しのべてくれて、まいにちが忙しくて、そのうちにキールやノネコさん、コリスくんが協力してくれて、今じゃ、みんな大事な家族で仲間だと思ってる……。だから、うまく言えないけど、隠してて、ごめんなさい」

 亮介が深々と頭をさげると、キールは「けっ」とつばを吐く真似をしたが、表情を見るかぎり、怒っているようではない。亮介は内心ホッとしつつ、『よく、話してくれましたね。ですが、わたしはリョウスケくんが何者でも構わないのですよ』というミュオンに、ハイロも「ああ」と返事をした。

「リョウスケくんがいたからこそ、われわれはこうして平和的につどえたわけですし、築きあげた信頼関係は、そう簡単にこわれるものではないよ。……きみが自然界にとって悪影響をおよぼす存在ならば、大神オオカミが黙っていないだろうしね」

 ノネコは神妙な顔をして言った。

「オオカミって、金色のの?」

 以前、亮介のまえに姿をあらわした大神は、なにも語らず立ち去っている。あれは幻影まぼろしではないかと、あいまいな記憶になっていた。

(僕が異世界ここにきた意味って、なんだろう……。その理由がなにかわかるまで、がんばらなきゃ……)

 亮介の事情を知ったあとも、仲間たちの見る目は変わらなかった。むしろ、半獣属との絆が深まったような気がした亮介は、心の底で感謝した。目標のスローライフは思うように進まないが、ひとつずつ問題を解決していくことで、いつか楽しく暮らせる日がくるだろう。

 屋根の上に寝転んでいた地の精霊は、『クククッ』と声にだして笑った。ジェミャは、亮介の正体をイチ早く見抜いていたが、きょうまで黙秘していた仲間のひとりである。


★つづく
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