異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

文字の大きさ
154 / 171
第9部

第154話

しおりを挟む

(ジェミャさんって、ミュオンさんにジェラシーなのかな? あ、こんなこと思ったら、また……)

 本音を見透かす能力をもつわけではないが、ジェミャは眉間に皺を寄せて亮介を一瞥いちべつした。リヒトにつかまったコリスが、「うひゃー!」と大声をあげると、近くの枝で羽を休めていた野鳥が、バサバサッと飛んでいった。秋晴れの空に、つがいと思われるトンビがならんで飛んでゆく。

 実のところ、ミュオンの出産と行方知れずの事情を抜きにして、新居での暮らしは平穏だった。ミュオンしか生みだせない生命の欠片を求めて黒蛇が接近していたが、球体を奪ったジェミャが、うまく遠くへ誘導した……らしい。黒蛇の正体は半獣属のなりそこないにつき会話は不可能だが、精霊は意思疎通ができるため、相手の思惑おもわくを察することは可能だった。

「なにが起きてるのか、ちょっとくらい僕にも教えてくれたっていいじゃない。ハイロさんは、前から無口な性格だから仕方ないとして、ジェミャさんはそうじゃないよね?」

 どうせ見透かされるくらいならば、はっきり伝えたほうがよい。そう思った亮介は、地の精霊に対して強気な発言をしてみせた。心境の変化を認めたジェミャは、しばらく亮介を焦らしてから語りだす。

『なにが起きているか、そんなもの、誰が正しく説明できようか。われとて、傀儡くぐつ一体いったいにすぎぬ。……すべては、自然の摂理にさからうものたちが罪の意識もなく起こした現象であり、むろん、後始末あとしまつが必要な事案である』

「……後始末かぁ。う~ん、具体的には、どうすればいいの?」

『フッ、かんたんなことだ。失敗や後悔をしたならば、イチからやり直せばいい』

「やり直すって、ミュオンさんがいないのにどうやって……、ぐはっ!!」

 かたわらに立つジェミャを見あげていた亮介は、ふたたび鬼ごっこをするコリスに頭から追突され、腹部に強い衝撃を受けた。

「リョースケくん、助けてぇ~!」

 一瞬、息が止まり苦しい思いをした亮介は、コリスを目がけて走ってくるリヒトの注意をそらすため、「あ、あっち見て!」と明後日あさっての方向を指さした。適当な方角を示したつもりが、ちょうど、ハイロがのしのしと歩いてくる。

「なんだ、リョウスケ?」

「ご、ごめんなさい、なんでもないよ」

 指をさされたハイロは首をかしげたが、亮介は「えへへ」と苦笑いし、サッと腕(とコリス)をうしろに引っこめた。リヒトは、ふらふらと小屋のまわりを歩き、コリスを探している。ハイロは、ミュオンがいなくなってからというもの、灰色大熊の姿で過ごすことが多くなった。小屋にいる者は、ジェミャとリヒトがたずねてくる理由をあえて問わず、ミュオンの回復を信じてうたがわない。最初からやり直すというジェミャの忠告は、亮介の頭を悩ませたが、ミュオンがまだ生きているという状況は、はっきりと感じることができた。

(……こんな感覚は初めてだ。ミュオンさんの心臓の音が、森じゅうに響いているような、本人の姿は見えなくても、僕らの近くにいるような気がする。……ハイロさんも、僕と同じ感覚を受けとっているンだろうな)

 亮介は、強い決意を胸に秘めていた。

(もし、いっしょに過ごした日々を忘れてしまったなら、思いだしてもらえばいいんだ。僕らには時間がある。新しい家だって完成してるし、いつまでも、ミュオンさんの帰りを待てるからね!)

 コリスを探して歩きまわるリヒトと目があった亮介は、「鬼さん、こちら!」といって、両手をあげた。その手にしがみついていたコリスは、「わあ! 見つかっちゃったじゃないか~!」と叫び、地面に飛びおりると、小屋の裏へ逃げた。リヒトは、ハイロの脇を走り抜けていく。かつての親子の再会が実現していたが、ミュオンが復活するまで、ハイロは、わが子だと意識することはできなかった。


★つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

処理中です...