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第1部/始まり
しおりを挟む[○○年1月、海軍諜報部隊・ジェイクリッド=フリークス=ガレオンの捜索を打ち切る]
海軍の本部にて、そんな貼り紙を目に留めたルベレト少佐は、わなわなと怒りで肩をふるわせると、フェリオ大将の執務室へ足を運んだ。
「いったい、どういうことですか!? 彼は、ジェイクなら、必ずどこかで生きています!! どうか、もっとよく捜してください!!」
「ルーベレット少佐か……。気持ちはわかるが現実を見たまえ。ジェイクリッド大佐の消息は3ヵ月前から不明である。そのうえ、冬季は波が荒れて高く、哨戒船を浮かべることすらできない。今回の件は非常に残念だが、殉職として処理されることが決まった以上、あきらめて冥福を祈りなさい」
将官の頂点であるフェリオ=ドレッドは、42歳でありながら白髪ひとつない濃紫の髪に、黄金の眼をしている。ルベレト(ルーベレット=ピューパ)は、フェリオの言葉に、そう簡単には引きさがれない理由があった。ジェイクとは士官学校から付き合いがあり、東緯の宿舎へ移ったあとも、寝食を共にする親友だ。誰よりも彼が有能な人物であるか承知しているため、行方不明だからといって、死亡したとは考えられなかった。
「……ジェイクが死んだなんて、そんなのうそだ。……あいつの亡骸を見るまで、信じられるものか! ジェイクは賢くて強い男だ。絶対、どこかで生きているはずだ!! くそっ!!」
ルベレトは、握りしめた拳を廊下の壁に、ガンッと打ちつけると、キッと、前方を睨みつけた。円窓から、高波で荒れる暗い海が見えている。今から3ヵ月ほど前、ジェイクは上層部の命を受け、南緯の果てにある〈ファブロス島〉への偵察が決まった。乗組員は、わずか数名だった。移動時間と距離は長いが、最低限の備えで出航することになる。現在、帝国では内戦が絶えず、資金不足による軽装は否めなかったが、ジェイクは頭の回転が速く、体術が得意で、仲間との信頼関係も築きあげている。不安要素は何もないと思われた。
穏やかな風が吹き、甲板に立つジェイクを見送ったルベレトは、まさか暴風雨により船が沈没し、大海に投げだされて記憶を喪失するまでに至るとは、予想すらしなかった。
「……ジェイク、ジェイク! なにか自分にできることはないか? ……おまえがこの国に還る日がくるまで、絶対にあきらめないからな! ……それに、シーナを悲しませてどうするんだ!? 彼女を残して逝くなんて信じられるかよ! なぁ、ジェイクリッド!!」
✓つづく
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