青竜のたてがみ

み馬下諒

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第26話

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 ファブロス島に、ジョグンという、20代の若い男がいる。褐色かっしょくの肌に短くてクセのある(毛先がハネ気味)の黒髪くろかみで、見るからに勝気かちきな眼光を放つ、血気さかんな若者わかものだった。

「よう、ジョグン。おまえ、いくつになった? そろそろ嫁をもらうか? あたいが選んでやるよ!」

「ラミルダ長老、ったはずだ。おれは女に興味がないと」

「がーっはっは! 最初は慣れんだろうが、くっついてしまえば苦にならんさ!」

 島の風習により、男女別々に暮らす時間のほうが長いため、島民のなかにはジョグンのように、婚姻関係を望まない者もいた。ジョグンは早くに両親を亡くし、よくラミルダが面倒をみた子どものひとりである。そのため、平気な顔をして、下世話を口にする。

「なんだ、おまえ。ひょっとして無性愛者むせいあいしゃなのかい?」

 無性愛とは、性別に関係なく性的な欲求が欠如けつじょしており、他者に対する関心が少ないという特徴をもった人種のことである。ジョグンは、あからさまな質問に顔をしかめたが、小さくため息を吐いた。

「おれが、そんなふうに見えますか? ……云っとくけど、生殖機能に異常ないからな。変な目で見るな、迷惑だ!」
「お~、そうかそうか。そっち、、、まとも、、、に活動しているか! それを聞いて安心したぞ!」

 ラミルダは、ジョグンの肩をバシバシ叩くと、「これを持っていけ」と、丸くて赤い味のついた木の枝を差しだした。

「精力が増す栄養のある実だ! 少しにがいが、たくさんえ!」
「そんなもの、必要ないっての。……それより、〈水竜すいりゅう化身けしん〉だけど、あいつ、何してんの?」
「ジェイクリッドのことか?」
「この前、まつりひらいて歓迎してやったけど、あいつこそ、無性愛なんじゃねーのか?」
「がーっはっは! たしかに、女衆にはひとりも手をつけなかったしな。せっかくの逢引小屋あいびきごやがムダになったぞ! 気に入った娘がいなかったのならば、あたいが相手をしてやったんだがな!」
「は? 冗談だろ。……あいつって、ただ髪が青いってこと以外は、ふつうの人間にしか見えないンだけど。そりゃ、おれたちより背は高いけど、そこまで特別扱いするような存在なのか?」
「なんだ、ジョグン。おまえ、ジェイクリッドが気になるのか?」
「というか、みんな警戒心がなさすぎなんだよ。あんな素性すじょうのわからない男を、いきなり信用できるかっての」

 ラミルダは赤い実をむしり、パクリと食べた。残りをジョグンへ押しつけると、たねを地面にペッと吐きだす。

「そうさねぇ。まぁ、時がくればわかるってもんさ」


✓つづく
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