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第3章 星野と研修生

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PM6:09

携帯の着信で目が覚めた。

これからバイトなのに誰だよ!なんて思いながら携帯をみると。

星野
 
は?星野?

「もしもし」 
「うぃーす!星野でーす♪先輩、今日暇すか?バンド仲間と飲み行くんすけど、来ません?」
コイツ、正気か?
「いや。待てよ!お前な、急に昨日でバイト辞めたろ?そのせいで俺が代わりに入ってんだよ!ふざけんな!」

怒りの余りに携帯を投げ捨てた。

全く最悪なバイト前だ。「そりゃ俺だって友達とか女の子とかと飲み行きたいよ、実際友達も女の子もいないし、ふざけんな!っての。」なんて大声で叫んだせいか今日は喉が痛い。


「おはようございます。」

「いやー、石浦くーーん!本当ごめんね、急にさー!」  
めちゃくちゃ軽いが何か憎めない店長の話し方。
まぁ本当は思うこと沢山あるけど、今日は多目に見るこてにした。


1時間くらいしてから入り口から「すみませーーん!」とやけに甲高い声がした。

「はい。どうかなさいましたか?」
「あの、今日からアルバイトに来ました!川田です!」

あ、そう言えば今日から研修が来るって言ってたなぁ
そう思いながら裏へ通した。

「いやー、どうもどうも!面接ぶりだね!店長の稲垣です!」店長のこの軽い感じにもいい加減慣れた。

「今日からお世話になることになりました。川田です!」さっきも聞いたよ!てか、何か日本語可笑しくないか?
とは、初対面かつ女の子に言えない。てか割りと可愛いくて目を合わせられない。

「で、いきなりなんだけど、星野君ってのが辞めちゃったからさ、悪いんだけど、彼が担当になったから!」
悪いんだけど!ってなんだよ!

「はい!よろしくお願いします!」

「あ、、よろしく。」

さっきまでは客と店員だから話せたが店員同士になった途端に喋る事が出来ない。だがそんなことバレたら恥ずかしい。と思いつい
「とりあえず、なんかあったら言って。」
「あ、はい!」

ごめんよ、川田さん。でも、これが精一杯の会話なんだ!君は気付いて無いだろうけど、君、制服のボタン開けすぎ!ちょっと谷間見えてるんだよ!

そんな事にも気づかないで君はなんなんだ?

なんて事を考えていたら。
「石浦くん。」
「うわ、店長!急に耳元で喋らないでくださいよ!」
「いやー、めっちゃ谷間みてるなぁーなんて思ってさー」グゥッ!バレてた。
「まぁ、いいんだけどさぁ、くれぐれも気をつけてよ?変な事してせっかくの女の子に辞められちゃ困るからねー。それに石浦君まで捕まったから辞める。なんてのは勘弁してよねー?でも、あれは見るよね?ケツも胸も最高~~、店長、仕事楽しくなっちゃうよ!じゃ、今日は帰りまーす♪」

「店長!お疲れ様でした♪」
「はーい!お疲れ~~、あ、舞ちゃん!もし何かされたら直ぐに電話するんだよ?店長、直ぐに駆けつけるからね?後で電話するねー!履歴書に番号書いてあったから!じゃあねぇーー」

って!おい!!お前の方がよっぽど捕まっても可笑しくないわ!!とは大声で叫びたいけど、さっき怒鳴ったせいで喉も痛いし、そうゆうキャラだと思われたくないからグッと堪えて心の中で店長にツッこんだ。


バイトが始まって3時間。

いい加減この空気も耐えれない。

バイト先のコンビニは駅からもかなり離れていて、ましてや、50メートルくらい手前に新しいコンビニができたせいで客も減って今では1時間に5人来ればいい方だ。


早く帰って昨日のDVDの続きでも観ようかなぁー

何て思いながらボサっとしていると。

「キャァーーー!」「ダダダダダーーン!」と、甲高い声と鈍い音がした。

慌てて裏に駆け寄り電気をつけると、座り込んだ川田さんが居た。

「先輩すみません。棚の段ボール取ろうとしたらバランス崩しちゃって、、」アイスコーヒーの蓋やストロー等が散乱した部屋に彼女がポツリと座り込んでいる。

「電気くらいつけなよ。」の冷めた一言で電気がつく前よりも暗い雰囲気になる部屋。

しょうがないから片付けを手伝った。

バイトが始まって4時間

「あの、先輩。」
「あ、なに?」
「先輩って、ここでアルバイトしてから何年くらい何ですか?」なんだその質問!てか、どうでもいいだろ?
「に、2年くらいかな、」
「へーー!通りで何でも出来る訳ですね!店長が言ってたんですよ、星野さんて方辞めたから担当変わったって電話きて、その時に、先輩なら俺より出来るから何でもやらせちゃって!   って。店長も先輩のこと頼りにしてるんですね!何かカッコいいなぁ~」

店長。そんな風に思ってたのか。いつも軽くて適当で悩んでたけど、伊達に2年店長に心の中でツッこんで無かったなぁ~   なんて初めて店長を好きになった。ほんの少しだけ。

そんな事より 何かカッコいいなぁ~ の一言で何か勝った気がした。少なくとも店長より。


「あ、そう言えば星野さんて、何で辞めちゃったんですか?」まさかの質問に少し驚いた。
「いや、何かバンドマンになるらしいよ。本当どうかしてるよなぁ~」星野のダメ話になると急に口が止まらなくなるのは悪い癖だ。でも、人の仇探しより楽しい物はない。
「だって前にバイト中にさ、  石ちゃんさん!」 あ、石ちゃんさん は俺のことね。
「石ちゃんさん!ロールケーキって何でロールケーキって言うか知ってます?」「いや。ケーキが巻かれてるからでしょ。それ以外なくね?」なんて言ったわけよ!そしたら 、

「それが、違うんすよ!実は、ロックンロールから来てるんすよ!」って真顔で言ってたからね?
マジで、ビックリしてさ、その法則だと星野からしたらロールキャベツもロールスロイスもロックンロールから来てるらしいよ。

あれ、何でこんなに喋れるんだろ?もしかして克服した?

「じゃあ、オートロックもロックンロール?」なんて馬鹿な事を言う研修生だ。けど、少し笑えた。

「でも、夢追いかけて辞めたんですね。何かカッコいいなぁ~」いや、口癖かいッ!何でもカッコいいんじゃんかよ!この女!あっぶねぇーー!!

「夢持つってカッコいいですよねぇ、私も夢があるですよ!本当ちっちゃな夢なんですけどね、実は、 オシャレなbarでライダースのジャケット着て脚組んで1人でビール飲むのが夢なんです!」と真っ直ぐな瞳で見る研修生。

今の彼女からは全く想像つかないけど、ただ、あの時のあの人を思いだした。


「そうなんだ。いいね。」
「でも、ビール苦手なんですよ!だから先ずはビールを飲めるようになる!とこからスタートですね!」

何故だか彼女を見てると少し楽しく感じた。
もしかしたらこの子が俺を変えてくれるんじゃないのかと、少し期待をしていた。

そして、バイトが終わった。

「じゃあ、お疲れ様」と、言って自転車に股がる瞬間
「先輩!明日休みですか?ちょっと飲みませんか?」 
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