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第27話 - 王国会議室 決闘議論
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「ラスタまでが……やられた! たかだか無能力の、男に!」
会議室で、男が絶叫した。
男は叫びながら、豪華な机を、がつんと叩く。
その揺れで、煌びやかな調度品が揺れた。
ここは、王国の会議室である。そこに座る面々は、重臣たちや騎士団の隊長クラスの面々が並んでおり、奥の一層豪奢な席には、国王が座っていた。
叫んだ重臣が、その勢いのままに、怒鳴り散らす。
「お前ら騎士団はこうまで脆弱であったか! はっ、なにかにつけ予算を要求しておったが、その末路がこれとはな! どんな言い訳を聞かるつもりだ、穀潰し共め!」
「その物言いは如何なものでしょう……! 彼らは真実、国防の要! 引いてはギルドへの貴重な抑止力ですぞ! この事態にかこつけ、責任を問うのは今ではないでしょう!」
「これだから武官とは話ができん! 金の使い道を誤ったからこそ、この体たらくなのだぞ! ではむしろ問うが、どう事態を収拾するつもりだ!? 事は、一刻を争う事態となった!」
議会は紛糾した。
議題は勿論、狂剣病レウについてである。この男は昨日、王国最高峰の実力者、ラスタをも打ち破った。
レウが勝ったのは、騎士団第二隊長である。屈指の使い手であり、言わば国防の象徴でもあった。最早、単なる勝ち負けの話では無くなった。
ギルドが追っている相手に、王国の最高戦力が敗北したのである。
ギルドにとっては、付け入る隙になるだろう。つまり、共同でレウを討伐しないか、と持ち掛けられる。その際に、何かにつけて、王国の戦力に取り入ろうとするだろう。
――隊長クラスがやられたのだろう? ギルドから兵を派遣しようか?
――作戦の立て方が良くないであろう。参謀に入れさせてくれないか?
等である。
通常であればこんなもの、跳ね除ける要求だ。
だが今や、レウの問題は政治問題と化している。
一介の剣士にやられる王国騎士団、というのは、恰好の話題だ。
他の派閥権力は躍起になってこれを騒ぎ立てるだろう。
ギルドの要求を全て跳ねるのは、難しい。
事は、王国の屋台骨が揺らぐほどの、非常に大きな問題となっていた。
重臣たちは、喧々諤々の議論を重ねる。罵倒しあい、叫び合い、今にも殴り合わんばかりに。
各々が王国の未来を案じて議論しているわけではない。それぞれの思惑と利益を背景に、それらしい理屈を並べている。だから次第に、誰も誰の意見も信用せず、お互いに罵り合うだけの不毛な時間へと変貌していく。
その醜態を目の前にし、これまで静かに耳を傾けていた王が、口を開いた。
「エル。お前は、どう思う」
王の言葉は厳かであったが、今騒いでる誰の言葉よりも重い。
大騒ぎを繰り広げていた幾人の重臣たちは、ぴたりと発声を止めた。
王より直々に指名を受けた《黄金騎士》エルセイドは、会議室の中でも、金色の鎧に身を包んでいる。兜さえ脱がず、完全武装した状態である。
黄金の騎士は……ゆっくりと周囲を見回し、言葉を返した。
「私が、奴に、決闘を申し込みます」
その宣言に、議内はざわめいた。
エルセイドは決闘、と口にした。つまり、この騎士団長は、あろうことか、どこの馬の骨とも知れない流浪の剣士と、一騎討ちをすると、言い放ったのだ。
困惑する重臣たちを他所に、王は、面白そうに笑う。
「ほう。理由を聞いても?」
「はっ。まず一つ。奴は何故か、私との対決を望んでおります。理由は不明ですが、私を釣り出すために騎士たちを狙っている。そして二つ。奴の行方は杳として知れません。特殊な、逃走経路を確保しているものだと思われます。探し出すのは困難です。そして三つ。奴は隊長級以上の力を持っております。手をこまねいていては、これ以上の被害が拡大する見込みです」
騎士団長の言葉に、者どもはどよめく。騎士団のトップが、敵の実力が隊長以上であると、名言したのだ。
その言葉に対しても、配下の騎士団員たちは、表情一つ変えず、何も返さない。
エルセイドの説明は続く。
「私が他の騎士と共に固まっていても、奴は現れないでしょう。また、隊長たちを集団で行動させてもまた、奴は現れない。どこかの隙を狙って、こちらへの挑発を繰り替えすでしょう。確実に相対するのであれば、私が一人、体を晒す他ない」
「それだけが、理由か」
「……一人の騎士として、であれば」
王の問いかけに、少し逡巡したエルセイドは――毅然と、言葉を返した。
「仲間を斬られ、黙っていられないのが、騎士という生物なのです」
「ははははははは! 結局は、義憤か! エルセイド! それで、お前は、奴に勝てるか?」
王は笑いながらも、鋭い眼光を、黄金の騎士に向けた。それを真っすぐに見返したエルセイドは。
「失礼ながら。誰に、聞いておりますでしょうか?」
決然と、そう返した。蒼白な表情となる重臣たちを尻目に、王はここ一番、大きく笑う。
「言ったな、貴様! よいだろう、それで行こうではないか! 闘技場にて、奴を屠れ! 一切の手加減を禁ずる! 全力で、狩れ!」
王の命令に、騎士たちは一斉に立ち上がり、一糸乱れぬ声で応と叫ぶ。
こうして、決闘が決まった。
王国最強の騎士の兜の奥で、冷たい眼光が、爛、と輝く。
会議室で、男が絶叫した。
男は叫びながら、豪華な机を、がつんと叩く。
その揺れで、煌びやかな調度品が揺れた。
ここは、王国の会議室である。そこに座る面々は、重臣たちや騎士団の隊長クラスの面々が並んでおり、奥の一層豪奢な席には、国王が座っていた。
叫んだ重臣が、その勢いのままに、怒鳴り散らす。
「お前ら騎士団はこうまで脆弱であったか! はっ、なにかにつけ予算を要求しておったが、その末路がこれとはな! どんな言い訳を聞かるつもりだ、穀潰し共め!」
「その物言いは如何なものでしょう……! 彼らは真実、国防の要! 引いてはギルドへの貴重な抑止力ですぞ! この事態にかこつけ、責任を問うのは今ではないでしょう!」
「これだから武官とは話ができん! 金の使い道を誤ったからこそ、この体たらくなのだぞ! ではむしろ問うが、どう事態を収拾するつもりだ!? 事は、一刻を争う事態となった!」
議会は紛糾した。
議題は勿論、狂剣病レウについてである。この男は昨日、王国最高峰の実力者、ラスタをも打ち破った。
レウが勝ったのは、騎士団第二隊長である。屈指の使い手であり、言わば国防の象徴でもあった。最早、単なる勝ち負けの話では無くなった。
ギルドが追っている相手に、王国の最高戦力が敗北したのである。
ギルドにとっては、付け入る隙になるだろう。つまり、共同でレウを討伐しないか、と持ち掛けられる。その際に、何かにつけて、王国の戦力に取り入ろうとするだろう。
――隊長クラスがやられたのだろう? ギルドから兵を派遣しようか?
――作戦の立て方が良くないであろう。参謀に入れさせてくれないか?
等である。
通常であればこんなもの、跳ね除ける要求だ。
だが今や、レウの問題は政治問題と化している。
一介の剣士にやられる王国騎士団、というのは、恰好の話題だ。
他の派閥権力は躍起になってこれを騒ぎ立てるだろう。
ギルドの要求を全て跳ねるのは、難しい。
事は、王国の屋台骨が揺らぐほどの、非常に大きな問題となっていた。
重臣たちは、喧々諤々の議論を重ねる。罵倒しあい、叫び合い、今にも殴り合わんばかりに。
各々が王国の未来を案じて議論しているわけではない。それぞれの思惑と利益を背景に、それらしい理屈を並べている。だから次第に、誰も誰の意見も信用せず、お互いに罵り合うだけの不毛な時間へと変貌していく。
その醜態を目の前にし、これまで静かに耳を傾けていた王が、口を開いた。
「エル。お前は、どう思う」
王の言葉は厳かであったが、今騒いでる誰の言葉よりも重い。
大騒ぎを繰り広げていた幾人の重臣たちは、ぴたりと発声を止めた。
王より直々に指名を受けた《黄金騎士》エルセイドは、会議室の中でも、金色の鎧に身を包んでいる。兜さえ脱がず、完全武装した状態である。
黄金の騎士は……ゆっくりと周囲を見回し、言葉を返した。
「私が、奴に、決闘を申し込みます」
その宣言に、議内はざわめいた。
エルセイドは決闘、と口にした。つまり、この騎士団長は、あろうことか、どこの馬の骨とも知れない流浪の剣士と、一騎討ちをすると、言い放ったのだ。
困惑する重臣たちを他所に、王は、面白そうに笑う。
「ほう。理由を聞いても?」
「はっ。まず一つ。奴は何故か、私との対決を望んでおります。理由は不明ですが、私を釣り出すために騎士たちを狙っている。そして二つ。奴の行方は杳として知れません。特殊な、逃走経路を確保しているものだと思われます。探し出すのは困難です。そして三つ。奴は隊長級以上の力を持っております。手をこまねいていては、これ以上の被害が拡大する見込みです」
騎士団長の言葉に、者どもはどよめく。騎士団のトップが、敵の実力が隊長以上であると、名言したのだ。
その言葉に対しても、配下の騎士団員たちは、表情一つ変えず、何も返さない。
エルセイドの説明は続く。
「私が他の騎士と共に固まっていても、奴は現れないでしょう。また、隊長たちを集団で行動させてもまた、奴は現れない。どこかの隙を狙って、こちらへの挑発を繰り替えすでしょう。確実に相対するのであれば、私が一人、体を晒す他ない」
「それだけが、理由か」
「……一人の騎士として、であれば」
王の問いかけに、少し逡巡したエルセイドは――毅然と、言葉を返した。
「仲間を斬られ、黙っていられないのが、騎士という生物なのです」
「ははははははは! 結局は、義憤か! エルセイド! それで、お前は、奴に勝てるか?」
王は笑いながらも、鋭い眼光を、黄金の騎士に向けた。それを真っすぐに見返したエルセイドは。
「失礼ながら。誰に、聞いておりますでしょうか?」
決然と、そう返した。蒼白な表情となる重臣たちを尻目に、王はここ一番、大きく笑う。
「言ったな、貴様! よいだろう、それで行こうではないか! 闘技場にて、奴を屠れ! 一切の手加減を禁ずる! 全力で、狩れ!」
王の命令に、騎士たちは一斉に立ち上がり、一糸乱れぬ声で応と叫ぶ。
こうして、決闘が決まった。
王国最強の騎士の兜の奥で、冷たい眼光が、爛、と輝く。
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